Aug 04, 2017

インタビュー

作家・西尾維新が大切にする 独自の「執筆の矜持」と「読書ルール」とはーー? 大ヒット作の創作現場に迫る独占ロングインタビュー完全版!!

『クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い』、『化物語』、『掟上今日子の備忘録』など次々と人気小説を生み出し続ける作家・西尾維新。映画『傷物語』三部作が大ヒットし、さらに今夏にはアニメ最新作『終物語』と新刊『忍物語』のリリース、そして初の展覧会『西尾維新大辞展』が東京と大阪で開催されるなど、その勢いは止まるところを知らない。
速筆でも知られ、12か月連続で小説『刀語』を発表したり、近年は「1日3万字」という尋常ではない執筆ペースを誇る作家・西尾維新を支える独自の矜持とは一体何なのか? これまでにリリースした100冊をゆうに超える著作を振り返りながら、執筆や改稿のこだわりから独自の読書ルールまで、西尾維新が自身にとっての「書くこと」、そして「読むこと」の矜持とは何かについて、じっくりと語った1万字インタビューの完全版!!

 

──現在は1日3万字というスピードで執筆をされているとのことですが、そうなるともう「仕事」という範疇を越えている気すらします。特に<物語>シリーズでは、毎回あとがきに「趣味で書いている」と記されていますよね。

それを言い始めたら、小説は全部「趣味」という感じがするのですが、やはり好みが一番強く出ているのが<物語>シリーズで、ある意味一番“西尾維新らしい小説”だと思います。デビューしてから約1年後、「頼まれてもいない小説を好きなように書いてみたい」と思って書いた小説が『化物語』でした。キャッチコピーで「100%趣味で書かれた小説です。」と謳っているように、執筆依頼を受けてではなく、好きなタイミングで好きなように書いた最初の短編が「ひたぎクラブ」でした。それを小説誌『メフィスト』に載せて頂いたのを皮切りに、<物語>シリーズはスタートしました。デビュー作である『クビキリサイクル』から始まる戯言シリーズを完結作まで書き終わって、小説家としてひと息つけたと思えた頃のことですね。それが思いのほか楽しかったので、今に至っているということです。つまり2005年から書き続けているシリーズなので、感慨深いものがあります。

──どのあたりに“ご自身の「100%趣味」”が出ていると思われますか。

やはり会話劇と呼ばれる掛け合いの部分ですね。「ひたぎクラブ」、「まよいマイマイ」、「するがモンキー」、この3作がシリーズの中でも特に象徴的です。結果的にどんどん本が分厚くなっていって。それでも、いやこの小説はこれで良いはずだと信じていました。書くことが楽しくて、歯止めなく、どんどん進めていけたので。この会話が続く限り書いてみよう、キャラクターにとことん付き合おうと、文字数やページ数のことは一切考えずに書ききってしまいました。

 

2_刀

 

──当時はご自分の「趣味」を追及する方を選ばれたのですね。

そうですね。とはいえ、会話劇の中にも、ちゃんと伏線を織り交ぜることは、それなりに意識していました。「伏線はギャグの中に隠せ」というミステリーのメソッドがありますが、その応用で、伏線を萌え要素の中に隠してたり、キャラクター性の中に伏線を織り交ぜたり……、会話劇に必然性を持たせようとはしましたね。でもそんなことをしていた結果、アニメ化していただくときに、場面を削りにくくなるという困った事態が起こりました。それでもやっぱり『傷物語』の体育倉庫のシーンは削っても成立する場面ですよね(笑)。そういうシーンこそ面白がってもらえたりするからわからないものですが。<物語>シリーズとは対照的に、『刀語』は12か月連続で小説を書くという大河ノベルの企画として書いていたものですから、案外、戯言シリーズと<物語>シリーズを並べるより、<物語>シリーズと『刀語』を並べたほうが、違いがわかりやすいかもしれません。『刀語』は掛け合いの会話を多少抑えていました。分量を守ることに躍起でしたし、筆が走りすぎると12か月連続で出せなくなる可能性もありましたからね。『刀語』を趣味的に書いていたらどうなっていただろう? と、今でもちょっと思います。でも、1冊ずつ制限を設けずに、12か月連続ではなく『刀語』を書いていたら、案外途中で止まっていたかもしれません。1年で書いたから書ききれたストーリーだったという気もしますね。

──着想はどこからきているのでしょうか。

最初に書いた戯言シリーズは、たくさんキャラクターを出してどんどん世界観を広げていこうという試みのシリーズでしたので、「改めて趣味で書こう」と思ったときに、その真逆をやってみたい、と思って。以来、<物語>シリーズでは1話につき1人のキャラクターをじっくり掘り下げる“1話完結型”のスタイルが続いています。「こよみヴァンプ」や「つばさキャット」といったふうに、各話タイトルにキャラクターの名前が入っているのも、それが理由です。『クビキリサイクル』はミステリーでしたので、トリック重視の部分もありましたけれど、<物語>シリーズはそうではなく、個人個人が抱えている問題や葛藤を、妖怪変化を通して書くことが目的でした。途中でいろんな変遷を経ていますが、基本的には今も、キャラクターを掘り下げるスタンスは変わっていません。