本を読む喜びを知ってから
本の世界に入り込むのが好きになりました

——新木さんはもともと本をよく読まれていたんですか?

新木そうですね、昔から。親から『本をよく読みなさい』って結構口を酸っぱく言われていたので、最初のうちは言われるから読んでるっていう感じだったんですけど、本を読む喜びを知ってからは本の世界に入り込むのが好きになって、よく読むようになりました。

——その“本を読む喜びを知った”きっかけというのは?

新木まさにこの本です。今回選ばせてもらった「西の魔女が死んだ」という梨木香歩さんの作品で。この本はもともと母がすごく好きで、『すごくいいから読んでみなさい』って勧められたんです。それまでは子供向けの児童書をよく読むことが多かったんですけど、文庫本っていうちょっと大人の本っていうのを初めて手に取って読んだのは、「西の魔女が死んだ」が初めてだったのかな。

——それはいくつぐらいの時ですか?

新木小学校高学年だったと思います。ファンタジー要素があって入りやすかったのもあったと思いますし、物語の長さもちょうどよかったのかなと思います。

——その時に読んだ感想を覚えてますか?

新木ほんとに主人公になりきるというか、ここに出てくるまいちゃんに寄り添うというか。自分がまいちゃんのすぐ横で物語を一緒に追っていってるような感覚になって。読み終わった瞬間は涙が止まらなかったです。おばあちゃんの孫に対する愛が最後のメッセージに全部込められてるし、それを受け取ったまいちゃんの気持ちっていうのも、ちょうど私もまいちゃんと同じぐらいの年頃だったっていうのもあってすごい心に響きましたし、この頃、人が死んだらどうなるのかっていう永遠のテーマのようなことを幼心にも考えるような時期だったので、それをまいちゃんのおばあちゃんである西の魔女が教えてくれました。どこかほっこりさせるというか、人が死んでしまっている小説なんだけど、前向きな気持ちになれる本だったのがすごく印象的でしたね。その後映画化もされて映画も見たんですけど、ほんとに本の世界そのままに映画化されていたので、映画も本も大好きです。

——少女時代ならではの、身近な人に好きって素直に言えない思いなどが描かれていて、ご自分の少女時代と重ね合わせるところもありますか?

新木ありますね。おばあちゃんへの憧れも大きくなりましたし、こういう人がそばにいてくれたら幸せだなっていう気持ちにもなりつつ。親子関係の難しさも描かれていたので、この本一冊で自分の感情だったりとか、そういったものを知ることができましたね。自分とも向き合えたというか。

——この本をきっかけに本を好きになって、その後どんな本を読まれたんですか?

新木その後はミステリーがすごく好きになって。赤川次郎さんとか東野圭吾さんとか伊坂幸太郎さんとか、ほっこりした作品も好きだったんですけど、ちょっと風変わりなものも読んでましたね。ほっこりとしたストーリーだったら宮部みゆきさんの「小暮写眞館」とか。で、ここ最近一番はまったのが辻村深月さんの作品で。

——今回「凍りのくじら」をセレクトされてますね。この本が辻村さん作品の中で最初に読んだ本ですか?

新木一番最初は「僕のメジャースプーン」という作品だったんですけど、辻村深月さんのこの講談社から出ている文庫本は読む順番っていうのが実はひっそりあるじゃないですか。

——はい。それでいくと、この「凍りのくじら」が一番最初なんですよね。

新木そうなんですよ! それを知らなくて、一番最初に「僕のメジャースプーン」を読んじゃったんですけど、それがすごく面白くて。ちょうど身近な友達も辻村さんにはまっていて、貸し合って読み始めたんです。そしたら、ふとした時に、“この人ってあっちの物語に出てきたな”とか、“この女の子ってあっちでもいなかった?”っていうそういった共通点がわかってきて、そこでこの作品には読む順番があるんだ!っていう。辻村深月さんの面白さの一部分を逃してしまったとわかった時にはうなだれました(笑)。

——知らないで読んで、そうやって発見していく楽しさっていうのを逆に味わったんじゃないですか?

新木それも魅力なんだろうなとも思うんですけど、でもやっぱり順番に読みたかった(笑)。ということで、最近この「凍りのくじら」をイチから読もうと思って、つい最近読み終わったばっかりだったので、挙げさせていただきました。

——この主人公は周りの人に“少し○○”とあだ名をつけてますが、新木さんがご自分を“少し○○”で表すとしたら?

新木え〜! なんだろう?……少し……少し不足、かなあ。まだまだ未熟だなって思いますし。例えば自分の中で考えて持ってきた答えをこうやってインタビューとかでお話したりするときに、後で“あ、あそこもうちょっと考えておけばよかったな”って思うことが結構あって、自分の中でもちょっと不足していたなって思うことが多いので。そういうのって誰にでもあるとは思うんですけど、わりとここぞっていう時に不足してたりすることもあるので(苦笑)、やっぱり“少し不足”かな。

——でも、すごく落ち込むほどではないと。

新木そうですね。“少し”です(笑)。不足のために次頑張るというか、不足があるから次こうしてみようっていう部分もあります。

——新木さんが思う辻村さんの作品の魅力はどんなところですか?

新木出されている文庫本のストーリーが少しずつパズルのように重なってくるところだったり、物語の起承転結がすごくわかりやすくて読みやすいこと。厚みのある本だと、初めての人だと手に取りにくい部分もあるかもしれませんが、私が勧めた人全員が面白いと太鼓判を押してくれました。「凍りのくじら」もそうなんですけど、人を信じることの難しさだったりとか、人のことを簡単には手放せない人間の心情だったりとか、信じることは簡単なのに信じなくなるとか、普段自分が普通に行ってたこと一つ一つが実はそうじゃないんだよっていうことをすごく実感させられたり、人の怖さだったり、そういった人間の心理みたいなものがすごく面白いんです。どこから書いてるんだろうとか、どの作品からストーリーを組み立てているんだろうっていう、不思議な、ほんとに探究心みたいなのが生まれて、どんどんどんどん次の作品も読みたい次の作品も読みたいって思うし、初めて次の作品を待ち遠しく思える作家さんに出会えて、よかったなっていつも思います。

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凍りのくじら

辻村深月

講談社

藤子・F・不二雄を「先生」と呼び、その作品を愛する父が失踪して5年。高校生の理帆子は、夏の図書館で「写真を撮らせてほしい」と言う1人の青年に出会う。戸惑いつつも、他とは違う内面を見せていく理帆子。そして同じ頃に始まった不思議な警告。皆が愛する素敵な“道具"が私たちを照らすとき――。(講談社文庫)

僕らのごはんは明日で待ってる

瀬尾まいこ

幻冬舎

兄の死以来、人が死ぬ小説ばかりを読んで過ごす亮太。けれど高校最後の体育祭をきっかけに付き合い始めた天真爛漫な小春と過ごすうち、亮太の時間が動きはじめる。やがて家族となった二人。毎日一緒に美味しいごはんを食べ、幸せな未来を思い描いた矢先、小春の身に異変が。「神様は乗り越えられる試練しか与えない」亮太は小春を励ますが・・・・・・。

※『西の魔女が死んだ』は電子書籍の配信はございません。

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