Aug 10, 2019 mekiki

ジャズ作曲家・挾間美帆のクラシック遍歴(後編)

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「ジャズ作曲家・挾間美帆のクラシック遍歴(前編)」では、作曲家としてのルーツとクラシックの関係、演奏家に求めることと今注目のプレーヤー、そして、小学生から高校生まで好きだったクラシック音楽を挙げてもらった。今回は、いよいよ、大学生から今日までのクラシック遍歴を語ってもらう。

――今まで話を聞いてて面白いと思ったのは、挾間さんって音楽から音楽以外の抽象的な情景や感情を感じてたり、そういう抽象的なものを敢えて取り出したりしながら楽しんでいたことです。

音楽的なここが素晴らしいとかは子供のころは全く考えてなかったですね。人生で初めて海外旅行に行ったのは高校3年生のころなんですけど、レスピーギの「ローマ三部作」のゆかりの地を回りたくて、ローマに行って「ローマの噴水」と「ローマの松」って二つの組曲の主要な場所を回ったりしました。カタコンベのアッピア街道に行って、そこでMDでその音源を聴くとか、「ローマの祭り」に「チルチェンセス」ってキリスト教徒が猛獣に殺される恐ろしい“祭り”曲があるんですけど、コロッセオに行ってその曲を聴くとかね。そういうことをしてました。

――大学生以降はどうですか?

大人になってからやっと、マーラーとか、ブルックナーがいいと思うようになりました。彼らの音楽はストーリー性はあるんですけど、展開が遅いから、せっかちな子供にとっては長い時間をかけてその曲のストーリーに入り込むことが難しかったと思うんです。でも、それができるようになったら、純粋に音楽として楽しむことができるようになりました。でも、ブルックナーとマーラーをやっと楽しめるようになったのはアメリカに留学してからだと思います。

ベルリンに行って(世界的な指揮者で、ベルリン・フィルの前音楽監督の)サイモン・ラトルを追っかけしていたときがちょうど彼がブルックナーに取り掛かっていたころだったので、ラトルが指揮をするベルリン・フィルを聴きに行って「ブルックナーってこんなにいい曲だったんだ」と思ったことがありました。それにサイモン・ラトルとベルリン・フィルの最後の共演はマーラーでしたね。

あと、たまたま旅行で友達を訪ねてウィーンに行ったことがあって。その友達の親戚がウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のチューバ奏者なんですけど、彼が「リハーサルに入れてあげる」って言ってくれて。ウィーン・フィルのニューイヤー・コンサートを必ずTVで中継する際にも使われる楽友協会でのリハーサル見せてもらったんです。指揮者のロリン・マゼールが健在な時で、ブルックナーの交響曲第八番をなんの細かい練習もせずに通して終わるっていう、これのどこがリハなんだろうってものを見せてもらったんですけど(笑)、楽友協会は木造だからブルックナーの音圧で地響きがするんです。そういう経験から、安易なストーリーを超えた衝撃で音楽を聴けるようになったんです。

大学3年生の夏休みにイギリス、Dartington International Summer Schoolに参加

――マーラーとブルックナーだったら何が好きですか?

そんな体験からブルックナーは交響曲第八番かな。どこがいいから聴いてくださいって詳しい説明は出来ないのですが…。マーラーは、やはり有名な「アダージェット」が入ってる「交響曲第5番」がいいんじゃないでしょうか。

個人的なことを言うと、サイモン・ラトルが音楽監督として最後にベルリン・フィルと共演したコンサートはマーラーの「交響曲第六番」だったので忘れられないですね。どうしてもこの目で見たくてベルリンまで行って、コンサートでは半分泣いてて最後のほうはよく覚えてないけど、ベルリンフィルのコンサートホールって奏者の真後ろにも客席があるんです。「交響曲第六番」は長い時間をかけて運命に立ち向かわなければいけない曲で、最後のほうの裁判の判決が下るってシーンで大きな木槌をがんって振り下ろしたりするんですね。ほぼステージと一体化している席の人々も含め観客全員がビクっとしたその空気感がとても印象に残っています。

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