Dec 29, 2017

インタビュー

2017年日本ミステリー文学最大の収穫!『ミステリークロック』貴志裕介インタビュー

SF・ホラー・ミステリーとジャンルを横断して作品を発表し続けている作家・貴志祐介は、実は当代随一のトリックメーカーでもある。代表作『硝子のハンマー』が世に出たときの衝撃は大きく、それこそ硝子ならぬ鋼鉄のハンマーで頭を殴られたような気分になった読者は少なくない。いまの時代に、こんなにさまざまなアイデアを盛り込んだミステリーを書く作家がいるだろうか。同作で生まれた防犯探偵・榎本径のシリーズは、本作以降も『狐火の家』、『鍵のかかった部屋』と書き続けられている。アイドルグループ「嵐」のリーダー・大野智が主演したテレビドラマ版も評価が高く、記憶に残っている人も多いはずだ。その貴志裕介の新作『ミステリークロック』を「個人的な2017年の日本ミステリー最大の収穫だった!」と絶賛する書評家・杉江松恋が気になる話題の新作について、そしてマンションの防犯対策からスタートした榎本シリーズまで、じっくりと話を聞きました。

 

もうトリックで一本勝ちは無理?
よし、では合わせ技で一本だ!

 

──『ミステリークロック』は、特に表題作が素晴らしかったと思います。一つのトリックを成立させるために投入されたアイデア量たるや、全体像を教えられると感動すらしてしまう。これこそ推理の愉しみですね。

本文中でもちょっとミステリー談義が出てきますけど、「もう単品のトリックはだいたい出尽くしてしまっている」とよく言われます。たしかに、単純明快なトリックで、タネ明かしを聞けばすぐ納得するというようなものはなかなか難しいと思いますが、一つの効果を作り出すために複数のトリックを用いるという手法はたぶんありなのかと思います。

──その場合、複数のアイデアを組み合わせなければならないわけですから、検証して小説化するまで長大な時間を作者は必要とするわけですよね。

そうですね。これ、最終的に加筆したこともあって300枚もあるんですよね。中篇とはいえ長すぎる。

──それだけで本当なら一冊の本になりますよ。

ただ、ミステリーって「作者が大変な思いをして読者が楽しめる」のが一番いいと思うんですね。大変なことは作者がやるから、きちんと裏を取っているんだろうな、と信用していただいて、読むときは楽しんでもらえればいいと思います。

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