人間のダメな部分とか痛い部分とか、
ヒリヒリとしたものに惹かれます

──「ミーコの宝箱」はどういったきっかけで手にされましたか?

徳永前情報もなしに本屋さんに行って、帯に書いてあった言葉とあらすじを読んだ時に、この本を読みたいと思ったんです。実際に読んでみたら、興味深いことがたくさん書いてあって。このミーコっていう主人公を、本人だけの視点で描くんじゃなくて、いろんな人からの視点で見たミーコが描かれていることで、この人が育ってきた過程が見えたんです。すごく魅力的な女の人だなって、かっこいいなって思って、どんどん読み進めていくうちに、いいお話だなと思って。最後の方は読み終わりたくなくて、ページを開くのがすごく惜しかった記憶があります。

──「できればムカつかずに生きたい」もそうでしたが、この本も母と娘の関係や親子の関係について考えさせられるものでしたね。

徳永そうですね。実の両親ではないとはいえ、ミーコもちゃんと愛をもって育ててもらっているんだけど、自分の子供には同じ気持ちを味わせたくないっていう気持ちをもっていて。そういうところもすごく人間らしいと思うし、幼少期のミーコをいじめる女の子にも共感するところもあって。子供の頃って、誰が上で誰が下か、みたいな、そういうパワーバランスをものすごく気にしてたりするんですよね。それも手に取るように分かったし、そういう共感できる部分や憧れる部分がいろいろあるから、すごくこの本に惹かれたんだと思います。

──ミーコが小さな幸せを集めている“宝箱”も、このお話のキーアイテムだと思いますが、徳永さんの宝箱の中には何が入っていますか?

徳永私は石ころで満足できるかなあ……難しいなあ。でも最近は、箱には入らないものですけど、友達の存在のありがたみをすごく感じていて。撮影でうまくいかなかったなあと思うことがあって、もうちょっとこうしておけばよかったなとすごく反省したんですね。その時になんとなく東京にいる友達にLINEをして相談したら、その時にポンと返してくれた一言にすごく救われて。友達はありがたいな、宝だなと思いました。

──三冊目の「演技でいいから友達でいて―僕が学んだ舞台の達人」は、それこそお芝居で悩んだ時のバイブルのような存在ですか?

徳永そもそも松尾スズキさんがすごく好きで、松尾さんが主宰している大人計画もすごく好きで、一時期読み漁ったり見漁ったりした時期があったんです。松尾さんの著書だったり、宮藤官九郎さんの本だったり、お芝居も観に行ってたんですけど、この本はその中で出会った本です。お芝居ってほんとに誰も教えてくれないじゃないですか。先輩方にどうやってお芝居やってるんですか?って聞くに聞けないし。そんな時にたまたまこの本を古本屋さんで見つけたんですけど、私の中では教科書です。この本は松尾さんと、いろんな役者さんが対談している本なんです。ここに出ている方々のようには自分はやれないですけど、こういう覚悟とか、こういうモチベーションでやればいいんだなっていうことを勉強できる、ありがたい本です。

──特に印象に残っているのは、どなたとの対談ですか?

徳永どれもすごいなと思うんですけど、柄本明さんの「普通でいることのすごさ」とか。私には絶対にそう思えないんですけど、板尾創路さんの「本番が一番楽」とか。ここに出ているのは舞台や演劇の達人ばかりですが、たとえば天海祐希さんは元宝塚のトップスターだし、板尾さんはお笑いの方だし、歌舞伎俳優の中村勘九郎さんや、作り手である脚本家の野田秀樹さんもいて、みなさん出身が違うじゃないですか。そういう違うところで育ってきた人たちが、お芝居とどういう向き合い方をしているのか、単純に興味があったんです。それを読むのは、ただただ楽しかったですね。

──同じ舞台に立つ松尾さんだから聞けるお話が満載ですもんね。

徳永そうなんですよね。私は松尾さんにお会いしたことはないんですけど、お芝居を見てる限りでは、もうハチャメチャなんですよ(笑)。もちろん、いい意味ですよ(笑)。なんて自由で不自由な人なんだと思って。いい加減さと緻密さがある方なんだなっていうのが私の中の勝手なイメージなんですけど、そういう方がまた少し違うジャンルの第一線で活躍されている方たちと対峙してお話していることもすごく興味深いし。面白さと興味深さのある本でした。

──これから読んでみたい本はありますか?

徳永最新情報にはすごく疎いんですけど、最近、うちの父に突然読書ブームがやってきたようで(笑)。今までそんなことなかったのに、突然すごく本を読んでるんです。で、これは面白かった、あれは面白かったって言われるんですけど、自分が興味があるものじゃないと、どうしても手が伸びなくて(笑)。なので、結局本屋さんをウロウロして探してるんです(笑)。

──ういう傾向のものがお好きですか?

徳永ミステリーよりは恋愛ものをよく読んでます。家にあるのもわりと女性目線の恋愛ものが多くて。しかもあんまりハッピーエンドじゃない。自分自身があまりにも平凡だったせいで、そうじゃない人達の世界をのぞくことに興味があるんです。最近では「よるのふくらみ」という本を読んだんですが、それもすごく面白かったです。グロテスクなものや誰が殺されたとか、そういうものにはあまり興味が沸かないんですけど、人間のダメな部分とか痛い部分とか、ヒリヒリとしたものに惹かれるので、そういう本に出会いたいです。他には、エッセイや短編ものが好きです。もともと読書が得意じゃないっていう意識があるので、なかなかこれを読みたい!って思う瞬間があまり多くなくて…だから、そういう本に出会えた時の感動はすごく大きいんです。今はその出会い待ちです。

インタビュー・文 / 大窪 由香
撮影 / 田里 弐裸衣
ヘアメイク / 尾曲いずみ

 

 

 

 

 

 

徳永えりさんが好きな本を
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できればムカつかずに生きたい

田口ランディ(著)

新潮社

どうしたら自分らしく強く生きられるんだろう。14歳の頃からずっと、なんだかうまく生きられないなあ、と思って悩んできた。なんか自分としっくりこないなあ、どうやったら自分がやりたいことにまっすぐ突き進めるのかな。傷つきやすい思春期に体験し考えたことは、いまも現在進行形のままだ――生きにくいこの時代を生き抜くために、自分の頭で考えたヘヴィでリアルな「私」の意見。

ミーコの宝箱

森沢明夫(著)

光文社文庫

ミーコは、風俗と福祉の仕事を両立しながら娘のチーコを育てるシングルマザーだ。幼い頃に両親に見捨てられ、躾の厳しい祖母との関係に苦しんだ過去を持つ。苦労の絶えないミーコだが、彼女の特技は、毎日一つ、小さく光る宝物を見つけること。ミーコの宝箱に入っている、一番大切な宝物とは・・・・・・。一人の女性の半生を通して、母と子、人と人の絆を温かく描き出す。

※「演技でいいから友達でいて―僕が学んだ舞台の達人」は電子書籍の配信はありません。

PROFILE

徳永えり(とくなが えり)

1988年5月9日生まれ、大阪府出身。2004年に女優でビュー。以後、映画、テレビドラマなどで活躍中。現在放送中の連続ドラマ小説「わろてんか」(NHK総合ほか)に主人公・てん付きの女中、トキ役で出演

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