Nov 09, 2017 column

玉木宏×鈴木京香の匂い立つ色香に目がくらむ 舞台『危険な関係』

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玉木宏と鈴木京香による背徳のラブサスペンスとして注目された舞台『危険な関係』が、東京Bunkamuraシアターコクーンで好評のうち幕を閉じ、大阪へ。11月9日から14日までの大阪公演を前に、東京公演を舞台写真とともに振り返ります。

極めて背徳感に満ちた世界に、息をひそめた。

舞台は、18世紀、パリの社交界。未亡人である、メルトゥイユ侯爵夫人(鈴木京香)はかつての愛人への恨みをはらそうと、名うての遊び人として名を馳せるヴァルモン子爵(玉木宏)に、元愛人の婚約者・セシル(青山美郷)を誘惑するように頼む。
ヴァルモンは、お目当ての女性・トゥルヴェル法院長夫人(野々すみ花)の攻略に夢中で、最初は気が進まなかったものの、セシルの母(高橋惠子)に恋路を邪魔されたことに気分を害し、力を貸すことにする。
セシルには、ダンスニー(千葉雄大)という、ほのかに心を惹かれ合う同世代の青年がいたが、ヴァルモンはセシルを、メルトゥイユはダンスニーを、手練のふたりが、若く純粋な男女を手玉にとって破滅へと導いていく。

 

【撮影:細野晋司】

 

原作は、往復書簡の形式で書かれた、18世紀のフランス文学で、古今東西、多くの映画や舞台や漫画になっているだけあって、サスペンスとしても楽しめるし、ヴァルモン子爵の色男っぷりもキャラクターとしての強度が高い。
以前、東海テレビが、舞台を日本に置き換えて昼ドラにしたこともあるほどの愛欲にまみれたドロドロの世界だが、狙った相手をじわじわと攻略していく心理作戦は、じつに怜悧で論理的で、ソープオペラとして片付けられない知性と品を醸す。
今回の舞台も、ラクロが書いた小説を下敷きに、クリストファー・ハンプトンが戯曲化(訳は広田敦郎)、リチャード・トワイマンが演出し、知性と品もキープしている。

設定は18世紀のパリの社交界ではあるが、外国人セレブが好む日本の高給ホテルのような、和を取り入れてモダンにデザインされた室内の装置や、ウエストや足のラインを強調するような衣裳(美術、衣裳ともにジョン・ボウサー)は昔と現代のファッションの融合のようでもあって、眼福であるうえ、描かれていることが身近に感じられた。

 

【撮影:細野晋司】

 

なにより、その肉体と知性をふんだんに使って、次々と様々なタイプの女性を仕留めていく稀代のプレイボーイ役を玉木宏が、その肉体を惜しげもなく晒しながら(上半身だけだが)、一瞬たりとも気を抜かずに2時間45分(休憩込み)演じきる姿に拍手を贈りたい。ただ、一瞬、ユーモラスなシーンもあるにはあるが、そこも含めて、本人はずっと気を張っているにちがいない。でもそれをあくまでも軽やか、かつ叙情をもって見せるのも玉木の才能であろう。
彼が、上腕や胸筋を晒した瞬間は、客席の空気に漣が立つようだった。でもあからさまに、ため息をついたら行儀が悪いとばかりに、皆、暗闇で平静を装う、そんな雰囲気込みで楽しめる。

 

【撮影:細野晋司】