Nov 14, 2016

インタビュー

11月13日に放送された『情熱大陸』でも話題!絵本作家・のぶみが明かした創作の原点。

小学校時代にひどいいじめに遭って不登校になり、高校時代には200人近くのチーマーと暴走族を率いる池袋連合の総長として暗躍した時代もあったという異色の絵本作家のぶみ。11月13日に放送されたテレビ番組『情熱大陸』では、その波乱万丈な人生が紹介されて大きな反響を呼んだ。そんな自分の半生をモチーフに書いた最新作の絵本『いのちのはな』は自身にとって「特別な作品」になっただけでなく『ぼく仮面ライダーになる!』や、『しんかんくん』シリーズをはじめ、これまで160冊以上を発表、シリーズ累計54万部の作品を売り上げた中でも「最高傑作」という声も高い。次々とベストセラーを生む原動力、そしてテレビでは放送されなかった撮影秘話について、アトリエにおじゃまして話を聞きました。

 

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取材がきっかけで改めて向き合った
心の中の“子どもの自分”と母への想い

 

──この作品が生まれたきっかけから教えてください。

テレビ番組『情熱大陸』(11月13日放送済)の取材がきっかけでした。『情熱大陸』って、本人の過去を振り返るじゃないですか。僕の人生は小学校の時にいじめられて、高校の時に悪くなったりして波乱万丈なので、それとリンクする絵本にしてみようと思ったんです。絵本に限らず、子どもに対して、「人生って結構大変だよ、だからこそおもしろいし価値があるんだよ」と言う人って、あまりいないじゃないですか。でも誰もずっと順風満帆で生きてる人なんていないと思うんです。人生は自分でコントロールできないことの方が大きいし、ほかの人からみたら、悩む必要のないような些細なことだとしても、自分にとっては世界最大の問題だったりするじゃないですか。そんな大変なことが何度も起きるのが人生じゃないですか。でも、そんな中でも、目線をそらさずに生きて行くと、何か素敵なことが見つかるかもしれないよっていうことだと思うんです。

──チューリップのプーは、のぶみさんご自身なんですね。

そうなんです。だから、『情熱大陸』の取材の中で、最後に『いのちのはな』を自分のお母さんに読み聞かせに行くシーンを撮ったときは、かなり感情が入ってしまいましたね。

でも撮影中にすごくびっくりしたことがあったんですよ。テレビ局の人がお母さんに「のぶみさんって小さい頃はどんなお子さんだったんですか」って質問をしたんです。そうしたら「小さい頃から友だちが多くて、高校時代には美術部で絵画を頑張っていました。絵本も高校時代から描いているんです」って言い始めて、僕、「いったい何を言い始めたんだろう??」って、びっくりして(笑)。

小学校の時はいじめられて友だちはいなかったし、高校はそもそも行ってない。「認知症にでもなったのかな」って怖くなったんです。テレビカメラも回っているし、僕は「高校にはほとんど行ってなかったよ」と事実を話したんですが、「違うのよ、あなたは忘れているのよ」と必死に、“いい子だったのぶみ”という設定で話をするんです。
そこで、僕は本当のことを思い出してもらおうと、「子ども時代の本当の僕」の話をし始めたんです。お母さんは僕によく「また唇を噛んでる」と注意したよね、でもそれは学校で「たらこ唇」だっていじめられたから、歯で噛み切ろうとしたんだよとか、○○○君という子が僕のことをいじめていて、殴られたり、彫刻刀で刺されたりしたから、死のうとしたこともあったんだよと話したら、お母さんはすごく困惑していて、僕も何なんだろう?と混乱してしまいました。

だって、高校時代には、金髪で安全靴を履いて、腰のポケットには警棒を忍ばせて、ナックル(護身用の武器)を手にして歩いていたんですよ。さすがにお母さんは、僕が池袋連合と称してチーマーや暴走族200人を率いて歩いているところは見ていなかったかもしれないけど、夜9時に家を出て、朝の4時に帰ってくる生活は、どこからどう見ても、“いい子”じゃなかった。それを知ってるはずなんです。でもお母さんはなかったことにしようとしている。テレビのドキュメンタリー取材で。

 

絵本『いのちのはな』の原画

絵本『いのちのはな』の原画

 

「本当の自分を見てほしい」
当時言えなかった想いを形にした絵本

 

