Feb 08, 2017

インタビュー640

緊急対談:SMAPとは何だったのか? 稲垣吾郎は、名・編集長である。

“人間関係”も“会社”も、スタートより、終わらせる方がずっと難しい。デビュー25周年の昨年大晦日、遂に解散したSMAPから、私たちは何を受け止めたらいいのだろうか。

これまでSMAPメンバー出演の映画の撮影現場で密着取材し、3年半に渡ってSMAPのオフィシャルコラム『Map of Smap』でライターを務めた相田冬二、そしてカルチャーとしてのSMAP特集をいち早く組んで話題を呼んだ雑誌『Invitation』の元編集長・小林淳一のふたりが、数回にわたって批評、考察していく連載『「SMAP」とはいったい何だったのか』。

第3回目は、メンバーの中でいちはやくブレイク、その後はコメディもできる二枚目俳優として開花し、いまでは映画評論など多彩な仕事を手がける、稲垣吾郎さんについてです。

 

第3回:稲垣吾郎は、名・編集長である。

相田冬二(SMAPオフィシャルコラム『Map of Smap』ライター)× 小林淳一(元Invitation編集長)

 

“ありえない設定”を
成立させてしまう身体性

相田冬二(以下、相田) 1月にやったドラマ『不機嫌な果実スペシャル~3年目の浮気~』(テレビ朝日系)をつい、前編、後編まとめて観ちゃって(笑)。稲垣吾郎はかつて妻だった栗山千明をいまでも想っているという設定なんですが、連ドラの時よりさらに振り切ったシークエンスが満載なんですよ(笑)。あそこまでいくと、ほとんど“ストーカー”じゃないか?という世界なんだけど、稲垣は見事に成立させるんだよね。男の純情を見せて、ほとんど意味を超えた感動に持っていく。これはその都度ちゃんと役を形にしているということ。「キャラクターがどう」とか、「この台詞はおかしい」とかは一切考えないし、そんな言葉は稲垣の辞書にはないんだと思う。ただ与えられたシークエンスを成立させるために、それを的確に演じるのみ。役者として(作品の)“部品”になれる人。職人に近いよね。派手じゃないと思う人もいるかもしれないけれど、僕はすごいなと思う。SMAPのダンスを観ていても、稲垣の動きはすごくキレイ。足運びとか非常に的確でスマートなんですよね。「型の人」だと思います。

小林淳一(以下、小林) わかりますよ。稲垣吾郎って、とても身体的な存在だなと思います。星護(監督)が、なぜあんなに稲垣を気に入って、『ソムリエ』(フジテレビ系)や『金田一耕助シリーズ』(フジテレビ系)といったドラマに続けて呼んだのかと言うと、「型の人」だったからだと思うんです。考えてみても、「ワイングラスを持って、屋根の上に立つ」なんていう姿を画として成立させてしまう人なんて、ほかにいないじゃないですか(笑)。そこが稲垣のスゴさだと思うんです。

相田 僕も初めて意識をしたのは、やっぱり星さんとの仕事(監督・星護が手がけたドラマ)からですね。その中でもやっぱり『ソムリエ』かな。漫画の実写化をする上で、一番大事なことは、<どう開き直るか>なんだと思うんです。そしてその部分を演出家と役者がしっかりと共有できないとダメなんですよ。演出には二通りあって、ひとつはリアルに作る、もうひとつは現実を越えた世界を作る。漫画原作の中には後者の世界観の方が多い訳だから、役者が「漫画原作とはいえ、キャラクターは人間なんだから、自分はもっと生きた人間として演じたい」とかいう正論を言い始めて、スタッフがそれを叶えようとすると妙なことになる場合がありますよね。でも、稲垣吾郎という人は、そういうクリエイターや制作側の気持ちや事情を理解して、ちゃんと開き直って演じられるし、それがきちんと画になる身体性がある。

小林 相田さんがコラムで書いていたように、指先まで神経が行き届いてるような「神は細部に宿る」芝居をする。その時、「役の精神性とかは二の次にできる、そこが稲垣のすごいところだ」と星さんは当時言っていましたね。

相田 指先がどう動いているかとか、足はいまどこに置かなきゃいけないのかっていうのを感覚的にわかって演じることができる人ですね。

小林 稲垣は『東京大学物語』(テレビ朝日系)でコメディに振り切れたことが転換点だったと思う。もともと稲垣はテレビドラマ『二十歳の約束』(フジテレビ系)で出てきたわけじゃないですか。相手役は、映画『東京上空いらっしゃいませ』やCF(コマーシャル)で90年代のイコンになった当時人気絶頂期の牧瀬里穂で。あの頃の稲垣ってまさに<耽美>だったと思う。僕の中で、“耽美でバスローブが似合う人”と言えば、田村正和、舘ひろし、東山紀之なんです。しかし、当時何をやっても20%以上(の視聴率が)獲れた“月9枠”だったのに、このドラマはコケました。これが当たっていればおそらく月9のローテーション俳優になったかもしれないのに、そこから『東京大学物語』まで2年かかってます。ここで“耽美”ではなく、二枚目で頭もいいのに情けない人というキャラを演じきった。村上直樹という主人公自体が決定的に新しかったし、それを稲垣が体現できた。このチェンジができたことで、ものすごく幅がひろがったわけです。そのことによって、もともと<バスローブ系の田村正和>になるはずだった耽美な青年は、そうではない場所のさらに遠くへと行けたのだと思います。だからもし『二十歳の約束』がヒットしていたら、その後がキツかったかもしれない。単なる二枚目で壁にぶつかったかも。僕はこのドラマ大好きでしたけどね、坂元裕二の脚本もよかったし。

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