Sep 17, 2019 mekiki

作曲家・藤倉大の音楽性〜彼はどういう道を歩んできたか

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藤倉大が演奏家に人気がある理由

要するに演奏家のナンパである。他の作曲家に比べて、異常なまでに演奏家の仲間が多いのも藤倉さんの特徴である。それは学生時代に遡るらしい。
ちなみに、話に出てきた先生のダリル・ランズウィックはジャズのベーシストでありロンドン交響楽団のコントラバス奏者であり、ジョン・ケージに傾倒しながら、オーネット・コールマンと共演し、エルトン・ジョンやジョージ・マイケルのスタジオ・ミュージシャンもやり、映画「スター・ウォーズ」ではハリソン・フォードが最初に出てくるシーンで怪物たちのバンドでエレキベースの音を担当したことがあるという幅広さで、いまの藤倉さんに大きな影響を与えた人である。

「演奏家の卒業試験では、必ず1950年以降に書かれた曲をひとつ入れなければいけない。みんな本当はラフマニノフとかばっかり弾きたいのに、嫌々ながら1分くらいの現代曲を入れて弾いているような状況でした。
それで、1年生のときは一人が僕に卒業試験用の曲を頼んできて、2年めは7、8人。3年では15、6人。同じ楽器の人が、どんどん僕に頼んでくる。彼らは、どうせ現代音楽が嫌なんだったら、いっそ友達に頼みたいと。知っている人の方がいいと。2年生の終わりにポーランドのセロツキ国際作曲コンクールに優勝して、少しずつプロの人に演奏されたりするようになって。そのときは、いろんなコンクールに何十と応募しまくっていました。賞金で家賃払っていたから(笑)。どんどん勝たないといけない。
それで、僕も忙しくて、4曲も同じ楽器のために別々に書けないから、1曲書いて全員に渡した。共同委嘱みたいなものです。チェロの曲をヴァイオリンに書き直したりもしていました。時間があまりにもないから。
すると一つの現象が起きる。ヴァイオリンの卒業試験、リサイタルみたいなものですけど、朝から晩まで次々やるじゃないですか。試験だから。たとえば5人やったら曲がみんな違うけど、なぜか僕の曲だけみんな一緒なんです。しまいには試験官が、『ダイ・フジクラって誰? 今日で4回目だ、同じ曲が演奏されるのは』と。
フルートのときもそうだったかな。で、呼び出された。怒られるのかなと思ったら、有名な演奏家だった試験官が『君さ、僕にも曲を書いてよ』。それで今も良く演奏されている曲がありますよ」

作曲家として演奏家にモテモテなのは、いまに始まったことではない。大学時代からそうだったのである。

「僕の人生ってね、8歳くらいのときから全然変わってないですよ。弾く人たちがちょっと有名になってきたくらいで。
演奏家が何を言われたら嫌かとか、若いときはわからないですよ。作曲家としてはね。よくあるのが、リハーサルで作曲家が演奏家に『それ、ちゃんと弾かなくていいから』と。音符書いているのに。『ええっ?』となっちゃう。作曲家の言う意味もわかるんですけど。そういうことを言っちゃいけないんだなと思ったりとかね。縦が合うように楽譜に書いているのに、『縦、合わなくていいから』と言っちゃうと、一気に士気が下がっちゃう。悪気がなくとも、プロのオケの前で、リハのときに言っちゃっている作曲家を目撃したりする。
僕は大学生の友達からそれを学んでいた。『そこは無理して合わせなくてふわっとした感じでいいんだけど』と言ったら、『だったら大ちゃん、わたし昨日飲みにも行かずに練習したのに~!』と言われちゃう。だったら最初からそういう風にきちんと楽譜に書かないといけない、というのを学んだ」

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