──テレビの取材が来たら、普通の人はあまり自然にふるまえなくなりますよね。そこにさらに「頑張ってる息子のいいところを撮ってほしい」という親心が働いてしまったのでしょうか。

いや、これをされると、なかなかショックだし、びっくりしますよ。だって、過去がなかったことにされるんですから。僕が一生懸命「ほら、お母さんとケンカしちゃったことがあるじゃない?」と話を振っても、「そんなことなかったわよ。あなたの勘違いよ」と言われるから、ショックというかむしろ怖い。これがお正月とかに実家で起こった話なら「何言ってんだよ」で終わっていたかもしれません。けどテレビのドキュメンタリー番組の取材だったから、話の辻褄が合わなくなると、スタッフさんも困るじゃないですか。それまでずっといかに僕が悪かったかっていう話をしているのに、急に「美術部で絵画を頑張っていた」っていう話になっても(笑)高校時代の写真を出したら、テレビを観ている人はきっと「この人、絶対美術部じゃないよね」って思うはずなんです(笑)。

──撮影の最後の最後で、想定外の混乱が生じてしまったんですね。

そうなんです。だから、一度、撮影を止めるしかなかった。だって、かなり悪い子だったのに、お母さんは「この子は本当にいい子で、美術部で頑張ってる」と言い張る。記憶を消去するだけじゃなくて、創作も入っている状態じゃないですか。でも、親になったいまだからわかるけど、僕にいい子になってほしいという想いが強すぎて、よい子だけの僕がお母さんの中で生まれていたのかもしれないとも思うんです。僕の名前は「信じて実る」と書いて、信実(のぶみ)。お母さんはお母さんなりに、どんなに僕が悪くなった時も、僕のことを唯一信じようとしてくれたのかなって。だから、お母さんのことは、クレイジーだとは思わなかったんです。

 

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──お母さまとの記憶のすれ違いは、そのままにされたんですか。

取材が進むにつれて、さすがにそのままにはしておけなかったですね。僕自身も感情が高ぶってしまって。最後に、両親の前で『いのちのはな』を読むシーンを撮影した時には、かなり渾身で読んだので、途中、泣いてしまったんですけど、ふたりとも「寝てたのかな?」と思ってしまうくらい、完全にノー・リアクションだったんです、びっくりしました(笑)その前日、群馬で読み聞かせと講演をした時には、会場の人、8割がた泣いてくださったんですよ。なのに、自分の両親は、笑いもしないし、泣きもしない。そこの部分、絶対に放送されないと思うんですけど(笑)僕は結構ムカついてきちゃって。だってテレビの人たちから感想を尋ねられても、ぜんぜん関係ない話をし始めるんですよ、「あんなところに旅行に行きました」って。「もういいよ!」と思いつつも、お父さんとお母さんに「僕、いま一生懸命、ふたりのために読んだんだよ。それもただの絵本じゃなくて、ふたりに伝えたい、僕自身をモデルにした絵本なんだよ」と説明したら、その時はじめてお母さんはいいコメントをくれましたね。でもその時に気づいたのですが、僕は両親に対して「よくやったわね」って褒めてもらえることを暗に期待してたのかなって。勝手に期待して勝手に怒るのはよくないから、もう期待はしないようにしようと思いました。

 

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──でも「ふたりのために読んだんだよ」と伝えられてよかったですね。

撮影の時は両親に対して「何をいまさら、カッコつけてるんだよ」と思ったし、僕が悪ぶって嘘をついているようにも見えてしまうから(笑)何なんだろうと思っていたんですけど、撮影が終わって、それから数日後に、お母さんからメールが届いたんです。「年を取ったせいか、すぐに感情を表すことができなくなってしまいました。そして、これまで、あなたの悪い部分も含めて、あなた自身にきちんと向き合えていなかったのかもしれません。ごめんなさい」って。そのメールを読んで、すごく動揺したんです。昔から「どうしてお母さんは悪い自分を見てくれないんだろう」というわだかまりがあったけど、やっとその理由がわかったから、すごくありがたかったですね。ドキュメンタリー番組で過去の自分を検証される機会がなかったら、今後もずっとお母さんのことがわからなかったかもしれない。嬉しかったけど、でもあのメールの内容は、撮影の時にカメラの前で言ってほしかったなあ、テレビ的には(笑)

