Sep 24, 2017 column

文化をいかに繋げていくか メディア芸術祭とメディア文化を取り巻くアーカイブ問題

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『第20回 文化庁メディア芸術祭受賞作品展』が9月16日(土)から始まった。

『文化庁メディア芸術祭』というのは平成9年度(1997年)から毎年行われている文化庁メディア芸術祭実行委員会主催によるアートとメディアエンタテインメントのイベントで、アート、エンターテインメント、アニメーション、マンガの4部門において優れた作品を表彰するとともに、受賞作を鑑賞する機会(『受賞作品展』)を提供している。プロによる商業作品だけなく、アマチュアによる作品、自主制作映像作品なども対象となり、応募された作品から選考委員によってそれぞれの部門の大賞・優秀賞・新人賞をはじめ、推薦作品、さらに功労賞などそれぞれの賞が選出される。この数年はイベント自体の知名度・認知度も上がってきたからか、世界中の国と地域から毎年4,000ほどの応募があるようだ。 娯楽性だけではなく、時代を反映した社会的な題材を取り込んだ作品が選ばれることがあるのも面白い。

文化庁は1946年より『文化庁芸術祭』を主催しており、こちらは「演劇、音楽、舞踊、大衆芸能、テレビ番組(ドラマおよびドキュメンタリー)、ラジオ番組」などが取り上げられている。こちらと『メディア芸術祭』との違いは、単純に見てしまうなら「それらからこぼれる文化に目を向けたイベント」だと言えるが、これが約20年前に始まったというのは、そういった“こぼれていた”サブカルチャーといったものへ社会の目が大きく向けられるようになり、正当評価の必要性も高まったのがその頃からだということだろう。

日本では90年代になりサブカルチャーの社会ポジションが大きく変化した。いくつかのいわゆるオタクコンテンツが起爆剤になったこともあるだろうが、ネットの普及など社会変化も背景としては大きい。 受信が主たるものであった従来の芸術と異なり、これら新時代の分野は受信者と発信者を繋ぎ、さらに受信者と別の受信者たちをも結びつける物だ。それゆえの「メディア芸術」という括りになる。

行政とサブカルチャーと言えば、近年でこそ経産省が中心となった「クールジャパン戦略」が何かと話題になることがあるが、まだそのような言葉すら無く、経済的な価値に対しても一般社会的には認識が低かった時期にこのような事業を始めたことは、(上から目線のエラソーな物言いになるが)「行政にしては先見の明があったんじゃないか」と思ってしまう。