Jul 17, 2018

コラム

星新一さんに送る言葉

→前回までのコラムはこちら

「星新一公式サイト」に「寄せ書き」を載せるにあたり、ぼくが初めてお会いした時の星さんの年齢が52歳であったことを発見した。では、ぼくにとって重要な他の方々の場合はどうだったのか?

 まず、ドン上野。この名前も、このコラムでは何度も出てきている。ラジオ界の名物プロデューサーで、現在につながるアニメ声優ブームを作り出した一人だ。ぼくは星新一ショートショートコンテストに入賞した年に初めて会ったので、同じ1979年。調べると、この時、ドン上野さんは48歳ということになる。
(48歳であの実績と貫禄で、しかもドンだったのか!)

 そして大瀧詠一。1984年、「マイケル・ジャクソン出世太閤記」のラジオドラマのことも、以前に書いた。この時、大瀧さんは36歳。すでにロンバケの大ヒットを飛ばした巨匠だった。この時ぼくは28歳だから、他の方のケースほどには離れていない。なのに当時、ずいぶん人間の格が違うなあと感じたものだ(いちおう断っておきますが、当然ぼくがかなり格下)。

 さらに、小林信彦。「マイケル・ジャクソン出世太閤記」の原案者である小林さんとは、その少し前「唐獅子株式会社」ラジオドラマ化の時すでにお会いしている。が、お話をするようになったのはやっぱり、「マイケル~」の時だから、この時52歳。小林さんも、早くからこの世界では大きな存在だった。
 ちなみに、この「マイケル~」のドラマ収録時。休憩時間に、ニッポン放送の通称3ロビと呼ばれる喫茶店で、ぼくたちは4人で小さなテーブルを囲んで雑談をした。そのメンバーは…ぼくの隣が大瀧詠一さん。向かって小林信彦さんと、谷啓さん!
 もうこれは、ぼくにとって夢のようなひととき。雑談をしながら、心の中で、
(ああ、このメンバーの中にまざって話をしてるなんて!)
 と、こっそり感激していた。

 以上で共通して言えるのは、若い時に初めて会った相手の年齢にいざ自分がなってみると、ぼくにはとてもあんな「大人のふるまい」はできない……ということだ。実年齢だけはオジサンになったが、こっちは中身がまるで伴っていないのだ。ナサケナイ。

 ともあれ、こういった方々と出会えたのは、すべて一番最初に星新一さんがぼくを選んでくれたからだ。そして、あのコンテストからそろそろ40年が経とうとしている今、なおその思い出に触れる文章を書く依頼が舞い込むなんて!
 結局ぼくはずっと、星さんの掌の上で活動を続けてきたようなものかもしれない(まったく、出来の悪い孫悟空だ)。

 そんな気持ちを、「星新一公式サイト」に書いた。
https://hoshishinichi.com/note/94.html
 よかったら、読んでみてほしい。そして、ぼく以外の方々の寄せ書きが面白いので、ぜひそちらもどうぞ!

 さて、この連載コラムは今回で終了となります。元々は、ぼくが放送界、出版界、音楽界などで出会った方々、経験したことなどをどこかに記録しておきたいという思いで始めました。
 この手の話は面白いがゆえに、当事者でない人が尾ひれはひれをつけて広めることが多い。まあ、面白ければそれでもいいのですが、事実と異なることがまことしやかに「事情通の話」として固定してしまうのは、ちょっと問題がある。
 なので、すべてぼくが実際に見たこと、経験したことだけを書くようにしました(とはいえ、その場にいた当事者でも、視点が変われば別の記述になるでしょう。「事実」とはそういうもの)。噂や伝聞は書かないよう、気をつけました。
 これまで、このコラムを読んで「あの時、そんなことがあったのか」「あれはそういうことだったのか」などの面白い発見があったなら、嬉しいです。
 ご愛読、ありがとうございました。また別の形でお目にかかりましょう。

 

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★「初詣」は江戸時代になかった? ★「江戸しぐさ」のいかがわしさ ★神前結婚式は古式ゆかしくない ★「古典落語」は新しい? ★恵方巻は、本当はいつからあったのか? ★アレもコレも「京都マジック」! ★初めて「卵かけご飯」を食べた男とは? ★サザエさんファミリーは日本の伝統か? ……一見、古来から「連綿と続く伝統」のように見えるしきたりや風習・文化。しかし中には、意外に新しい時代に「発明された伝統」もある。もっともらしい「和の衣裳」を身にまとった「あやしい伝統」と、「ほんとうの伝統」とを対比・検証することで、本当の「ものの見方」が身につく一冊。 フェイクな「和の心」に踊らされないための、伝統リテラシーが磨かれる!

 

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藤井青銅

藤井青銅(ふじいせいどう)
23歳の時「第一回・星新一ショートショートコンテスト」入賞。これを機に作家・脚本家・放送作家となる。

書いたラジオドラマは数百本。腹話術師・いっこく堂の脚本・演出・プロデュースを行い、衝撃的デビューを飾る。最近は、落語家・柳家花緑に47都道府県のご当地新作落語を提供中。 著書「ラジオな日々」「ラジオにもほどがある」「誰もいそがない町」「笑う20世紀」「あなたに似た街」「【悲報】本能寺で何かあったらしい……光秀ブログ炎上中! 歴史Web2.0」…など多数。

藤井青銅著「ラジオにもほどがある」(小学館刊)
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