──(笑)。心理学的なことはわかりませんが、辛い経験を忘れられないと生きづらくて、無意識のうちに記憶を改ざんしてしまうことはあるのかもしれませんね。

周りの人に聞いてみると、結構、そういうことってあるようなんですよね。例えば、子どもを虐待していた親は、その行為をまったく覚えていなかったり、いじめっこは、友だちをいじめていた過去を一切記憶から消してしまっていたり。やっぱり僕のお母さんの場合は、キリスト教の牧師をしていることが大きかったと思います。そして「わたしの子育ては間違っていなかった」と信じたかったと思うんです。もともと闇より光の方を見る人だし、僕にもきっと人一倍、「いい子に育ってほしい」という気持ちは強かったと思います。

つまり、お母さんは、いい子の部分だけの「信実」が好きだったんです。小学生の僕はそれを敏感に感じ取っていたし、当時、お母さんが入院したこともあって、僕自身も「いい子」の部分しか出せなかった時期がありました。

だから、僕がその後にどんどん悪くなったのは、「悪い自分を見てほしい、悪い僕も受け入れてほしい」って思って、どんどん悪くなっていったんだと思う。だって、いい子になろうと思っても、自分の中に悪いことを考える気持ちもあるし、悪いことをしてしまう自分もいる。お母さんの前だけで「いい子」を演じていても、自分の中にいる「悪い自分」をどうしたらいいのか、自分自身でも持て余して苦しんでいたんだと思うんです。

 

あの時きっとお母さんも
苦しんでいたんじゃないのかなって。

 

『ママのスマホになりたい』という絵本の中に、「僕、ママのことが嫌いになりそうな僕が嫌いなんだ」というセリフがあるんです。それは当時の僕の心の声でもあるけど、きっとお母さんも同じだったんじゃないかな?といまでは思います。自分の子どもの悪い部分が好きになれない、受け入れられない自分自身に苦しんでいたんじゃないのかなと思うんです。
ただ、そんなお母さんだったから、僕は絵本作家になれたんです。僕は悪かった時代も、どこかで「この生活は続かない」と思っていました。そんな時に、絵本と出会って、「絵本作家になって認められたい」という目標が生まれたんです。 そして実際に最初の絵本を描いた時に、生まれて初めて、悪いことじゃないことで、人に注目されて認められたから。

だから、やっぱり僕は絵本でも、悪い面もいい面も描いた方がいいと思っているんです。講演会やトークイベントでもよく話しますが「いいところも悪いところもあって人だ」と思うんです。言葉もそうで、いい言葉も悪い言葉もない。どちらもあるから人だし、言葉なんだって。だから差別も嫌いです。『いのちのはな』を書いていた時、最後に「すべてが これでよかった」という一文が出てきた時に、涙が出てきました。僕が小学校の時にいじめられてお母さんに心配をかけたことも、高校生の時に悪くなって申し訳なかった気持ちも、そんな自分も見てほしいし認めてほしいと思っていたことも、全部つながって、すべてがあったからこそ、いま自分は絵本作家としてここにいるんだって、辻褄があったんですね。38年間の自分の人生の説明が全部ついた。

──のぶみさんの創作活動の根源には、お母さんという存在は大きかったんですね。

そうなんだと思います。そう思うと、『いのちのはな』もそうですが、『ママのスマホになりたい』も『ママがおばけになっちゃった!』も、お母さんに向き合ってほしかった幼年時代の自分を乗り越えるために書いて生まれた3部作だったと思います。そして、いまやっとそんな子ども時代の自分に終止符が打てた気がするんです。

 

アトリエの壁に飾られた家族からの手紙と 故・やなせたかしさんからのメッセージ

アトリエの壁に飾られた
故・やなせたかしさんからのメッセージ(左下)

 

やなせたかしさんが
「君ならできる」と言ってくれた理由

 

