Dec 29, 2018 column

エンタメ界を賑わせた“俳優”で2018年を振り返る!“監督”で観たい2019年邦画も解説

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『blank13』(高橋一生/Blu-ray・DVD 発売中) ©2017「blank13」製作委員会

2018年もエンターテインメント界を賑わせてくれた日本映画とドラマ。特に話題になった“俳優”を切り口に今年の話題作を振り返りつつ、気になる“監督”たちが手掛ける2019年の邦画の展望、そして注目すべきドラマを見てみよう。

2018年、絶好調だった俳優8人とエンタメを振り返る!

2017年、『カルテット』や『おんな城主 直虎』で本格的にブレイクした高橋一生は2018年も変わらず好調。この12月には風変わりな大学講師・一輝と、彼に影響されていく周囲の人々を温かく見つめたドラマ『僕らは奇跡でできている』が放映終了したばかり。劇中で明確にはされなかったものの、発達障害を抱えた一輝という難しかったであろう役どころを実にチャーミングかつ巧みに演じていた。特に同僚の樫野木先生(要潤)に暴言とも言えるある言葉を投げつけられた時の(第9話)表情の変化を長回しで捉えたショットは鳥肌もので、長いキャリアの中で培ってきた確かな演技力はさすがと唸らされた。

2018年も『嘘を愛する女』や『空飛ぶタイヤ』『億男』などさまざまな作品で実力を発揮してきた高橋一生だが、齊藤工が長編初メガホンを執った『blank13』は彼の繊細さが特に活きた作品だったように思う。13年ぶりに対面した余命わずかな父(リリー・フランキー)との淡々としたやり取りを通して、主人公コウジの静謐の佇まいの中に体温と芯を感じさせてくれた。齊藤工は信頼のおける俳優に声をかけたと語っていたが、それも納得。

そして2019年の高橋一生はNHKドラマ『みかづき』から始まり、3月には川口春奈と共演する切ないラブストーリー『九月の恋と出会うまで』が、8月末には時代劇『引っ越し大名!』が公開される。『九月の恋と出会うまで』では愛する女性を守るために時空を超えた“奇跡”を起こそうとする主人公・平野を演じるのだが、これまでに見せたことがないようなスウィートな姿が見られるかも? 思えばストレートな恋愛ものは彼にとっても珍しいはずなので期待は高まる。

『娼年』(松坂桃李/Blu-ray・DVD 発売中) ©石田衣良/集英社 2017映画『娼年』製作委員会

近年では紳士な内面までも知られてきて非の打ちどころがないと言っても過言ではない正統派イケメンの松坂桃李は、そのルックスを活かした作品も多いけれど、『ピース オブ ケイク』(15年)のおかまや、『劇場版MOZU』(15年)のテロリスト、『彼女がその名を知らない鳥たち』(17年)のクズ男など、もともとユニークかつ野心的なチョイスが光っていた。そんな彼は2018年、キャリア史上、最も挑戦的な作品に出演。舞台版から映画版にも続投した『娼年』ではR18指定がむしろ名誉に思えるほど大胆かつ刺激的なセックスシーンを連発。生半可な覚悟ではできなかっただろう意欲的な表現は、いい意味であっけにとられるほどだった。続いて公開された『孤狼の血』では役所広司や江口洋介など並みいる実力派が濃い芝居合戦を繰り広げる中、もみくちゃにされながらも次第に核心に迫っていく若き刑事を好演。2018年は彼にとって主演者としての覚悟と実力を、脇役としてもベテランたちに埋もれない存在感をそれぞれ提示した年になったのではないだろうか。2019年は初めて映画化される佐伯泰英原作の人気シリーズ『居眠り磐音』に主演する他、直木賞と本屋大賞を受賞した恩田陸の『蜜蜂と遠雷』にも出演。快進撃は続く!

『サムライマラソン』(佐藤健/2019年2月22日公開) ©“SAMURAI MARATHON 1855”Film Partners

以前から演技力に定評のある佐藤健だが、さまざまな物議をかもしたNHK連続テレビ小説『半分、青い。』と、後半、視聴率をぐんぐん伸ばした『義母と娘のブルース』が同時期に放映されていた時は、その振れ幅の大きさに舌を巻いたものだった。特に『ぎぼむす』では、おバカだけど真っ直ぐな麦田を好演し、視聴者をキュンキュンさせた。映画で言うと、初の悪役に挑んだ『いぬやしき』ではアラサーにも関わらず高校生・獅子神役に違和感なく臨んでいた。そんな佐藤健の原点と言えるのが『仮面ライダー電王』シリーズだが、売れっ子になるとライダーや戦隊もの出身であることを隠す俳優もいる中、彼は公開されたばかりの『仮面ライダー平成ジェネレーションズFOREVER』に、電王こと野上良太郎役で出演。自身の過去をなかったものにしない姿勢が素晴らしいし信頼できる! 2019年は小松菜奈や森山未來、染谷将太、長谷川博己などオールスターキャストが揃った『サムライマラソン』で堂々主演を張る佐藤健。マラソンの発祥と言われている“安政遠足(とおあし)”に参加したさまざまな人々の姿を描く幕末エンターテインメントで、幕府のスパイとして藩に潜入している忍び・唐沢甚内を演じる。彼にとっては大ヒット作『るろうに剣心』以来の時代劇。時代劇ならではの凛々しさと清廉な佇まいに注目したい。

『美人が婚活してみたら』(田中圭/2019年3月23日公開)

2018年の顔と言えるのが田中圭。これまでは主人公の親友やヒロインの相手役といったポジションで安定感を見せてきた彼が、上司と後輩(両方♂)に想いを寄せられあたふたと困りながらも真摯に向き合うはるたんこと春田を演じた『おっさんずラブ』は、ツイッターの世界トレンドワード1位になるなど、もはや社会現象と言えるほどの大きな盛り上がりを見せ、田中も特大ブレイク。いわゆるボーイズ・ラブではあるものの、描かれたのは性別を超えた人間愛だったからこそ大きな反響を呼んだのだろう。2019年には映画化もされるので、はるたんと牧(林遣都)の“その後”を楽しみにしている人は多いはず! 他にも『健康で文化的な最低限度の生活』や『獣になれない私たち』と連続でドラマ出演、11月公開の『スマホを落としただけなのに』でも北川景子とリアルな恋人像を体現して話題に。2019年には先述した『おっさんずラブ』の他、映画『美人が婚活してみたら』にも出演。女性の切実さをコミカルに味付けした本作で、如才ないイケメン歯科医の矢田部役を演じるのだが、本作の彼はエロいらしいという情報を掴んだのでヒロインをどんなふうに惑わせるのかドキドキ!