Mar 14, 2019 mekiki

バレエ界のレジェンド、マニュエル・ルグリに聞いた新境地

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バレエ界のレジェンド、マニュエル・ルグリ。世界最高峰のパリ・オペラ座バレエ団在籍中はエトワール(階級制の同バレエ団における最高位)として一時代を築き、2009年にその座を退いた後は、ウィーン国立バレエ団の芸術監督に就任(2010)、飛躍的に同バレエ団のクオリティを向上させている。ダンサーとしては、完璧なテクニックと、知性に裏打ちされた緻密かつ豊かな表現力で、非の打ちどころのない大スター。指導者としては、確かな実績を重ね、広く深い尊敬を集めるカリスマだ。

20歳の時に初来日して以来、日本でも絶大な人気を誇り、今年で実に35年の月日が経とうとしている。30代後半で現役引退がちらつき始めるバレエ界にあって、驚異的なロング・キャリアを更新中のルグリが、今回、さらに新たな境地を見せて話題になっている。

『スターズ・イン・ブルー』という新境地

3月8日に東京で幕を開けた『スターズ・イン・ブルー』は、ふだんバレエの上演には使用しないコンサートホールを舞台に、ルグリを含めた4人のバレエダンサーによるダンスと、新進気鋭のヴァイオリニストとピアニストによるライブ演奏が並立する”ダンス・コンサート”と銘打っている。ダンサーにとっては、オーケストラピットが無いぶん舞台と客席がグッと近くなるうえに、ふだんはピットにいて見えない演奏家の姿が同じフロアにあることで、音楽の存在をより強く、かつ繊細に感じ取りながら踊ることとなる。

ダンスコンサートと銘打った『スターズ・イン・ブルー』。左からヴァイオリンの三浦文彰、滝澤志野(ウィーン国立バレエ団専属ピアニスト)、ピアノの田村響、ルグリ、スミルノワ、チュージン、アッツオーニ ©︎ 瀬戸秀美

「とても新しく、フレッシュな体験になりました。少数の、しかし非常に優れたダンサーと、輝かしい才能に溢れたヴァイオリニストとピアニスト。この7人だけで、装置も小道具も何もないガランとした舞台で、音楽とバレエとの関係だけに集中するのは、僕の経験においてもビッグ・チャレンジです。それだけに、とてもうまくいったことが本当にうれしい」

興奮冷めやらぬ東京公演の終演直後にインタビューに応じたルグリは、充実と安堵に満たされた晴れやかな表情だ。実は今回、ウィーンでルグリにより才能を開花させた日本人ダンサーの木本全優が、骨折のため出演できなくなり、急遽、ハンブルク・バレエ団を代表するスター・バレリーナのシルヴィア・アッツォーニの参加が決定。そのアッツォーニと、ボリショイ・バレエ団のエース・ダンサー、セミョーン・チュージンが初顔合わせでペアを組む『ソナタ』(振付/ウヴェ・ショルツ)が、オープニング作品となった。二人はそんな事情は露ほども匂わせず、出てきた瞬間から、魂が同じレベルにあるかのように親和的なパ・ド・ドゥ(デュエット)を展開した。

9日の東京公演直後にインタビューをした

「セミョーンと話しながら彼と踊る相手を探し始めて、ふとシルヴィアのことが思い浮かび聞いてみたら、たまたまこの期間だけ空いていたんですよ。夢かと思いました。初日の15日前のことです。もちろん、二人の相性がいいということには、確信がありました。彼らほどのダンサーになれば、こうしたことには馴れていますから、そこには何の不安もなかったですね」

音楽は、ラフマニノフの「チェロ・ソナタ 作品19」。チェロのための曲を、三浦文彰がヴァイオリンに替え、田村響のピアノと演奏することも、新たな趣向となった。

オルガ・スミルノワとの初共演が話題に

もうひとつ、ルグリにとって未知の体験となったのが、オルガ・スミルノワとの初共演による新作の世界初演。

スミルノワは、まだ20代の若さながら、天下のボリショイ・バレエの看板を背負うほどのプリマ・バレリーナだ。ボリショイではチュージンとペアを組むことが多く、ルグリに招かれて二人でウィーン国立バレエに客演したり、ルグリ個人のプロデュース公演に参加することはあったが、これまでひとつの作品の中で、ルグリと踊ったことはなかった。ルグリ自身も、まさか彼女と踊る機会が来るとは、まったく考えていなかったという。

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