Aug 10, 2019 mekiki

ジャズ作曲家・挾間美帆のクラシック遍歴(後編)

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書き下ろしの新曲「ピアノ協奏曲第1番」

――ヴィンスみたいなファンタジックな音がするクラシックの作曲家っていますか?

ラヴェルは音の魔術師ってよく言われていて、色彩感が豊かで、魔法のような音がすると思うんです。でも、ヴィンスはちょっと違ってて、本当の魔法じゃなくて、メルヘンチックな、メリーゴーランドに乗ってる子供がかかる魔法みたいな、かわいい感じの魔法な気がするんです。ヴィンスには普遍的な個性があって「これは絶対ヴィンスだよね」ってわかるんですよ。一番わかりやすいのがジム・ベアードと一緒にやっているメトロポール・オーケストラとの『Revolutions』。このアルバムの中にはヴィンスの作品とヴィンスじゃない人が書いた作品が混じっているんですけど、どれがヴィンスかすぐにわかるんです。彼は音の使い方や色彩感が全然違うんですよ。

――『Revolutions』のジャケットって回転ブランコですよね。アートワークとも繋がっているんですね、なるほど。ヴィンスの話もそうですけど、ここまで音楽だけじゃなくて、その音楽が持つストーリーやイメージみたいな話をしてきました。では、それを踏まえて、「NEO-SYMPHONIC JAZZ at 藝劇」のために挾間さんが書き下ろした新曲「ピアノ協奏曲第1番」はどんなものになりそうですか?

一年前にも管弦楽作品を書く機会があったんですけど、その時はそういうことを全く考えないようにして作ったんです。アカデミックな部分で自分にとって新しい挑戦をしたくて。それまでに慣れ親しんだ手癖みたいなもので曲を作ってしまうと感じる時期があって、このままじゃいつまで経っても殻が破れないと思ったので、今までにアナリーゼ(楽曲分析)してなかった曲をアナリーゼしてみるとか、聴いたことがないような曲を聴いてそれがどういう構成になっているか、どんな和音になっているかを分析するとか、そういうところから自分を無理やり新しいところに置いていたんです。だから、その曲は手癖ではない心地よくないところに自分を持って行って作った感じの曲が出来上がってきたんですよ。

MSM concert マンハッタン音楽院大学院留学中の作曲科発表会

でも、「NEO-SYMPHONIC JAZZ at 藝劇」に関していうと、こういうコンサートを人生をかけてやりたいなってずっと思っていたものなんですね。その一番のモチベーションはラプソディーインブルーがいまだに最新の(シンフォニック)ジャズ音楽としてオーケストラに演奏されるってことが謎だなとずっと思っていたことです。だって、作られて初演されてから90年以上経っているわけですから。それが自分の中で納得がいかなかったのが一番の動機だったんですね。なので、「次世代のラプソディー・イン・ブルー」みたいなものがあったらいいのになって。「NEO-SYMPHONIC JAZZ at 藝劇」で自分のピアノ・コンチェルトに挑戦することになって、せっかくピアノコンチェルトを書くんだったら、「ラプソディー・イン・ブルー」に対抗できるようなものを書きたいなと思いました。再演してほしいし、長く親しんでほしいことを考えて書いています。

コンチェルトなので、1,2,3楽章ってオーソドックスな形式にすると思うんですけど、その中でもストーリーが見えやすくて、親しみやすい要素があることは意識して書けたらいいなと言う気持ちはあります。だから、ピアノを弾いてくれるシャイ・マエストロに寄せすぎるつもりはなくて、「ソリストがシャイだからシャイっぽい曲を書こう」ということではなくて、曲の中にカデンツァと呼ばれるソリストが自分で勝手にしていい場所があるので、そこはシャイに完全にお任せにしていこうかなって思ってます。今後、その曲をクラシックのピアニストが演奏できるような状態にもしたいから、将来的にはソロも書き譜にするかもしれない。この曲に関しては、長く演奏してもらえるようなコンセプトを一番に考えていますね。

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