Apr 07, 2017

インタビュー

s-ken×菱川勢一 大物クリエイター二人が火花を散らして創り上げたミュージックビデオの内容とは?

1970年代から東京のミュージックシーンを率いてその名を馳せ、1990年代初頭からはプロデューサーとして、数多くの著名ミュージシャンを世に送り出してきたs-ken。そのs-kenが今年1月に70歳を迎えて、25年ぶりに自身のアルバム『Tequila the Ripper』を発表した。細野晴臣、トータス松本、竹中直人、東京スカパラダイスオーケストラなど豪華ゲストが多数参加したアルバムのオープニングを飾る曲のMVを監督したのが、映像作家でクリエイティヴディレクターの菱川勢一氏。世界最大の広告賞カンヌライオンズで三冠を受賞したNTTドコモのCM『森の木琴』やNHK大河ドラマ『八重の桜』のタイトルバックを手がけるなど、映像を中心に多彩な活動を展開する菱川氏と音楽プロデューサーの大御所s-kenという夢のようなコラボレーションがミュージックビデオ(MV)という形で実現。しかし、はじめはまったく意見が合わず、ふたりの大御所クリエイターの間では「火花が散っていた」という、プロ同志だからこその真剣勝負があったという制作現場について話を伺いました。

 

「僕も簡単に引き下がりたくないな」
…と思って頑張ったんです(菱川)

 

──MV撮影前の打ち合わせ当初はおふたりの間で「火花が散っていた」とスタッフさんから伺ったのですが、緊張感のあるスタートだったのでしょうか。

菱川 ありましたね(笑)。ひょっとしたら(仕事をする話は)なくなるかもしれないなとか、いろいろ考えてしまって、ヒヤヒヤしましたよ。はじめは、s-kenさんがどういう方なのかわからない状態のまま勝手に想像してMVのイメージもいくつか考えていたんですが、実際にお会いして話してみたら、全然噛み合わなくて(笑)。僕の想像していたものとズレがあったので、「戸惑う」と言った方が近かったかもしれないですね。s-kenさんはさすがプロデューサーで、どんどんアイデアが出てくるし、「さあ、これをどうまとめたらいいんだろう?」って。

S (この作品は)自分の記念碑的に作ったところもあるし、シンボル的な曲だから、ある種の美意識が根っこにあったんです。例えばヒップであるとか、粋であってほしいということもあったし、ファッションだとかの表層的な話ではなくて、生き方の問題。そこがズレるとまずいなっていう点は気がかりでした。

菱川 いや、それがよかったと思います。たくさん話していただけたことが。

──最初のズレはどんなところにあったのでしょうか?

菱川 一番大きかったズレとしては、僕の一番初めのアイデアは、s-kenさんのアルバムなのにs-kenさんが出てこないMVを想定していたことです。

──斬新ですね。でもありますよね、そういうMVの形も。

菱川  s-kenさんは、全面に出て表現したいという。ここがもう大きくずれていたところで、でも「僕も簡単に引き下がりたくないな」と思って頑張ったんですけど、話しているうちに、最終的には一緒にニューヨークに行って、ニューヨークの風景としてのs-kenさんを撮りたくなったんです。

 

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ニューヨークに到着したら
フェーズが合ってきた(菱川)

 

──それはどのような話の流れからだったのでしょうか。

S 歌詞についてレッスンしていたことのあるtotoという詩人にしてスポークンワードの女性アーティストから紹介されて、菱川さんの撮られたモノクロ写真を見たら、すごく惹かれてイメージが広がって。(菱川さんの)経歴を見たらニューヨークで修行時代を過ごされたと書いてあって「ああ、俺と同じだな」と思ったんです。

──s-kenさんは70年代に、菱川さんは90年代にニューヨークで過ごされているんですよね。

菱川 そんな話をしながら、ビジュアルのイメージをたくさん伺いました。例えばモノクロと一言で言ってもいろいろあるので、ニューヨークというキーワードだとどんな感じかとか。例えばジム・ジャームッシュという監督の映画だと、『コーヒー&シガレッツ』とか『ストレンジャー・ザン・パラダイス』とか、起承転結のある物語ではなくて散文詩のような映像はどうだろうとか、お互いに「こういうのいいよね」というのをキャッチボールしていく間に自然と「ニューヨークで撮りませんか」とご提案しました。s-kenさんをニューヨークの風景として撮ってみたいと。

S 結構いろんな話をして、「一番核になっているところは信じられる」と思ったので、後はお任せしますという流れになったんだよね。僕はプロデューサーとして107作品を作っていて、そうなるとこれまで会ってきたミュージシャンやクリエイターは何百人いるんです。だからその人が持っているエネルギーとか、クリエイティビティの力みたいなものって、直感的にだいたいわかるんですよ。菱川さんに対しては、「この人が本当に気に入るものを作ってもらえれば、これは面白くなるぞ」っていう予感がありました。

──クリエイター同志のカンが働いたということでしょうか。

菱川 それもあると思いますが、ニューヨークに到着して、フェーズが合ってきたというところもあったと思います。バーのシーンから撮影を始めているんですけど、その直前の打ち合わせでs-kenさんが「こんなサングラスを買っちゃってさ」みたいな話をしているんですけど、僕はあの時「いける」とはっきり思いました。 MVの話は一切してなくて、「ニューヨークってやっぱり面白いね」っていう話をしている時に、これでフェーズがきたなと思って。そこからの4,5時間の間にバーッと撮っていきました。

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