Jul 05, 2018

コラム

大スター 大地真央との初対面

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 大地真央さんの番組を担当していたことがある。FMの、当然オシャレな番組で、本来ぼくなんかに声がかかるはずがない。
 元々、彼女のそういう番組が放送されていたのだ。なにかの都合で作家さんが辞めることになり、後任を探していたという。たまたまプロデューサーがぼくの知り合いで、
「藤井さん、どうかな?」
 ということになったのだ。

 最初から番組を立ち上げる時と、すでに出来上がった番組に途中参加する場合とでは、別の難しさがある。作家側としてはもちろん、タレントさん側もそうだ。テレビだと作家は複数いる場合が多く、タレントさんとあまり会わない(まったく会わないケースもある)。ラジオは、ほぼ一対一。直接いろいろ話す機会が多いのだ。
 案じたプロデューサーは、まず一緒の食事会を設けてくれた。天下の大スター・大地真央との初対面だ。そこで最初にかけられた言葉が…、
「ミュージカルはお好きですか?」

 宝塚を退団後、ミュージカルスターとして有名な真央さんにふさわしいストレートな言葉で、嬉しくなってしまった。ぼくはもちろん、
「好きです」
 と答えた。これはお愛想ではなく、本当に好きなのだ。ただしぼくの場合、ほとんど昔のMGMミュージカル映画だったが。
 しかしこれから数年間、真央さんの番組を担当することで、彼女が出演するミュージカル公演はいつも見に行くことができたので、とっても得をした。

 番組でお会いするようになって驚いたことが、二点ある。
 一つは、美人。いや美人であることはすでにみんな知っている。が、彼女はぼくと同い年だったのだ。
(ぼくと同じ年で、この若々しさ、この美しさは、いったいどういうことなんだ!)
 と、すでに三十半ばになっていたぼくはいつも驚嘆していた。

 同い年ということは見てきた番組、聞いてきた音楽なども同じわけで、収録の合間の雑談で、たまたま「帰って来たヨッパライ」の話になった。あれはぼくが小学六年生の時の大ヒット曲で、ということは真央さんにとってもそう。当時の子供はみんな好きだった。
 あの歌には「♪酒はうまいし、ねーちゃんはきれいだ」という歌詞がある。ぼくには五歳上の姉がいる。なのでいつも、そこのところを「♪酒はうまいし、ねーちゃんはきたない」と変えて歌い、からかっていた。実に子供じみた行為で、恥ずかしい!(実際に子供だったんだから、許してもらいたい)
 それに対し、姉は、
「その『ねーちゃん』は、そういう意味じゃないの!」
 と反論し、ぼくはいつも心の中で、
(そんなことわかってるよ~だ)
 と思っていた。…という実にくだらない話をしたら、真央さんは、
「私、あの歌、嫌だったわあ」
 と言う。
「なんでですか?」
「私、本名が、多田っていうの」
「ええ。それが?」
「男子が、♪おらは死んじまっただ~…の『ただ』の所を何度も強調して、からかうの」
「アハハハ…そうか!」
 まったく、当時の小学生男子は全国どこでも似たようなことをしていたんだなあと、呆れると共に嬉しくなった。

 そう、こんな風に、気さくに面白い話をすることに驚いたのが、第二の点。
 お会いする前は、遠くから眺めていて(元宝塚のトップスターだし、まじめで優等生みたいな方なのかなあ)と思っていた。が、番組を担当して、彼女のコメディエンヌの才能の素晴らしさにビックリしたのだった。

 もう一つ。
 やはり初対面の時かけられた言葉に、嬉しくなったことがある。
 今度はミュージシャンだ。「ブレッド&バター」。たまたまプロデューサーに声をかけてもらい、ブレバタの作詞をすることになった。
 その初対面の時の言葉は?

 

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藤井青銅

藤井青銅(ふじいせいどう)
23歳の時「第一回・星新一ショートショートコンテスト」入賞。これを機に作家・脚本家・放送作家となる。

書いたラジオドラマは数百本。腹話術師・いっこく堂の脚本・演出・プロデュースを行い、衝撃的デビューを飾る。最近は、落語家・柳家花緑に47都道府県のご当地新作落語を提供中。 著書「ラジオな日々」「ラジオにもほどがある」「誰もいそがない町」「笑う20世紀」「あなたに似た街」「【悲報】本能寺で何かあったらしい……光秀ブログ炎上中! 歴史Web2.0」…など多数。

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