Oct 06, 2017

インタビュー

担当編集者だけが気づいた『エンジェルハート』シャンインと香の目の秘密

無類の女好きの自由人、でもその顔は知る人ぞ知る凄腕のスイーパー(始末屋)、それが『シティーハンター』主人公・冴羽獠だ。1985年に『週刊少年ジャンプ』で連載が始まった『シティーハンター』は、1991年に完結したものの、2001年の『週刊コミックバンチ』創刊時にセルフリメイク作品『エンジェル・ハート』として待望の復活を遂げた。この作品だけでも17年の長期連載になるが、『シティーハンター』から数えると32年という超長期連載の『エンジェル・ハート』が、ついに完結。長期間にわたって、作者の北条司先生を二人三脚で支え続けた、株式会社コアミックスの代表取締役・堀江信彦さんにライターの前田久がじっくりと話を聞きました。

 

──『エンジェル・ハート』完結おめでとうございます。連載開始から足掛け17年というのはすごいことですよね。考えてみれば前作である『シティーハンター』よりも長い。

途中からは月刊誌の連載でしたからね。期間は長くなりますよね。みなさん信じないかもしれないけど、実は北条先生のマンガづくりというか、編集者との打ち合わせは、デビュー以来ぼくが全部参加しているんですよ。『週刊少年ジャンプ』の副編集長、編集長になったとき以外は。『エンジェル・ハート』も毎号、北条先生とずっと打ち合わせをし続けてきました。だから基本的に、北条先生と気持ちを同じくしてずっとやってきたんです。ぼくは北条先生がマンガ家としてけじめがつくまでは、ずっと担当編集をやり続けるという気持ちでいるんです。

──今日はそんな堀江さんに、『エンジェル・ハート』のお話、そして担当編集の目から見た北条司先生の魅力を中心にうかがいたいと思っています。よろしくお願いします。ではそんな本題の前にあらためて、『シティーハンター』という大ヒット作の誕生の経緯をお聞きしたいです。ファンには有名なエピソードではありますが、もともとは北条先生のヒット作『キャッツ♥アイ』に登場した「ねずみ」という脇役を北条先生と堀江さんが気に入られて、読み切り企画を考える際に、そのキャラを膨らませる形で作品を作られたということですよね。

そうだね。ぼくも北条先生も、『キャッツ♥アイ』に「ねずみ」を出したときに、ものすごく動かしやすかったんですよね。次から次にアイデアが出てくる。で、これいいね! という感じで、『キャッツ♥アイ』の連載中から、次の連載では彼を主人公にしようと話し合ってたんです。だから最初はジャンプの愛読者賞という、連載作家が読み切りで競い合う当時の企画のために描いた読み切りだったのですが、その時点で連載にするつもりで描いてました。だから『キャッツ♥アイ』の連載が終わったとき、割りと即座に、『シティーハンター』の連載を準備するために、ふたりでロサンゼルスにいって、傭兵たちが市民に対して防衛術を教える場所を取材したりしていたんだよね。獠は元傭兵というのが前提にあったからね。コンバットシューティングというのがあって、それの達人に教えを請うたりして、取材を重ねたんです。そうして『シティーハンター』の連載が始まりました。

 

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“日本一軽い男を描く北条司”の
軸足になったハードボイルドの世界

 

──当初の企画では、実際に連載されたものよりも軽妙なものになる予定だったのが、堀江さんが当時ハードボイルド作品に傾倒されていて、それでちょっと路線が変わったそうですね。

たしかに当時、出版されているものはほとんど読んでいるくらい、ハードボイルド小説が大好きでした。だからぼくが展開を考えると、どうしてもちょっと硬くなる。硬くなると北条先生の個性が活かせない、邪魔をしてしまっていることに、連載が何話か進んだときに気がつきました。そこから「北条先生、キャラクターを作ることに関しては好きにやっていいよ」と言ったら、そこから北条先生の持ち味が出て、軽妙な雰囲気の作品になっていったんです。そう決めてからは(ページの余白)に載せるコメントも「日本で一番軽い男を描く北条司!」に変えちゃったりしてね(笑)。

──とはいえ、ストーリーにはハードボイルドな部分が残り続けたのが、作品の個性につながっていたのかなと。

編集者として手助けができるのは、ストーリー構成とか、話のネタとか、そういう部分です。そこに関しては、毎号きっちりアイデアを出していました。打ち合わせの前には少なくとも3つはアイデアを考えておく。その自分で決めたルールは、今でも守っています。