Aug 10, 2017

インタビュー

大ヒット<八咫烏シリーズ>の作家で現役大学院生の阿部智里は人でなし?!書評家・大矢博子が創作現場に迫る

読み返すたびに新発見がある
そんな話を書きたかった

 

──大きなテーマというのは、この第1部すべてを通したテーマということですか?

そうです。第1部のテーマは〈それまで信じていた価値観の崩壊〉です。そのために、最小の単位から始めて次第に世界観を広げて最終的にひっくり返す、という構成を考えました。最初は個人の話で、そこから次第に八咫烏の世界、その周辺世界というふうに。価値観の崩壊を書くにあたってどうして最小単位から話を始めたかというと、読者に八咫烏贔屓になって欲しかったから。

──八咫烏贔屓に?

八咫烏を好きになって、感情移入して、猿に憎悪を持って欲しかった。その方がひっくり返されたときの衝撃は大きいでしょ?

──人でなしだ! 皆さん、ここに人でなしがいます!

でも、それって1巻から宣言してるんですよ。ほら、『烏に単は似合わない』って、そういう話じゃないですか。あれを書いたのは、「阿部智里という作家はこういうことをやる人間ですよ、大丈夫ですか?」という名刺の意味もあったんです。あれでダメだと思った人は、たぶん最終巻まで読んでもやっぱりダメだと思う。でも1巻を楽しんでくださった人なら、きっと最後も面白かったと思ってくださるんじゃないかと。

──ああ、なるほど! この全6巻の構成は、実はすでに1巻で明示されてたんですね。それを知って1巻をもう一度読むと、また印象が変わりそう。

そうなんです! 読み返したときに発見がある、という話を書きたかったんです。

──確かに、一冊の中でも再読で気付く伏線やどんでん返しがありますし、次の巻を読むと前の巻の印象が変わります。〈八咫烏シリーズ〉は、その繰り返しですね。

シリーズ全体を通しても、最後まで読んで、もう一度前に戻ったときに初めて気付く仕掛けというのをけっこう仕込んであるんですよ。『烏に単は似合わない』や『玉依姫』に雪哉がいたというのもそうですし、テーマに関わる大きな仕掛けもいろいろと。特に、6巻まで読んだあとで3巻を読むと、見えてくるものが違うはずです。これまでずっとシリーズを読んでくださって、応援してくださった皆さんにも、ぜひもう一度最初に戻って、新しい発見を楽しんでいただきたいですね。

 

取材・文/大矢博子

 

 

プロフィール

 

3_プロフ写真

阿部智里(あべ・ちさと)

1991年群馬県生まれ。2012年早稲田大学文化構想学部在学中に20歳という史上最年少の若さで第19回松本清張賞を受賞、同年『烏に単は似合わない』でデビュー。同作に始まる『八咫烏シリーズ』は累計85万部を超す人気シリーズに。シリーズ最新作『弥栄の烏』が刊行されたばかり。

 

作品情報

 

4_書影弥栄の烏

『弥栄の烏』阿部智里(文藝春秋)

八咫烏の一族が支配する異世界・山内。
「うつけ」の若宮と「ぼんくら」近習の少年・雪哉という若き主従の活躍を中心に、賢く華やかな宮廷の姫君、若宮を取り巻く護衛の青年たちが繰り広げる、お妃選びと権力争い、友情と断絶、成長と再生を描いた壮大な和風ファンタジー。
一冊ごとに表情を変えながら読者を魅了、85万部を突破したこの物語の第一部完結篇「弥栄の烏」は、主人公・雪哉の弟が武官訓練所である剄草院に入学準備する場面から。その実力を認められ、全軍の参謀役にまでなった雪哉、敵対する勢力を抑えて朝廷の実権を掌握した若宮が治める山内を大地震が襲い、開かれた金門の扉の向こうには、山内を恐怖に陥れた「人喰い大猿」が現れた。ついに始まった、猿と八咫烏の最終決戦。若宮は名前を取り戻し、真の金烏となれるのか。山内は栄えるのか、それとも滅びに向かうのか――?

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