Jul 10, 2018

コラム

ザ・湘南サウンド ブレッド&バターとの初対面

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 ブレッド&バターは、仰ぎ見る大先輩。フォークやロック、ニューミュージック…ということはつまり、J‐POPの源流を作った方たちの一人(一組)だ。ユーミンが彼らのために書いた「あの頃のまま」は名曲で、大ヒットし、ぼくの好きな曲だ。
 当然ぼくより全然年上で、そういうミュージシャンに詞を書けることは光栄だった。だがもちろん、まずは一回お会いしてから…ということになった。

 ブレッド&バターは、兄・岩沢幸矢さんと弟・二弓さんの兄弟デュオだ。この時は、幸矢さんとお会いした。
 あれは四谷だか市谷だかの、なぜか屋外だった。なにかイベント終わりだったのだろうか? それとも待ち合わせの場所に向かう途中、屋外で先に会ってしまったのだろうか? とにかく、お堀そばの路上で、夕方、ポロシャツ姿の幸矢さんが、ニコニコして初対面のぼくに歩み寄ってくれたのをよく憶えている。そして、最初にかけられた言葉が…
「海はお好きですか?」

 ブレッド&バターは湘南サウンド初期からのアーティストだ。
 世代的には、加山雄三→ザ・ワイルドワンズ→ブレッド&バター→サザンオールスターズ(桑田佳祐)→TUBE…という流れになる。
 そういうザ・湘南サウンドの方が「海はお好きですか?」と聞いてくれたのだから、これまたぼくはそのストレートさに、嬉しくなった。もちろん、
「好きです」
 と答えた。これもお愛想ではなく、ぼくも海の近くで育ったからだ(残念ながら湘南ではなく、日本海。これが北国だとぐっと演歌っぽくなるが、西なのでなんのイメージもない)。
 それから、ブレバタには何曲か作詞させてもらった。とても光栄だった。

 番組や楽曲制作、イベント…などは、その都度、得意技を持った人たちが集められる。たとえば、役者、歌手、演出家、作家、作曲家、演奏者、映像、音声、美術…などなど。一つのプロジェクトのために集まり、役目を終えるとまた散っていく。そういう職能集団的なところが、実はぼくは気に入っている。
 そしてまた別のプロジェクトで集められる。すると、
「おお、あの時一緒にやった…」
 という人と再会することもあるし、
「今回は初めまして…」
 とうこともある。
 ぼくにはなんとなく、戦争映画で見る「傭兵」みたいなイメージがある。「おお、キミとは西部戦線で一緒だったな」「爆破係にはまたあいつが呼ばれているらしい」「そうか。そりゃ安心だ」…なんていうアレだ。

 だから番組やイベントは、いつも気心が知れている人ばかりが集まれば楽な気もするが、それでは新しい化学変化がおきない。そこでプロデューサーは、それまで縁のなかった人をピックアップして座組に加えるのだ。
 なのでスタッフ同士は、たとえよく知らない間柄であっても、即座に親しくなって仕事をしなければならない。ギョーカイ用語としてバカにされることが多い「~チャン」という呼び方は、そういう必然性から生まれたのではないかと思っている。いい大人がお互いを「~チャン」「~選手」、あるいはニックネームで呼び合うのはやや子供じみているが、そうすることで急速に親近感を高めようという知恵なのだ、と。

 ここに書くのも恥ずかしいけど、ぼくはけっこう人見知りなので、実は放送作家に向いていないことを自覚している。お酒も飲まないので、一杯飲んでうちとけるということもできない。いつも新しいチームに入っていく時は、我ながらぎこちなく、ヘタクソなのだ。
 だから、初対面でストレートに「ミュージカルはお好きですか?」とか「海はお好きですか?」と聞いてくれるのは助かるし、そういうことが照れずにできるのはスターの証しだよなあ、と感心するのだ。

 

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藤井青銅

藤井青銅(ふじいせいどう)
23歳の時「第一回・星新一ショートショートコンテスト」入賞。これを機に作家・脚本家・放送作家となる。

書いたラジオドラマは数百本。腹話術師・いっこく堂の脚本・演出・プロデュースを行い、衝撃的デビューを飾る。最近は、落語家・柳家花緑に47都道府県のご当地新作落語を提供中。 著書「ラジオな日々」「ラジオにもほどがある」「誰もいそがない町」「笑う20世紀」「あなたに似た街」「【悲報】本能寺で何かあったらしい……光秀ブログ炎上中! 歴史Web2.0」…など多数。

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