Aug 11, 2017 column

夏のアニメ映画レビュー『カーズ/クロスロード』『メアリと魔女の花』

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8月に入り、夏休みのアニメ映画も概ね出揃った。和洋さまざまな作品が公開されているが、今年のアニメ映画はとにかく数が多い。数えてみたら、7~9月に上映されるアニメ作品は劇場配信作品も含めると20本に迫る。こうなると何を見るのか選ぶのも大変だが、その中で心に響いてくる2つの作品があった。

『カーズ/クロスロード』(http://www.disney.co.jp/movie/cars-crossroad.html

ピクサーによって制作されたCGアニメのシリーズ第3作。前作『2』はメーターが主人公のスピンオフ的な内容だったが、今回の『クロスロード』はまさに1作目の“その後”だ。1作目の公開は2006年だが、今作までに11年間という時間があったことが作品の物語にもテーマにも大きく反映され活きている。 レース界のトップを走り続けてきた主人公、ライトニング・マックィーン。しかし10数年を経て新世代の若手たちが台頭。それによって次々に引退し消えていくかつてのライバルたち。その中でマックィーンはどうするのか。それでもレースにしがみついていきたい彼の苦闘が描かれるが、予告編やあらすじから予想したルートを外れ、クライマックスで物語は意外な展開を見せることになる。

ディズニー作品であるので子供が楽しめるのはもちろんなのだが、この作品は一緒に見に行くお父さん世代、それも40代中盤以上で仕事や社会でそれなりの役割を担ってきた人たちの心にこそ響くものが大きいのではないかと思う。楽しむ子供の隣で涙を流すことになるかもしれない。おそらく、見る人の年齢によって、見たときに感じるドラマが全く異なる性質を持った作品だ。2つの世代が交差し、人生の分岐点を描いている。ちなみに原題は直球な『Cars 3』だが、邦題の『クロスロード』は絶妙だと思う。

僕は序盤の新世代たちに追い抜かれていくマックィーンの姿に涙がにじみ、中盤の新キャラクター・クルーズのセリフに涙がにじみ、ラストで涙がにじんだ。人生である年齢に達したときに訪れる選択と、やらなければならないことを描いている素晴らしい作品だ。

そして今夏、アニメ映画でどうしても触れておかねばならない作品がもう一本ある。