Aug 09, 2019 mekiki

ジャズ作曲家・挾間美帆のクラシック遍歴(前編)

A A

狭間美帆のクラシック遍歴

――では、子供の頃、どういうクラシックが好きだったか聞かせてもらえますか?

小学生の時はとにかくレスピーギが好きで、中学生の時はとにかく吉松隆。吉松隆はオーケストラでもああいうロックっぽいやつとか作っていいんだってのが新鮮だったんですよね。『タルカス(キース・エマーソン&グレッグ・レイク)-吉松隆の管弦楽版に基づく吹奏楽アレンジ版』でキース・エマーソンの「タルカス」を吉松隆さんが管弦楽版に直したものを、そのまま一切変えずに吹奏楽版にする仕事をしたことはあります。

高校生の時はレナード・バーンスタインの「エレミア」って交響曲にめちゃくちゃハマりました。「エレミア」の交響曲の2楽章をエレクトーンのコンクールで弾いていた友達がいたんですよ。その子は優勝したんですけど、なんてかっこいい曲なんだと、私もこういう曲を演奏したかったなって。それで本物を聴いたら一楽章がまあ暗いんですけど、その暗い先に素晴らしいクライマックスが待っているんです。それまでオーケストラって色彩感だけで成り立っていると私は思っていたんですね。ラヴェルとかレスピーギみたいなものがバイブルで、パレットに色が揃っていて、それをどうやって混ぜるのか、どうやってパステルカラーを作るのか、みたいなことに命をかける曲ばっかり聴いて育ってきたんです。だから、「エレミア」の独特の暗さと言うか、どの色を混ぜても深緑にしかならないようなオーケストラの使い方には衝撃を受けました。それに和音の使い方が非常に魅力的で、後から考えるとすごくジャズ的だったんです。

あとはアンリ・ディティユー。オーケストレーションはそんなに響かなかったんですけど、使っている和音やハーモニーの種類が魅力的で、「ピアノソナタ」にハマったことがある。一人じゃ難しくてとても弾けなくて、大学院の頃クラシック音楽にも精通していたクラスメイトと二人がかりで演奏したことがある(笑)。

国立音大付属高校在学中に同級生たちと

――バーンスタインやラヴェルが好きってことになると、ジャズ作曲家としての挾間さんの音楽性とも通じるものがあるので、高校生のころからあまり趣味が変わっていないとも言える気がしますね。

そうですね。全然変わっていないです。高校生のころにマイケル・ブレッカーの『ワイドアングル』を聴いていたり。そのままm_unitに直結しているんです。趣味が一貫していますね。

――ちなみに誰でも通るようなベートーヴェンとかモーツァルトは?

おじいちゃんが聴いていたんですけど、わたしはあまりハマらなかったです。その当時は良さがわからなかったですね。ドミソばっかりだと思っていて、プロコフィエフみたいに「変だね、アハハ」って笑えるほうが良かったんです。それに天邪鬼な子供だったから、いっぱいある組曲の中でハチャトリアンの「剣の舞」が有名ですねって言われても「その有名なやつじゃないやつでもっといいなやつがある!」とか言い張ってました。ハチャトリアンなら「レズギンカ」がこの中では一番いいんだとか言ってるマニアックな子供ではありました。

文/柳樂光隆
撮影/森山祐子

公演情報
NEO-SYMPHONIC JAZZ at 芸劇

コンサート全体の構成をプロデュースするのは、ニューヨークを拠点にワールドワイドに活躍するジャズ作曲家の挾間美帆。ジャズ界で最も権威のある米・ダウンビート誌が特集した”未来を担う25人のジャズアーティスト”において、アジア人で唯一選出されたジャズ界の逸材だ。今回の公演では、第一部でシンフォニック・ジャズの偉大な先達ガーシュウィンとバーンスタインの作品、さらにそのふたり以降の重要人物クラウス・オガーマンとヴィンス・メンドーサの作品を採り上げる。
会場:
東京芸術劇場コンサートホール
日時:
2019年8月30日(金)19:00開演(ロビー開場18:00)
※18:40から狭間美帆によるプレトーク開催
問い合わせ:
東京芸術劇場ボックスオフィス0570-010-296 (休館日を除く10:00-19:00)

公式ページ:http://www.geigeki.jp/performance/concert183/

柳樂 光隆

1979年、島根・出雲生まれ。音楽評論家。元レコード屋店長。21世紀以降のジャズをまとめた世界初のジャズ本『Jazz The New Chapter』シリーズ監修者。共著に後藤雅洋、村井康司との鼎談集『100年のジャズを聴く』など。ライナーノーツ多数。若林恵、宮田文久とともに編集者やライター、ジャーナリストを活気づけるための勉強会《音筆の会》を共催。

SHARE
このエントリーをはてなブックマークに追加

RANKING

  • 2日間
  • 週間
  • 月間
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10