Aug 23, 2016

コラム

テレビアニメ『うる星やつら』諸星あたる役の古川登志夫、ラム役の平野文との縁から生まれた声優イベント

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 平野文さんの「だんぜん アニメNo1」というラジオ番組はナイターオフ枠なので半年で終わり、以降、彼女には一度も会っていない。魚河岸に嫁いだという噂は聞き、それを題材にした本やテレビドラマのことは知っていた。時々、平成教育委員会のナレーションなども聞いていた。
 一方、古川登志夫さんとは、たまにラジオドラマの現場でお会いしていた。2014年。「夜のドラマハウス」という番組の、実に三十年ぶりの同窓会で、仕事以外ではじめて古川さんと会った。きっとその話を聞き、平野さんも昔を思い出してくれたんだろう、と思った。

 古川・平野さんと三人で食事中、雑談の中で、ラジオの話になった。
「私はラジオから始まったから、またラジオに戻ってみたいの」
 と平野さんは言う。彼女は十代の頃からNHKラジオや文化放送でDJとして人気だった。その時、リスナーのアドバイスで声優を始めたのだという。それが、いきなりの大ヒット・キャラ「ラムちゃん」だったわけだ。
 ぼくが彼女をなんとなく年上だと思い(失礼!)、なおかつ「アニメ声優」だとは思わない理由が、わかった。
 そして、かつて「だんぜん アニメNo1」で彼女がポツリと言った「イントロ紹介して、ちょうどいいタイミングで歌が始まる、あの微妙な間が好きなの」という言葉が、三十年の時を経て甦った。

 古川さんと平野さんの二人で、
「ラジオ番組ができないかなぁ…」
 という話になった。
 もちろん十分可能だ…とは思ったが、ぼくは感想を述べた。
「あたる&ラムとしてなら、それはもう完成されたコンビだから、面白くない。い、いや、そうじゃなく、面白いのはわかっているから面白くないというか、なんというか……(冷や汗)。でも、古川登志夫&平野文というコンビなら、何か新しい面白さが始まるかもしれませんね」

 この時《レジェンド声優》という発想が生まれた。
 古川・平野のお二人に限らない。ぼくが駆け出しの頃にたくさん仕事をした声優さんの多くは、その後も色々な作品で数々のキャラクターを演じている。アニメ以外にも、洋画吹き替え、ナレーション、パーソナリティーなど…三十年以上もずっと声のプロとして活躍しているのだ。ならば、もはやアニメのキャラを離れて、その声優さんこそがレジェンドな存在ではないか。
「だから《レジェンド声優》と呼びましょう!」
 というぼくの勝手な提案に、お二人は照れた。
「いえ。とても、レジェンドなんて…」
「いや、いいんです。こういうのは他人が勝手に呼ぶものですから」

 かくして、「レジェンド声優プロジェクト」がスタートした。ぼくのいつものパターンで、(目算はないが、面白そうだからやってみよう)だ。
 ところが、話してみると、アニメ、放送、イベント…各分野で賛同してくれる方が多いのに驚いた。やはりみんなが、自分たちの同志、あるいは自分たちを育ててくれたレジェンドに思い入れがあったのだ。

 ニッポン放送にお願いして、古川・平野コンビの特番を何度か放送した。評判もいい。このサイトで継続的に行われているインタビューも、その一環だ。野沢雅子さん、水島裕さん、井上和彦さんも…みんなレジェンドだ。これまた評判がいい。
 そして今回、レジェンド声優と若手声優たちが一堂に会する「世田谷声優フェス2016」にまでこぎつけた。三軒茶屋の廃校となった学校の校舎を丸ごと使うのだから、まさに一堂に会する、だ。フェスだ。
 こういう「大人の文化祭」があってもいいと思う。日本で独自に発展した声優文化は、それだけの歴史を刻んだのだから。

 

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8月27日開催!「世田谷声優フェス2016」
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藤井青銅

藤井青銅(ふじいせいどう)
23歳の時「第一回・星新一ショートショートコンテスト」入賞。これを機に作家・脚本家・放送作家となる。

書いたラジオドラマは数百本。腹話術師・いっこく堂の脚本・演出・プロデュースを行い、衝撃的デビューを飾る。最近は、落語家・柳家花緑に47都道府県のご当地新作落語を提供中。 著書「ラジオな日々」「ラジオにもほどがある」「誰もいそがない町」「笑う20世紀」「あなたに似た街」「【悲報】本能寺で何かあったらしい……光秀ブログ炎上中! 歴史Web2.0」…など多数。

藤井青銅著「ラジオにもほどがある」(小学館刊)
→電子書籍版

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