Apr 28, 2017

インタビュー299

アカデミー賞ノミネート監督・堤大介とイングレスの川島優志 世界が注目するクリエイター対談が実現、被災地への想いを語る。

世界が注目する日本人クリエイター対談

堤大介(アカデミー賞ノミネート『ダム・キーパー』監督) 
×
川島優志(「イングレス」クリエイター)

 

「世界を変えようとする気のないクリエイターは、辞めたほうがいい」。そう言ったのは、アニメーション作家で映画監督ヤン・シュヴァンクマイエルだが、作品の強度や感動を越えて、実際に社会に変化をもたらす作品を作り続けている日本人クリエイターがいる。
ひとりは、アニメーションスタジオの世界最高峰ピクサーの将来を担うイラストレーターとして期待されながらも2014年に退社、そして初監督した短編アニメーション『ダム・キーパー』が、いきなりアカデミー賞の短編アニメーション部門にノミネートされた堤大介。
そして堤の友人であり、世界的な社会現象を巻き起こしたゲーム「ポケモン GO」や「イングレス」で被災地支援活動を展開しているクリエイターであるナイアンティック社の川島優志。もともとグーグルでウェブサイト構築などを手がけ、アメリカ人以外としては世界で初めて「Googleホリデーロゴ」をデザインした川島は、奇しくも堤と同じくサンフランシスコ在住、そしてクリエイターとして互いに尊敬する間柄でもある。そのふたりが、現在宮城県石巻市で開催中の『ダム・キーパー』の作品展について、世界を股にかけた作品制作の現場、そしてこれからのエンターテイメントの可能性について語った。

 

 

歴史誕生の瞬間に出逢ったようで、めちゃくちゃ感動しました(川島)

 

──商業映画ではなくインディペンデントで堤さんが制作した短編アニメ『ダム・キーパー』がアカデミー賞にノミネートされたニュースは日本でも大きく報道されました。川島さんはかなり早い段階で、現地で作品をご覧になっていらっしゃるんですよね。

 『ダム・キーパー』のショートフィルムは、僕がまだピクサーにいた時代に、友人たちと一緒にインディペンデントで作りました。その時に初めて観ていただいた方の一人が川島さんだったんですよね。ちょうど完成したばかりの、出来たてほやほやのところを観ていただきました。

川島 本当にめちゃくちゃ感動しました。ピクサーの試写会で観させていただいたのですが、すごい歴史誕生の瞬間に出逢ったかのようで……。堤さんとロバートさんが描く絵はすごく暖かくて、特にあの独特のタッチによる光の描写は「これをアニメにするのはすごく難しいだろうな」と思いながら観に行ったのですが、あの絵の独特な持ち味が見事に活かされたアニメーションになっていたので、本当に驚きました。

 

©︎Tonko House Inc.

©︎Tonko House Inc.

 

 短編映画『ダム・キーパー』では一枚一枚をイラストとして描いた、油絵のようなタッチで作ったのですが、現在進めている長編版『ダム・キーパー』では、3DCGを考えています。僕らは長い間、ピクサーみたいなスタジオで、ずっと仕事として3DCG映画だけをやってきたので、実は一番の得意分野は3DCGなんです。長編版では、ピクサー時代にはやりたかったけど出来なかったことをやりたい、と思っています。フタを開けてみないとわからないですけど、 “触れられるかのような感覚”をすごく大事にしているので、CGであろうと、手描きであろうと、どんなメディアになっても、その部分は変わらないものを作りたいなとは思っています。

 

©︎Tonko House Inc.

©︎Tonko House Inc.

 

川島 『ムーム』は、3DCGですよね。ムームというキャラクターそのものがスポンジのようなプニョプニョした感じがちゃんと出ていて、堤さんの“触れられる感覚”という独特のテイストが素晴らしかったです。

 『ムーム』は、僕らがアメリカにいながら、日本のパートナーや、CGアーティストの人たちと一緒に作った作品です。それを経験できたことは、本当に大きかったです。制作時には、文化の違いや距離もあって本当に大変だったんですけど、その時に苦労を共にした人たちとまた一緒にやりたいと心から思いました。それに、日本ではああいうテイストのものって少ないじゃないですか。

川島 『STAND BY ME ドラえもん』でようやく、ですもんね。

 そういう意味では「ピクサーみたいなものがつくりたい」というクリエイターはたくさんいるので、そういう人たちと一緒になって日本で作品が作れたら、新しいスタート地点になりますよね。日本のCGアニメはまだまだ少ないスタイルなので、苦労はすると思いますが、新しいことに挑戦したいという人は、思った以上にたくさんいると感じています。