Dec 30, 2017

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映画ライターが選ぶ2017年ベスト5&2018年の期待作【邦画編】

『散歩する侵略者』(DVD&ブルーレイ 2018年3月7日発売)©2017「散歩する侵略者」製作委員会

多くの映画が公開された2017年、映画ライターが選ぶ今年のベスト映画5本と、来年の期待作は?作家の独創性と監督の手腕が融合し、日本映画界を担う実力派のキャストたちが魅せてくれた“邦画編”をお届けする。

 

2017年公開の邦画でダントツに好きだったのは黒沢清監督の『散歩する侵略者』。「黒沢監督が何故SF映画を?」という気持ちで観始めたのだが、分かりやすい宇宙人が出てくるでもなく、冒頭はただただ不気味で不穏な気配が漂うばかり。しばらくすると松田龍平や高杉真宙らが扮した侵略者が人間の“概念”を奪い始め、“家族”や“自分”などの概念を奪われた瞬間に人間らしさを失う恐怖を見事に描いていた。また、侵略者側の芝居は冷静かつ淡々としているのに対し、行方不明になっていた夫(松田)が別人のようになって帰ってきても側を離れず絶妙な愛情を見せてくれた長澤まさみや、侵略者の天野(高杉)と行動を共にするジャーナリストの桜井を演じた長谷川博巳のエモーショナルな芝居にも心を打たれた。『クリーピー 偽りの隣人』(16年)もそうだが、最近の黒沢作品は随所にユーモアが盛り込まれているため、重すぎず暗すぎないところも魅力のひとつだろう。黒沢監督が次にどんな映画を撮るのか非常に楽しみだ。

続いて強烈な映画体験を与えてくれたのは『彼女がその名を知らない鳥たち』。クズな人間しか出てこないのにこれほどまでに感動し、心惹かれてしまった映画は他にはない。いつものチャーミングさを封印し、下劣で汚らしい男・陣治を徹底して演じた阿部サダヲは、「こんな阿部サダヲが見たかった!」と思わず声をあげたくなるほどビジュアル含め新鮮な芝居で楽しませてくれた。中でも陣治が蒼井優演じる十和子にマッサージをするシーンは、切なくて気持ち悪いというなんとも言えない気分になったものだ。ラストは「愛する誰かのためにこれほどまでに自分を犠牲にすることができるだろうか」と深く考えさせられた作品でもあった。

 

『あゝ、荒野』(DVD&ブルーレイ 発売中)©2017『あゝ、荒野』フィルムパートナーズ

 

新たな一面を見せてくれたのは阿部サダヲだけではない。『あゝ、荒野』での菅田将暉の演技には鬼気迫るものがあった。もちろんブレイク前に出演した『共喰い』(13年)でもキラキラしていない生々しい彼の姿を見ることができるが、人気絶頂の中で挑戦したこの映画の新次という役は、彼が今持っている役者としてのスキルを全て注ぎ込んだかのような芝居で圧倒されてしまった。また、新次の兄弟分で吃音と赤面対人恐怖症に悩む健ニを、『息もできない』(09年)のヤン・イクチュンがひたむきに演じていたのも強く印象に残った。

 

『関ヶ原』(DVD&ブルーレイ 2018年2月7日発売) ©2017「関ヶ原」製作委員会

 

映像化困難と言われる“関ヶ原の戦い”をエンターテイメント大作として完成させた『関ヶ原』も今年のベストには欠かせない。いったい何人のエキストラを用意したのか?と目を疑うほど合戦シーンはリアルに作り込まれ、岡田准一が“義の心を持った石田三成”を魅力的に演じていた。また東本願寺など実際の歴史的建造物で撮影されたシーンもあるため、作り物ではない圧倒的な重厚感を醸し出していたのも素晴らしかった。

最後にもう一本、ポップでキュートだけど毒っ気もある『勝手にふるえてろ』は、いろんな意味で衝撃作だった。妄想好きな人にとっての“あるある”が詰まった映画でもあり、子供の頃から顔は知っていてもよく知らない人たちと妄想で会話をしていた私にとって、松岡茉優が演じた主人公・ヨシカの日常は他人事ではなかったのだ。こんなにどっぷりと感情移入しながら観られる映画はそうそうない。最後はヨシカをギュッと抱きしめたくなったほどこの映画が好きだ。

 

『羊の木』(2018年2月3日公開) © 2018『羊の木』製作委員会 ©山上たつひこ、いがらしみきお/講談社

 

2018年に公開される作品ではコミック原作の『羊の木』、オリジナル脚本の『犬猿』、人気コミックの『曇天に笑う』、小説が原作の『娼年』の4本に期待している。中でも元受刑者を演じる松田龍平や北村一輝など個性派俳優たちと、受刑者の受け入れ担当を命じられた市役所職員を演じる錦戸亮が演技バトルを繰り広げる『羊の木』は期待が高まる。日本ギャグマンガ界のレジェンドがタッグを組んだ衝撃作を吉田大八監督がどう料理するのか公開を楽しみに待ちたい。

文/奥村百恵

 

作品紹介

 

『散歩する侵略者』

Blu-ray 通常版:4800円(税抜) DVD 通常版:3800円(税抜)
Blu-ray 特別版:6700円(税抜) DVD 特別版:5700円(税抜)
2018年3月7日(水)発売
発売・販売元:ポニーキャニオン
ⓒ2017「散歩する侵略者」製作委員会

 

『あゝ、荒野』

特装版 DVD-BOX:8900円(税抜)
特装版 Blu-ray BOX:9800円(税抜)
発売中
発売・販売元:バップ
©2017『あゝ、荒野』フィルムパートナーズ

 

『関ヶ原』

Blu-ray 豪華版:6800円(税抜) DVD 豪華版:5800円(税抜)
Blu-ray通常版:4800円(税抜) DVD 通常版:3800円(税抜)
2018年2月7日(水)発売
発売元:アスミック・エース 販売元:東宝
©2017「関ヶ原」製作委員会

 

『羊の木』

2018年2月3日(土)公開
配給:アスミック・エース
© 2018『羊の木』製作委員会 ©山上たつひこ、いがらしみきお/講談社

 

関連書籍紹介

 

『散歩する侵略者』前川知大/角川文庫

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『彼女がその名を知らない鳥たち』沼田まほかる/幻冬舎文庫

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『あゝ、荒野』寺山修司/角川文庫

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『関ケ原』司馬遼太郎/新潮文庫刊

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『勝手にふるえてろ』綿矢りさ/文春文庫

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『羊の木』山上たつひこ、いがらしみきお/イブニング

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『曇天に笑う』唐々煙/月刊コミックアヴァルス

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『娼年』石田衣良/集英社文庫

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