Jun 07, 2018

コラム

脱力エンターテインメント「駄美術」の世界

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 以前から知り合いのアーティストにふじわらかつひとさんという方がいる。音楽関係のアーティストではない。美術関係だ。造形作家とでもいうのだろうか? 現代美術のアート作品を作っている。ところがこれが、一筋縄ではいかない作風なのだ。
 なにしろ、一緒にやっている籠谷シェーンさんとのユニット名が「現代美術二等兵」で、その作品群に「駄美術」と名付けている。ネーミングセンスだけ見ても、ただものではない感が漂うではないか。

 HPによると、駄美術とは…
【制作費、完成度にこだわらず、見る人が楽しめる作品。お菓子の中に”駄菓子”があるように美術界にも”駄美術”があるのではと命名。絵画、彫刻、写真などジャンルは不問の脱力エンターテインメント】
 とある。たいへん嬉しくなる主旨で、ぼくなど、
「そうだ、そうだ!」
 と賛同する。
 彼らが作っているものは、たとえば…

〇3㎏や2㎏の鉄アレーに、民藝こけしの彩色をした『こけしアレー』
 …こけしを愛でるたびに腕の筋肉が鍛えられる! 文化系にも体育会系にも好まれる作品だ(どっちにも嫌がられる可能性もあるが)。

〇世界三大がっかり名所を一体にした『がっかりトルプル』
 …シンガポールの「マーライオン」、コペンハーゲンの「人魚像」、ブリュッセルの「小便小僧」が世界三大がっかり名所らしい。そこでこの作品はマーライオンの口から水を吐き、下半身は人魚ながら、なぜか前からはオシッコでやはり水を出している像。一か所で三回分がっかりできて、お得だ!(なのか?)

〇有刺鉄線で作った可愛いテディベアで『抱っこしてちょ』
 …フォルムは可愛いので、抱っこしたいのだが。

 とまあ、こういった作品群なのだ(文章で表すのはタイヘン難しい。ネットで検索して写真をご覧になっていただきたい)。どれもユーモアがあって、センスがあって、まさに「駄美術」。ぼくが大好きな作風なのだ。
 とはいえ、以前ふじわらさんと話した時、
「でも、『駄』ってついてると世間は価値がないと見るんで、高い値段がつけられないんですよ」
 と言っていた。
 なるほど。これが『ユースレス・アート』とか『アンチ・ポストモダンアート』などというもっともらしい名前だと、世間は必要以上に持ち上げたりもするのだろう。そういうことをやっている人は(美術界以外でも)結構いるが、
(そういうのってカッコ悪いよなあ)
 という思いで、あえて「駄美術」を名乗ってるんだと思う。そういう所も含めて、ぼくは好きなのだ。

 先日、彼の個展に行った。今回は「有刺鉄線しばり」で展示していて、いつもの有刺鉄線テディベア『抱っこしてちょ』の他に、
〇ビーチサンダルだが、その鼻緒部分が有刺鉄線になっていて、タイトルが『血のにじむリゾート』
〇有刺鉄線をぐるぐる巻きにして、野球ボールほどの大きさを作り、タイトルが『危険球』
 …などが展示されていた。並んだ作品を見ているだけで、「アイタタ…」と声をあげてしまう。ぼくは「イタ面白い」とネーミングした。
 画廊にはふじわらさんがいたので、久しぶりに話した。
「藤井さんの本、読みましたよ」
 と言ってくれる。
「作品作りながらオードリーのオールナイトニッポンも聞いてます」
 とも言ってくれる。なんていい人だ!

「前からずっと、ふじわらさんとは何か一緒に仕事したいとは思ってるんですが、接点がないんですよねえ」
「なにしろ、お互いジャンルが違いますから」
 ぼくの活動はおもに文章を書くこと。ふじわらさんの活動はおもに造形物を作ること。両者の仕事が交わる点がないのだ。
「お互い、見ている方向は同じなんですけどね」
 とふじわらさんは言った。

 その言葉でぼくは、以前ナンチャン(南原清隆)に言われたことを思い出した。

 

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藤井青銅

藤井青銅(ふじいせいどう)
23歳の時「第一回・星新一ショートショートコンテスト」入賞。これを機に作家・脚本家・放送作家となる。

書いたラジオドラマは数百本。腹話術師・いっこく堂の脚本・演出・プロデュースを行い、衝撃的デビューを飾る。最近は、落語家・柳家花緑に47都道府県のご当地新作落語を提供中。 著書「ラジオな日々」「ラジオにもほどがある」「誰もいそがない町」「笑う20世紀」「あなたに似た街」「【悲報】本能寺で何かあったらしい……光秀ブログ炎上中! 歴史Web2.0」…など多数。

藤井青銅著「ラジオにもほどがある」(小学館刊)
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