「キノの旅」に出会ってなかったら、私は全然違ったなと思います。

──悠木さんが子供の頃に読んでいて、記憶に残っている本はどんな本ですか?

悠木「おかしこれなあに」っていう、すごくリアルタッチでお菓子の絵が描かれている絵本があって、それが私が初めて文字を読んだ本なんです。まだ小さい“ッ”の概念がなかったので、“クッキー”を“クツキー”と読んでいて(笑)。絵がランダムに描いてあるので、どれがクツキーなのか分からなくて、「お母さん、クツキーってどれ?」って聞いてた本が、つい先日家から出てきまして。あ、これクツキーじゃん!って

──えー!なんてタイムリーなお話でしょう。

悠木そうなんですよ。おじいちゃんが運転しているワゴン車があって、後ろの席に座りながら読んでいた記憶が甦りました。おじいちゃんおばあちゃんは鹿児島にいて、鹿児島の本屋さんで買ってもらったんですよ。それを読みながら「クツキー、クツキー」って言ってたのを思い出しました。

──それが一番古い本の記憶ですね。

悠木そうですね。昔からストーリーを作るのがすごく好きで。「桃太郎」を聞いたら「桃太郎」をモジって別のお話を作ってお母さんと一緒に本を作ったりとか、そういうことをいつもしていた記憶があります。あと「はらぺこあおむし」もすごい好きで。穴が空いてるじゃないですか、「はらぺこあおむし」って。ケーキの絵がいっぱいあるページの穴に指をつっこむのがすごい好きでした(笑)。だから、うちの「はらぺこあおむし」はみんな穴がブヨブヨになってます。私が指をつっこんだから(笑)。

──その後、学校に行くようになってから読んでいた本はありますか?

悠木「ファーブル昆虫記」がすごい好きでしたね。

──虫が好きだったんですか?

悠木虫はそんなに好きじゃないんですけど、「ファーブル昆虫記」ってわりと虫をかわいく書いてあるというか、虫を滑稽で面白い生き物として書いてあって、それが面白かったんですね。うちの学校にはクラスごとに本棚があって、一番近い本棚に「ファーブル昆虫記」が揃ってたんですよ。単純に歩くのが面倒くさかったから、朝の読書の時間はそれを読んでいたっていうのもあります(笑)。その本棚に置いてあった「ファーブル昆虫記」は全巻読んだと思います。その後は、たぶん「キノの旅」が初めて読んだライトノベルで、そこからわりとライトノベル寄りになりました。

──「キノの旅」は初めて声優のお仕事をした作品ですね。

悠木そうです。初めて声優の仕事をしますっていう時にオーディションを受けたんですけど、そのオーディションの時に「キノの旅」は小説なんだよと言われて、それで買い揃えて読んでいったんです。私が演じたキャラクターは二巻にしか出てこないんですが、自分のキャラクターの登場するお話以外も面白くてずっと読んでいて。ほんとうに、みるみる読みはまりました。その後も色々な作品にはまって読んだんですけど、やっぱり「キノの旅」が一番面白かったなと思って戻ってきちゃいますね。

──当時読んでいた時と、また大人になって触れた時と、読んだ印象は違いますか?

悠木全然違いましたね。小学校の頃って、大人って正しいものだし、先生って正しいものだし、日本の社会にどういうルールがあってということじゃなく、まず目の前にあるその人がいいと言うか悪いと言うかを正義にしてるじゃないですか。「キノの旅」って一話一話がすごく偏った国の文化なんですよね。それがいわゆる現代社会に置き換えられるんですけど、それがすごい印象的で。間違ってる大人もいるんだっていうのもあれば、今日本でやったら間違ってるけど、この国だったら合ってるんだろうなというのがあったりとか。当時はそれがすごくセンセーショナルで。何が正しくて何が間違っていて、何が誰かの幸せで何が自分の幸せだったのか、みたいなことをすごく哲学するきっかけになったなと思います。で、かといって別にそれを正しいとも合ってるとも言ってないんですよね。で、大人になってから読んでみると、それぞれの国の人の気持ちも分かるというか。子供の時読んでると、やっぱりキノが一番正しくて、キノが中立でキノが正しいと思ってるんですけど、大人になってみると、この国のこの人の気持ちも分かるし、この国のこの人の気持ちも分かるし、この国のこの人はよく考えてみるとずるくない?とか(笑)。もっと俯瞰で見られるようになるんです。キノも意外と自分のエゴで動いてるところもあったりとか。

──この10月から放送が開始になったアニメ「キノの旅 –the Beautiful World-the Animated Series」でキノ役を演じられますよね。ずっと悠木さんの側にいるような存在のキノを演じるのは、どんな心境ですか?

悠木本当に特別な存在なんです。初めて声優のお仕事をした時に、文字だけで演じることの難しさも思い知りましたし、その分これを読み込めば読み込むほどきっとできると思ったし。私の中で、哲学するっていうことを根付かせてくれた作品で、もう一度大人になってから、自分もキャストとして、しかもキノとして出会えるってすごいことだと思います。神様ありがとうっていう気持ちでいっぱいですね。

──悠木さんも大事な時期に、いい本といい人に出会えたんですね。

悠木そうですね。「キノの旅」自体がすごく出会いを大事にしていて、短い出会いと早い別れを繰り返すんですけど、その中で、いい人もいれば悪い人もいるっていうことをすごく納得したというか。結果、今私はこの仕事につけているので、それってすごく尊いなと思ったし、この作品に出会ってなかったら、私は全然違ったなあ、と思いますね。

悠木 碧さんが好きな本を
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かがみの孤城

辻村深月(著)

ポプラ社

学校での居場所をなくし、閉じこもっていた“こころ”の目の前で、ある日突然部屋の鏡が光り始めた。 輝く鏡をくぐり抜けた先にあったのは、城のような不思議な建物。 そこにはちょうど“こころ”と似た境遇の7人が集められていた―― なぜこの7人が、なぜこの場所に。 すべてが明らかになるとき、驚きとともに大きな感動に包まれる。 生きづらさを感じているすべての人に贈る物語。

僕の彼女がマジメ過ぎる処女ビッチな件

松本ナミル(著)

角川コミックス・エース

「では、手始めに四十八手を全て暗記いたします。」平凡な高校生・篠崎遥には、憧れの存在がいた。それは容姿端麗・成績優秀なクラス委員長の香坂秋穂。彼女にダメ元で告白した篠崎は、意外にもOKの返事をもらう。だが、完璧な彼女かと思われた秋穂は、マジメ過ぎるが故に予想を超えたズレっぷりを発揮する処女ビッチで・・・!?第2回「次にくるマンガ大賞」7位受賞の話題作が、コミックス限定の描き下ろし満載で、いよいよ発売!!

キノの旅 the Beautiful World

時雨沢恵一(著) , 黒星紅白(イラスト)

電撃文庫

「キノはどうして旅を続けているの?」 「ボクはね、たまに自分がどうしようもない、愚かで矮小な奴ではないか? ものすごく汚い人間ではないか? なぜだかよく分からないけど、そう感じる時があるんだ・・・・・・でもそんな時は必ず、それ以外のもの、例えば世界とか、他の人間の生き方とかが、全て美しく、素敵なものの様に感じるんだ。とても、愛しく思えるんだよ・・・・・・。ボクは、それらをもっともっと知りたくて、そのために旅をしている様な気がする」 ―――短編連作の形で綴られる人間キノと言葉を話す二輪車エルメスの旅の話。今までにない新感覚ノベルが登場!

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