Jun 12, 2018

コラム

ナンチャン(南原清隆)と藤井青銅との接点とは

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 あれは数年前、ニッポン放送の通用口で、
「藤井さん!」
 と声をかけられたことがある。見ると、ナンチャンだった。
 ぼくは以前、ラジオでは「ウッチャンナンチャンのオールナイトニッポン」、テレビでは「やるならやらねば」を担当していた。その頃は週に二度会っていたわけだが、番組が終われば、すっかり会わなくなる。(あ、いま思い出した。その後テレビではウンナンの「突撃! お笑い風林火山」という番組もやった。夜7時台に歴史バラエティという冒険企画だったが、短命だったなあ…)

 ナンチャンは何かの番組のゲストで来ていたのか、終わって帰るところ。ぼくはこれから仕事するところ。偶然タイミングが一緒になったのだ。
 もう何年間も会っていなかったが、憶えていてくれて嬉しかった。ところが、ナンチャンが意外なことを言った。
「藤井さん、花緑さんに落語書いてるんだって?」
 ちょうどぼくが柳家花緑さんに本格的に落語を書き始めた頃だった。
「え? なんで知ってるの?」

 なんでも、数日前、花緑さんが日本テレビの「PON!」にゲストで出た。その次の番組が、南原さんの「ヒルナンデス」だ。楽屋の廊下で、たまたま二人が出会ったらしい。
 ナンチャンは元々落語好き。それはぼくも知っている。上方落語の口調で喋ったのを聞いたこともある。
 楽屋の廊下で、ナンチャンと花緑さんは立ち話になった。
(※以下は、あくまでぼくの想像です。が、内容は、ま、こんな感じでしょう)
花緑 「あ、南原さん。おはようございます」
南原 「あ、花緑さん。今日はなんで?」
花緑 「今度独演会があるんで、お知らせも兼ねてPON!のゲストに出てたんです」
南原 「ああ、そうですか」
花緑 「今度の独演会は新作もやるんです」
南原 「へえ、自分で作って?」
花緑 「いえ。藤井青銅さんという人に書いてもらって」
南原 「藤井さん!?」

 というようなことで、ナンチャンは驚いたらしい。ちなみに、ナンチャンはぼくが落語好きなことも知っているから、驚くと同時に納得もしたらしい。
 ニッポン放送の通用口で、ぼくはナンチャンに説明した。落語は元々、同時代の出来事を語っていた庶民の芸能。古臭くて難しいお爺さんの娯楽じゃない、今見ても面白いということを若い人にも知ってもらいたい。だから、なにも特別なことをする気はなく、落語の原点に帰る気持ちで現代の新作を書いてるんです…と。
 するとナンチャンは大きく同意した。
「同じです!」
「え、なにが?」
「僕は今、狂言をやってるんです」
「ああ、そうですよねえ。知ってます」
 その少し前から、ナンチャンが狂言をやっているのは知っていた。
「自分たちはコントをやってるけど、コントの原点は何かなあと考えたら狂言だと思ったんです」 「あ、そうか」
 ナンチャンは「狂言も、古臭くて難しい芸能じゃない。現代の感覚でやれば、若い人が見ても面白い」というようなことを語って、最後に言った。
「落語と狂言と違ってるけど、お互いやってることは同じですね」
 つまり、「見ている方向は同じ」というわけだ。

「価値観が同じ」とか「見ている方向が同じ」とか、なんだか恋愛中のカップルや新婚夫婦みたいだが、オジサンたちにだって、そういうことはあるのだ。
 方向が同じなら、そのうち接点もできるだろう。

 

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藤井青銅

藤井青銅(ふじいせいどう)
23歳の時「第一回・星新一ショートショートコンテスト」入賞。これを機に作家・脚本家・放送作家となる。

書いたラジオドラマは数百本。腹話術師・いっこく堂の脚本・演出・プロデュースを行い、衝撃的デビューを飾る。最近は、落語家・柳家花緑に47都道府県のご当地新作落語を提供中。 著書「ラジオな日々」「ラジオにもほどがある」「誰もいそがない町」「笑う20世紀」「あなたに似た街」「【悲報】本能寺で何かあったらしい……光秀ブログ炎上中! 歴史Web2.0」…など多数。

藤井青銅著「ラジオにもほどがある」(小学館刊)
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