Jul 19, 2018

インタビュー

なぜいま社会にアートが必要なのか?【前編】 スマイルズ代表・遠山正道×チームラボ代表・猪子寿之

東京・お台場に新しく開館したばかりの世界最大級のデジタルアートミュージアム「エプソン チームラボ  ボーダレス」(以下、チームラボボーダレス)。50作品以上ものデジタル作品によって埋め尽くされた巨大な迷宮のようなミュージアムは連日子どもから大人まで長蛇の列が出来、アートファン以外にも大きな話題となっている。

そのチームラボ代表・猪子寿之氏、そして猪子氏と旧知の仲で、アートコレクターとしても有名なスープストックトーキョー創業者の遠山正道氏(スマイルズ代表取締役社長)は、現代アート界で唯一無二の活動を展開する同志のような関係にある。

そのふたりに「いまなぜ社会、そしてビジネスに、アートが必要なのか?」という質問をぶつけ、オープン間もない「チームラボボーダレス」の会場で話を伺った。

 

遠山正道(以下、遠山) ひさしぶり。先ほど(チームラボボーダレス)ミュージアム内を小1時間ほど見てきました。

猪子寿之(以下、猪子) じゃあ、(作品は)充分観れてないですよね(笑)?

遠山 確かに。作品の説明付きで案内していただいたので、自分で発見していく体験は薄かったですね。

猪子 SNSで検索すると「5時間居た」「気付いたら3時間過ぎていた」という書き込みもあって、比較的、長時間滞在する方が多いようです。館内の作品は固定ではなく作品自体が移動したり変化しているから、見学者は同じ空間に立ち止まっても、視界には違う作品が入ってくる。それがいつ現れるのかがわからない。そういった状況にいると作品と自分の身体の境界が曖昧になっていく。そんな作品が作りたかったんですよね。

遠山 はじめはCGが多用されている空間がずっと続いていますよね。その後、アスレチックジムのような、棒が森のように立ち並ぶ空間に移動した時、現実に引き戻された感覚があって驚きましたね。それからプロジェクションで映像が周囲に流れる中、ロープを手で掴みながら宙に浮いている木の板をつたっていく吊り橋のような空間は、手で握っている感覚と足で支えている感覚のみが支えになっているので、身体のリアリティを感じました。それで今は少しまだクラクラしていて(笑)。

猪子 自分の手と足以外は、何も信頼できないゆえに、脳での空間把握ではなく身体をより信用するしかない状態下でのアート的な体験を模索しています。現代人は、脳での状況把握に頼りすぎていて、”身体を捨てた状態”だと思うんですよ。それを揺さぶりたかった。

 

 

インターネット到来以降
アートにとって何がリアルか

 

──下のフロアは視覚的な体験が中心、上のフロアは身体的な体験が中心で、そのギャップがあったからクラクラしたのかもしれないですね。

遠山 そうですね。滝の映像が流れる作品では、床に投影された映像が小さく揺れていましたが、あれも何か意図があるのでしょうか?

猪子 上の階で子どもが走り回っているから建物自体が揺れたのかもしれません(笑)。現場のスタッフとしては揺れをなくすことにモチベーションをかけているんですが。

遠山 思わず地震を連想してしまいました。そこで思ったのが、このミュージアムでの体験は、観賞側が恐怖を感じるような表現に寄せることだってできるじゃないですか。でもそうはせずに、どこまでもハッピーな方向に向かっているのがすごいなと。

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