Sep 13, 2017

インタビュー

織田信長は世界史上でも稀に見る名君だった!?井沢元彦流、大河ドラマ&時代劇の楽しみ方

戦国時代を舞台にした大河ドラマ『真田丸』が話題を呼び、劇場でも映画『関ヶ原』の公開など、かつてない歴史&戦国ブームのなか、様々な歴史本も出版されているが、otoCotoがイチオシなのは作家・井沢元彦氏の人気シリーズ『逆説の日本史』(小学館)。
学校の授業で習った内容とは異なるリアルな歴史観に、思わず目からウロコとなってしまう。日本史だけでなく世界史にも詳しい井沢氏に、大河ドラマや時代劇の楽しみ方、暴君・愚君の意外な業績、井沢流多忙時の時間の使い方など、たっぷり語ってもらった。

 

──『逆説の日本史』の取材や執筆で忙しいと思いますが、大河ドラマや時代劇などはご覧になっているんでしょうか?

すべてチェックしているわけではありませんが、NHKの大河ドラマは日本人が歴史を学ぶための入門編として格好の番組だと思います。いちばん困るのは、若い人が「織田信長って誰?」と日本史をまったく知らないこと。歴史上の事件や人物に対して抱いていた常識を覆してみせるのが『逆説の日本史』なので、まずは一般常識を知ってもらわないと僕としても困るわけです(笑)。昨年の『真田丸』はなかなか面白かったので、観ていましたよ。

 

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──堺雅人演じる真田信繁が「幸村」を名乗るエピソードなどは、NHKスタッフも『逆説の日本史』を読んでいたんじゃないかと思わせました。

そうかもしれませんね。でも、できればシリーズ全部を読んでほしいです。『真田丸』では「本能寺の変」は満月の夜になっていたんです。『逆説の日本史』の第1巻の序論で書いていたことなんですが、「本能寺の変」は天正10年6月2日に起きているんです。旧暦(太陰歴)では毎月1日、2日は月が出ません。3日に三日月が出て、15日で満月になっていました。昔は月の満ち欠けが暦になっていたんです。年号を覚えるのは難しくても、こういうシンプルなことなら忘れないでしょ?

──なるほど旧暦がわかれば、その夜は明るい満月だったのか闇夜だったのかも分かるわけですね。

そうです。それと大河ドラマや時代劇を観る上で覚えておくと便利なのは、1石という単位。牛乳瓶1本が1合(180cc)で、一升瓶(1.8リットル)が10合。一升瓶10本で一斗樽。一斗樽10個で1石になるんです。つまり1石とは1000合ということ。1石って、ひとりの人間が1年間に食べるお米の量のことなんです。だから加賀100万石ということは、加賀国の人口は100万人だったということになります。100万石の場合、どれだけ兵力を出せたかというと全体の人口の2.5%で2万5000人ほどでした。女性や子どもを除き、農業をやる労働力を残さなくてはいけないので、そのくらいしか動員できないんです。

──10万石=2500人の兵力と覚えれば、戦国大名たちの軍事力が見えてきますね。

織田信長は「桶狭間の戦い」で、今川義元の4万人の軍勢を破ったと言われています。それだと今川義元は160万石の石高を誇っていたことになりますが、実際には多く見積もっても100万石程度でした。でも、これは戦国時代では常識だったんです。攻めるほうは実際の兵力よりも大きく見せようとし、また勝ったほうも「4万の大軍に勝った」と言ったほうが聞こえがいいわけです。石高と兵力の関係を知っていれば、正しい数字が見えてきます。

──最近の大河ドラマや時代劇で印象に残った作品はありますか?

『真田丸』は「本能寺の変」の間違いさえ除けば、面白かったと思います。脚本家の三谷幸喜さんは他の脚本家とは異なる視点からドラマを描くので、興味深いですね。タイトルになった真田丸は大坂城の出城だったわけですが、これは真田幸村の生涯における最高傑作でした。本来なら城攻めは、秀吉が小田原城を兵糧攻めにしたように持久戦になるものです。ところが真田幸村が難攻不落と言われた大坂城の外側に真田丸を築いたことで、「ここなら落とせる」と徳川方の武将たちは力づくで攻めてしまった。一番手柄を狙う武将たちの心理をうまく突いた真田幸村の巧みな戦術です。また、家康は真田丸で負った劣勢を、政治的手腕で覆してみせる。そういった面白さは『真田丸』にも感じられました。それと三谷さんの目のつけどころがいいなと思ったのは、江戸時代の大奥と違って、あの時代の大坂城は淀君のいた本丸へ浪人に過ぎなかった真田幸村も自由に行き来できたということです。江戸時代になるまでは、男女の交わりは意外と自由だったんです。それで幸村と淀君とのラブロマンスを成立させることも可能だった。これが江戸時代になると、身分制度がはっきりして、大奥へは将軍以外の男性はいっさい入れなくなってしまうわけです。大奥の女性が恋をするには「江島生島事件」のように命懸けになっていきます。

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