May 11, 2018

インタビュー

カラテカ・矢部太郎、『大家さんと僕』執筆中に聴き続けたミュージシャンと語り合う

お笑い芸人コンビ「カラテカ」矢部太郎さんのコミックエッセイ『大家さんと僕』が、第22回「手塚治虫文化賞 短編賞」を受賞して話題を呼んでいる。なにより、漫画家を本職とする著者以外の作品が受賞に至ったケースは、史上初めての快挙というから今年の出版界の一大ニュースだ。『大家さんと僕』は、矢部さん自身が現在居候している家の階下に住む87歳の老婦人“大家さん”との交流を描いた実話ベースの8コマ漫画。発売当初から「この時間が、永遠のように思えてくる」(糸井重里)、「エッセイ漫画って難しいんですよ。普通は面白くなんないんですよ。なのにいきなり面白いってどういうことですか!」(東村アキコ)と、各界から絶賛の声が集まっていた。その矢部さんが、かねてからファンを公言しており、かつ『大家さんと僕』の中でも、そのオマージュを描いているミュージシャン<けもの>の青羊(あめ)さんとトオイダイスケさんに初めて対面し、お互いの作品や世界観、そしてそれぞれの作品の背景にある“変わりゆく東京”について話をしてもらいました。

 

矢部 僕、(けものの)『伊勢丹中心世界』をよくラジオとかで紹介させていただいてるんですけど、『めたもるセブン』もすごくよく聴いていて、MV(ミュージックビデオ)も何度も観ました。実はMVの中から1コマをパクって、『大家さんと僕』で描かせていただいているんです。

青羊&トオイ えっ!!

矢部 ヒントは描き下ろしの本の最後の方です。

青羊 当てたいけど、(対談)時間が無くなっちゃうかな……。

矢部 答えを言っていいですか。一番最後のページで、大家さんと僕がタクシーに乗っているカットです。あのMV、工事中の東京を女の子が歩いて行くじゃないですか。すごく2017年っぽいしいいなと思って勝手にいただいてしまいました、すみません。

トオイ 確かに、工事中の街の中をタクシーが空を飛んでいますね。

 

『大家さんと僕』より「あとがき」(c)矢部太郎

 

 

MV『めたもるセブン』(けもの)

 

この本を読むとみんな
大家さんに会いたくなる

 

青羊 『めたもるセブン』のMVで撮った明治神宮あたりも、何かまるで現代アートみたいに、にょきにょきとクレーン車が出ている景色が広がっていて、面白いなぁと思っていて。

トオイ 東京オリンピックに向けて、あちこちで大規模な工事が始まっているんですよね。

矢部 僕はこの『めたもるセブン』のMVを何回か観たことで気づいて、初めてちゃんと東京の街を見るようになりました。それまでは、あちこちで工事が始まったことにも気づいてなくて。僕、そんなに外に出ないので、気づいてなかったのかもしれないです。まあ、外に出ても、地面ばっかりで下を見て歩いていて、あんまりこうビルや景色を見上げることもなかったからかもしれません(苦笑)。

青羊 街の景色ががらっと変わっていく感じと、ちょうど自分自身が「いま、変わらなきゃいけない」という意識がリンクして『めたもるセブン』という曲が出来ました。

矢部 大家さんは「東京オリンピックはあまり興味がないわ」と言っていたのですが、だんだん「東京オリンピックが開催されるなら見てみたい」とか「それまでは生きていたい」と変化してきていたんです。オリンピックに向けて変わっていく東京の街の雰囲気もちょっと拝借したくて……“拝借”というか完全にパクリですよね。自分から言ったほうがいいと思ったので、今日は先に言わなきゃと思って。

トオイ 大家さんにも“メタモルフォーゼ(変化、変身)”が起きたということですか?

矢部 はい、大家さんの中のメタモルフォーゼを描いたという感じですね。

青羊 こう言うと失礼かもしれませんが、きっと矢部さんも『大家さんと僕』を描かれたことで、メタモルフォーゼが起きたのですよね?

矢部 そうですよね、こんなところで漫画家みたいな顔をして話をしているんですから。でも大家さんのおかげなんです。すごくお話しが上手な方なので。僕はそれに便乗して描いているだけです。

トオイ でもその大家さんという人を伝える描き方なんだと思います。間合いとかすごくいいなと思ったし、決して大げさにすることなく描いているんだろうと思いました。

青羊 たくさんの人が言っていると思いますが、この本を読むと、みんな大家さんに会いたくなる。それがすごいなって思いました。

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