──これからどんな絵本作家になっていきたいですか。

これからは人生や人の「光」の部分に焦点をあてて描いていきたいですね。子どもたちに愛されて、「あんな風になりたい」って憧れるような光のキャラクター。やなせたかしさんが何度も言ってくださったんです。「君ならできるよ」って。どうしてそんなことを言ってくださるんだろうって考えたのですが、やっぱり光って、光だけでは作れなくて、闇があってこそ、生まれるものだと思うんです。もし僕が38年間、天使のようにいい子で、今日まで育ってきたら、ひょっとすると光を自覚できなくて描けなかったかもしれない。僕は闇の部分をよく知ってるから(笑)だからこそ光の良さもわかるし、憧れるから、描けるのかもしれない。
キリストだって、もし周りのみんながマザーテレサみたいな人ばかりだったら、そんなに注目されなかったんじゃないのかな?って思ってしまうんですよ。アンパンマンも、バイキンマンがいなかったら、普通にパン配るおじさんだと思うし(笑)。でも戦後は、パンも餡子も貴重品だった時代が普通にあって、大変なごちそうだったと思うんです。そんな状況の中で、飢えている子どもたちに「僕の顔を食べなよ」って言えるアンパンマンはまさに闇の中の一筋の光だったと思うんです。だから僕は、これから先も「いまの時代における、光と闇ってなんだろう?」ということを探して、自分なりに描いていくと思います。

 

取材・文 / otoCoto編集部

 

【影響を受けた本】

 

『おばけのバーバパパ』アネット=チゾン、タラス テイラー(著作)山下 明生 (翻訳)/偕成社

お母さんが牧師の仕事で忙しかった時に、教会の人が買ってくれた本なんです。それを何年も背表紙がぼろぼろになるまで読みました。バーバパパは、庭の土から生まれて、どこにも居場所がないんです。だから、当時の僕とすごく重なる、友だちみたいなキャラクターでした。学校に行っても先生にダメだと怒られて、同級生からいじめられっていう時の僕でもひとりじゃないって思えたんだと思います。 でもバーバパパは、自分の形を自由に変えられるので、街で火事が遭った時に、消防隊員に協力して活躍するんです。そうすると、一度は大きなバーバパパを家から追い出したお母さんでしたが、バーバパパの活躍を認めて、また家に呼び寄せるんです。だから、僕も将来絵本で活躍したら、家に入れてもらえるのかなあって思っていた時期もありましたね。 そうそう、バーバパパって、「おばけの」って書いてあるけど、もともとはフランス語で綿菓子のことをバーバパパって呼ぶらしいですよ。

 

Profile

 

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のぶみ

1978年、東京生まれ。のぶみは本名で「信実」と書き、「信じることで実っていく」という意味を持つ。しかし、この名前が原因で小学校の時にひどいいじめに遭い、不登校になり、二度自殺しようとする。高校時代には、池袋連合の総長になるが、その後保育士の専門学校に通い、絵本好きな女の子を好きになって、彼女の気を引くために、「絵本を描いている」という嘘をついてしまい、その嘘がきっかけで、その日から20年間、毎日絵本を描き続けている。そしてその女の子はいまの奥さんになる。『ぼく、仮面ライダーになる』シリーズ(講談社)や、『しんかんくん』シリーズ(あかね書房)、『おひめさまようちえん』シリーズ(えほんの杜)、『うんこちゃん』(ひかりのくに)など、170冊以上の絵本を発表。『ママがおばけになっちゃった!』は、40万部を超えるベストセラーに。

 


 

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『いのちのはな』のぶみ・著(KADOKAWA)

おかあさんからチューリップの球根をもらった、かんたろう。プ―と名前を付けて可愛がっていたけれど、かんたろうは翌日から病気で寝込んでしまいます。 水がもらえないプーは、花を咲かせることができるのでしょうか?  著者であるのぶみ自身の半生とすべての思いが詰まった渾身の一冊であり、「あきらめない心」を育てる魔法の絵本。

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■『いのちのはな』刊行記念! のぶみさんサイン会&原画展
【『いのちのはな』原画展 】
 ○開催期間:2016年11月21日(月)~11月27日(日) 10時~22時
  ※最終日のみ~20時
  ※サイン会開催の23日のみ、サイン会参加者以外はご入場いただけません
 ○場所:三省堂書店池袋本店 書籍館4階 イベントスペース「Reading Together」
 ○入場料:無料
 ○サイン会:11月23日(火)書籍館地下1階児童書レジにて、参加券を配布いたします。
  ※対象書籍購入時参加券のご予約は、お電話でも承ります。
   受付電話番号は、03(6864)8900
 詳細は、三省堂池袋店ウエブサイト: http://ikebukuro.books-sanseido.co.jp/events/1617

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