Sep 19, 2019 mekiki

渡辺 謙、ブロードウェイ・ミュージカル 『The King and I 王様と私』を振り返る

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マンハッタンの真ん中に位置するブロードウェイ劇場街から、少し北上したところにあるリンカーンセンターは、メトロポリタン・オペラを始めとするオペラ、バレエ、フィルハーモニー、ジャズ、演劇などの専用ホールがひしめく、文化・芸術の壮大な複合施設。ニューヨークのアッパー・ウエストらしい、ハイソ感漂うパフォーミングアーツの殿堂だ。ミュージカルの製作・上演においても、商業主義とは一線を画し(といってもチケット代は高額)、インテリジェンスを重視した、高品質のステージを提供することで定評がある。

こうした評価を不動のものにした最大の功労者と言えるのが、今回の『王様と私』の演出家バートレット・シャーと、美術・衣裳などの彼のクリエイティブ・チーム、そして、その多くの作品で主演をつとめてきたブロードウェイ・スターのケリー・オハラだ。2015年初演のシャー演出『王様と私』は、これまで5回トニー賞にノミネートされながら、不思議とまだ受賞がなかったオハラに、今度こそトニー賞主演女優賞をプレゼントするための、必勝プロジェクトでもあった。そこで鍵を握るオハラの相手役に選ばれたのが、ハリウッド・スターのケン・ワタナベ。なんともすごいお膳立てをされたものだ。

「でもね、そんなお膳立てもへったくれも無かったんですよ。ミュージカルで『王様と私』をやるんだけど、おまえ王様役をやらないかと言われて、そんなの考えたことも無かったので、最初は『えぇ? いや勘弁してよ』という感じでした。実は、外国で映画をやり始めたころ、僕は向こうのマネージャーに『まあ、いつかアメリカで舞台をやる日が来るというのが、俺の最終的なゴールかもしれないよね』なんてことを、酒を飲んだ勢いでしゃべったことがあって、彼はそれを、ずっと覚えていたんですね。で、『王様と私』の話を持ってこられた時にその話をされて、『ああ、そういえば俺、言ったわ』と思い出した。と言っても、さすがにリンカーンセンターでミュージカルをやるというケースは、遙かに想像を超えたものでしたけどね。いま思うと、無知だったことが、モチベーションにつながったのかもしれない。何もわからず、1か月の稽古の間、ただ自分がやらなければならないことに必死になっていました。事情をぜんぶ知ったうえでもう一回ゼロからやれと言われたら、たぶんできないと思う。いやぁ知らなくてよかった(笑)」

衣裳協力/BRIONI(BRIONI JAPAN)
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