Feb 07, 2017

インタビュー

“JASRACと闘った男”三野明洋 と 音楽家・野崎良太が語り尽くす
ミュージシャンの生死を分ける「著作権問題」の現在
三野明洋((株)NexTone 取締役会長)× 野崎良太(Jazztronik)

「avexがJASRACから離脱」がニュースで大きく報じられ、最近では音楽教室と著作権の問題や、童謡の替え歌問題が話題になるなど、音楽著作権ビジネスが過渡期にあると言える昨今。JASRACを独占禁止法違反で訴えて最高裁で勝訴した(株)NexTone取締役会長の三野明洋氏と、その三野氏の闘いを綴った著作『やらまいか魂 デジタル時代の著作権20年戦争』に共鳴する野崎良太氏(Jazztronik)。
新しい著作権管理事業で業界に風穴を開け続ける三野氏と、ミュージシャンが自らの手で楽曲の配信や音楽活動を展開するためのプロジェクト「Musilogue(ムジログ)」主宰の野崎氏という<デジタル時代の著作権リーダー>として注目されるふたりが、音楽表現と著作権の諸問題について語り合いました。

 

著作権料や手数料徴収の代りに
何をしてくれるのか?を問うべき

三野明洋(以下、三野): 著作権ビジネスについて講演したり対談していますけど、例えば弁護士や大学の先生と話してもあまり面白くないんですよね。自分自身でも大学で知財の講座を開いたりしていますが、学術的に考えて机上の論理だけで著作権の問題を解決しようとするのは、片手落ちというか、何か違うんじゃないかなと思っているんです。だから野崎良太さんみたいなミュージシャンとお話しできるのは、最高ですね。音楽を作る立場から著作権の勉強会を開いていらっしゃるのも、素晴らしい。

野崎良太(以下、野崎): 去年やっと勉強会をスタートできたんです。三野さんもご存知の著作権関係で有名な方と昨年知り合って、年末にミュージシャンを集めて著作権の勉強会を開きました。その方は著作権理解の普及のために、既にご自分で勉強会をおやりになっていたんですが、もっとも著作権について理解を深めてほしい作り手やミュージシャンにはまったく情報が届いてなかったらしく、やっと僕みたいな人と出会えたと言ってくださいました。そこで僕が声をかけたら、結局100人以上のミュージシャンや作曲家が集まったんですよね。
そのとき面白かったのは、勉強会の質疑応答では、参加者のひとりが「実は去年、海外で自分の曲が使われて、著作隣接権で〜万円入ったんです」と言ったら、そこからみんなの目つきが急にギラギラし始めて(笑)、僕らは著作権の話をしたかったのに、結局その日は著作隣接権の質問だらけで終わってしまいました。「いくら稼ぐためには何枚売ったらいいですか」という、リアルな収益に結び付く話が中心になってしまいましたね。ミュージシャンはリアルに生活もかかっているし。

三野: アーティストの皆さんが創った作品や実演に対して、最終的にどのような計算フォーマットによってアーティストにその報酬が戻ってくるか、細かいことを知っている人がほとんどいないのは問題ですよね。音楽関係者もそこをあまり丁寧に説明していない。

野崎: 説明されたこともないですね。著作権の話って、肝心の作り手側がよくわかってないし、だから議論が充分にされてないように思います。僕は20代前半でデビューしてCDを出しました。そのときたくさんの書類にサインしておいてといわれました。「これを出さないと著作権使用料が入ってこないから書かなきゃだめなんだよ」とだけいわれて、何もわからないままサインするんです。でもその契約を結んでいる相手である音楽出版社の人に僕は会ったことがありません。その人たちが僕のライブに来たことも一度もありません。だからどこの誰に、大切な自分の権利を持って行かれているのかもわからない。はじめに契約書にサインをしたことによって、実はいろいろなことが発生しているぞということを僕がきちんと知ったのは、自分でレーベルを立ち上げた2年前のことです。

三野: 2003年に初めて当社のスタッフが大塚愛さんに契約のお願いに行きました。そのとき既に大塚愛さんはエイベックスのビッグアーティストで、AMP(エイベックス・ミュージック・パブリッシング)という音楽出版社に権利を預けて、それをイーライセンス(当時)に委託していただくという交渉をやっていたんです。だけどAMPの方々がわれわれに権利を委託していただくということは合意しましたが、肝心のアーティストの方がその内容をきちんと理解しているかどうかということはわれわれにはわからないわけです。ところが、そのとき連絡が入って、大塚愛さんが契約の内容を理解したいと言っているから説明に来てほしいといわれました。そのときの大塚愛さんの質問は非常に的を射ていたとのことでした。彼女はきちんと音楽から発生する自分の役割と、その役割によって得られる対価を細かく認識しているんだなとわかりました。やっぱりこうしたことがアーティストにとって非常に重要なことになっていくと思いますね。私がよく言っているのは、「アーティストが音楽出版社をもっと利用すべきだ」ということ。なぜ大切な権利を預けているのに、その対価として彼らの役割をもっと利用しないのか。それはモッタイナイ話ですよね。