Aug 04, 2017

インタビュー

作家・西尾維新が大切にする 独自の「執筆の矜持」と「読書ルール」とはーー? 大ヒット作の創作現場に迫る独占ロングインタビュー完全版!!

3_化物語

 

言葉と文字だけでどこまで
人間を表現できるかという挑戦

 

──「掘り下げる形式」と仰るだけあって、魅力的なキャラクターが数多く生まれていますが、キャラクター作りはどのようにされましたか。

今でこそアニメプロジェクトが『終物語』まで進み、ビジュアルのイメージもしやすくなりましたが、最初に小説誌『メフィスト』に載せた段階では<文字だけで、どこまで人間を表現できるか>ということを念頭に置いていました。初期の会話劇の多さは、登場人物に喋ってもらうことで、その人物を掘り下げたかったからです。全シリーズ、全著作の中で一番多弁なキャラクター達を書いているのは、やはり言葉や文字でどこまで『自己紹介』が出来るのかを試していたのだと思います。

──言葉と文字で造形していくスタイルなのですね。キャラクターの名前も、かなりこだわりをもって付けていらっしゃると伺いました。

いろいろな名前の付け方があるので一概には言えませんが、基本的には覚えてもらいやすい名前にしたいと思っています。<物語>シリーズに限らないのですが、覚えやすくて読みやすくて、かつどんな人物か<なんとなく>イメージできるように、戦場ヶ原ひたぎや羽川翼と名付けました。

──名前がキャラクターの性格そのものを表すようにされているのですね。

名前のイメージを裏切るようなキャラクター造形もありますが、ただ、あまりに「キャラクターに多様な名前を付けますよね」と言われ続けた結果、キャラクターに名前を全く付けない創作をしたこともあります。『ジャンプSQ.』で連載していた『症年症女』では、キャラクターに名前をつけませんでした。15年間数々の名前を考えてきた結果、最終的に名前を付けない境地までたどり着いたのだと思いましたけど、よく考えたら、デビュー作の『クビキリサイクル』に登場する戯言遣いは本名不詳でしたから(笑)、いろいろ試した結果、1周して最初に戻った気もします。<物語>シリーズも、『化物語』から最新作『結物語』までいろいろ試してはいますが、やはり最初の「100%趣味で書く」いう初心に、1回1回戻っている気がします。

──常に実験的に新作に挑戦されている印象でしたが、ご自身では原点回帰の感覚があるのですね。

はい。たとえばキャラクターに寄せて書いたのが<物語>シリーズでしたが、逆にストーリーに寄せたのが忘却探偵シリーズです。なので、戯言シリーズにあったテーマを、2つに分割したイメージですね。どちらのシリーズも、書いている間に「これは戯言シリーズ由来だな」と思い当たることが多いです。『クビキリサイクル』を書いたのは15年も前のことですが、このたび映像化されたこともあって振り返ってみたら、名前の件もそうですが「原点は戯言シリーズのこの登場人物だった」と思うことが多々ありました。

──ところで『化物語(上)』の電子版独自のあとがきでは「推理小説のメソッドで助けられた」とも書かれていましたね。どういうことだったのでしょう。

確かに西尾維新には「どんな小説を書こうとしても推理小説になってしまう」きらいがあって、特にあのあとがきを書いた頃にそれを実感したんです。謎は謎のままで終わらせる、というエンディングももちろん好きですが、きれいに伏線を回収したい、それぞれのキャラクターに解決をもたらしたいという思いが強くて。間違いなく推理小説由来だなと思います。そもそも小説を読み始めたきっかけが推理小説で、ミステリーの賞(メフィスト賞)でデビューさせてもらって、それからいろいろな方向性の小説を書いてきたつもりですが、やはり一貫してどれも推理小説なんです。自作の中で推理小説から一番遠そうなものと言えば伝説シリーズですが、その伝説シリーズだって、実は推理小説ではないのかと自分では疑っています。「地球と戦っている時点で推理小説ではない」と言われたら全くその通りですが(笑)、メソッドとしては、推理小説の手法が使われていますし。

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