Apr 21, 2017

インタビュー

大人の女性に成長した“少女たち”のための小説を。折原みと『幸福のパズル』ロングインタビュー

これまで“恋愛だけ”を書いた
小説はなかったと思っています。

 

──純愛もの、王道の恋愛小説であるからこそ、心の動きをしっかりと、嘘を交えずに書かないと説得力が生まれないのですね。

この小説は、内容自体はとってもベタなんです。設定もエピソードもストーリーも、すでにたくさんの小説や映画やTVドラマで繰り返し扱われてきたようなお話なんです。だから難しい。感情を込めないで、あらすじだけを追うようにして書いていったら、まったく嘘くさい内容になってしまう。そうならないためには、とことんまで自分が納得できるところまでキャラクターを掘り下げて、寄り添って、私の場合は同化して書くしかないんですね。嘘ではない、本当の心を。ベタな話というのは、それだけにごまかしが利かないんです。読者の方は見抜きますので。

──奇をてらっていないだけに、感動や共感を引き出すのは難しいのですね。

それがまたおもしろくて、楽しいんです。考えてみたら、恋愛小説というのはベタの最たるものですよね。よく恋愛小説家と言われることが多いのですが、自分の意識としては、恋愛だけを書いたことはないと思っています。少女小説を書いていたときも、実は恋愛自体を書きたかったわけではなく、仕事や人生、命、生きること、そういったことを伝えるための手段として恋愛要素を組み込んできたんです。
たとえるなら、花が受粉をするために、甘い蜜でミツバチを誘い込むようなものでしょうか(笑) 本作ではそういった、本来自分が書きたかった主題を、恋愛と共にたっぷりと織り込めることができました。

──恋愛と仕事と人生、それらがいずれも同じ比重で描かれていて、全体的に見渡すと「幸福」なるものを問いかける物語となっています。

(講談社X文庫)ティーンズハートに小説を書いていた頃に読んでくださっていた読者の方がたは、だいたい今三十代、四十代になっていて、少女の頃とはちがう、大人だからこその悩みや問題を抱えて生きていることでしょう。仕事や人生、お金のことや親子、家族関係。恋愛にしても少女期の恋愛ではなくて、大人の恋愛の悩みといった。その方たちが今読んで、共感できる小説を書きたかったんです。大人向け小説というよりも、大人の女性に成長した少女たちのための小説、という感じでしょうか。
年齢を経て、変わっていった一方で、変わらないものもある。純粋な気持ちや、前向きな心や、人を愛する感情。人生いろいろあるけれど、大事なものはやっぱり大事だよね、ということを伝えられる物語を贈りたかったんです。

 

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──先の安曇野のリンゴ農園への取材をはじめ、本作にはさまざまな人や場所との出会いが盛り込まれていると伺いました。

そうなんです。特に優斗の「海の師匠」で、真名瀬の海岸に小屋を建てて、いろいろな人たちから慕われているヒロさんという人物には、実際にモデルになった方がいます。本作を書いているさなかに、この人を1キャラとして登場させたらおもしろくなる……と勘がはたらいて。ヒロさんの息子で、伝説的なサーファーの洋之介さんというキャラクターも回想のみで登場するのですが、葉山に住んでいる方だったらピンとくるかもしれませんね。 その他にも私自身の知人や友人、体験したこと、行った場所などが、さまざまに形を変えて本作には入っています。計算してそうしているわけではなくて、気づいたら自然に、いつの間にか。これには書き終えて自分自身が驚きました。

──小説家になられて今年で30年目です。この小説はご自身にとって、どんな存在となりましたか?

現時点での集大成であることは間違いありません。小説を書くことの心構えや仕事相手との関わりあいも、心と心の結びつきというものも、自分自身の成長したいという思いも、物語の中に込めています。この作品を書きながら、たくさんのことに気づいて、苦しんで、励まされて、鍛えられました。昔からの読者の方、新しい読者の方、さまざまな方の心に届く物語となっていたら……と願ってやみません。

取材・文 / 皆川ちか
撮影 /田里弐裸衣

 

 

プロフィール

 

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折原みと(おりはら・みと)

少女マンガ家として1985年にデビュー後、87年には小説家としてもデビュー。91年刊行の小説『時の輝き』が110万部のベストセラーとなる。講談社ホワイトハートの人気シリーズ『アナトゥール星伝』や同コミック版(ポプラ社)、KCデザートコミックス『天使のいる場所~Dr.ぴよこの研修ノート』、『永遠の鼓動(おと)』、小説『制服のころ、君に恋した。』『天国の郵便ポスト』(以上、講談社)『乙女の花束』、『乙女の初恋』(ポプラ社)など、マンガ、小説の他、エッセイ、絵本、詩集、料理本、CDなどで幅広く活躍。今年でマンガ家デビュー30周年を迎え、初期の名作が続々復刊中。

 

作品情報

 

書影_幸福のパズル

『幸福のパズル』折原みと

倉沢みちるは湘南の葉山で生まれ育った、純粋でひたむきな女の子。高3の夏に、中学の同級生の蓮見優斗と海で遭遇する。葉山の老舗ホテルの御曹司で、男女問わず人気者の優斗は、地味なみちるにとって雲の上の存在だったが、海で共に時間を過ごすうちに付き合うことに。だが、葉山の花火大会の夜、行き違いから出会えなかった二人は、そのまま優斗が留学してしまったために悲しい別れを迎える。そして、あのひと夏の眩しい恋愛から5年後、優斗が日本に帰国。葉山で再会したみちると優斗は、急速に惹かれ合う。好きな人と過ごし、好きな小説を書き、人生で初めて幸せに身を委ねたみちるだったが、それは束の間の“幸福”だった……。
人は、どこまで愛を貫けるのか。本当の幸せとは何か。何度も引き裂かれながら、愛し合う二人が“青い鳥”を探す現代の純愛小説。

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「制服のころ、君に恋した」
「時の輝き」
「おひとりさま、犬をかう」
「アナトゥール星伝」
「天国の郵便ポスト」

期間:2017/4/21~2017/5/4

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