May 17, 2018

コラム

森山良子さんから聞いた、ムッシュかまやつさんのお墓参りで東北に行った時の話。

→前回までのコラムはこちら

 今回は、若い読者には「それ、なんのこと?」という話になりそうだけど、あえて書いてみます。すみません!

 先日のゴールデン・ウイーク、森山良子さんはプライベートで、ご親戚の方と一緒に東北へ旅行していた。ぼくは「オールナイトニッポンmusic10」という番組で毎週、森山さんと会っているので、その話は事前に聞いていた。
「ムッシュのお墓参りも兼ねてね」
 そう、ムッシュかまやつさんと森山良子さんはいとこ同士として有名。ムッシュは一年前に亡くなっていたからだ。

 このへんまではまだ、若い読者にも大丈夫でしょ? 登場人物も番組名もわかるはずだ。続けます。

 森山良子さんはその旅行の理由を語った。
「もちろん、東京にお墓はあるんだけど、ご先祖が青森の弘前なの」
 ムッシュのお父さんはティーブ・釜萢というジャズミュージシャン。アメリカ生まれの二世だが、そのご本家というかご先祖の釜萢家が青森・弘前だと言う。
 今、お名前辞典で調べると、釜萢という珍しい名字は青森に多いと出ている。

 大丈夫? この名前、わかるだろうか? だんだん不安になってきたが、そのまま続けます。

 お二人はとても仲のいいいとこ同士だとうかがっていたので、旅行の理由を聞いて納得した。
「へえ、そうなんですか。…この季節の弘前は、桜がきれいなんじゃないですか?」
「そう。だから、前からこの季節に行こうと、スケジュールを空けておいたの」
 なんて雑談をしていたら、隣で聞いていたディレクター(ぼくより年配)が、
「あ! それでですか?」
 と大発見をしたように叫んだ。
「なんです?」
「『エレクトリックおばあちゃん』の、あの『弘前のおばあちゃん』は、それだったんですね!」
 その言葉を聞いてぼくもまた、
「ああっ! あれはそうだったのか!」
 と大発見をしたように叫んだ。

 もうここまで来ると、ほとんどの方が「???」だろうけど、開き直って続けます。
 ムッシュかまやつは、GSのザ・スパイダースに在籍していた。このバンドに「エレクトリックおばあちゃん」(1970)という曲がある。田舎のおばあちゃんが意外にパワフルで先進的…というコミカルな内容。この手の曲は、先行してジャン&ディーンの「パサディナのおばあちゃん」(1964)があり、たぶんそれへのオマージュ。のちに、NHKみんなの歌で「コンピューターおばあちゃん」(1981)もある。
 その「エレクトリックおばあちゃん」という曲の中に「弘前のおばあちゃん~」という歌詞があるのだ。

 当時子供だったぼくは「面白い歌だなあ」と思って聞きながら「なんで弘前なんだろう?」と疑問に思っていた。そういう地方都市のおばあちゃんを歌うのなら、イメージとしては弘前でも福島でも金沢でも熊本でも…メロディにはまる四文字であればどこでもいいからだ。
 とはいえ、そうたいした疑問でもないので、その後すっかり忘れていた。ところがこの時のディレクターによる一言で、かつての記憶が一瞬によみがえり、
「スパイダース…ムッシュかまやつ…森山良子…弘前…釜萢家へのお墓参り…弘前のおばあちゃん」
 と、単語が連想ゲームのようにパッパッパッとつながり、
「あの『弘前のおばあちゃん』は、ムッシュのおばあちゃんのことだったのか!」
 と何十年ぶりかに納得したのだった。

 もう一つ。3年前にNHK‐FMの「クロスオーバーイレブン」を書いた時も、
「あれはそうだったのかあ!」
 と叫んだことがある。

 

お知らせ

『「日本の伝統」の正体』

藤井青銅(著)/柏書房

★「初詣」は江戸時代になかった? ★「江戸しぐさ」のいかがわしさ ★神前結婚式は古式ゆかしくない ★「古典落語」は新しい? ★恵方巻は、本当はいつからあったのか? ★アレもコレも「京都マジック」! ★初めて「卵かけご飯」を食べた男とは? ★サザエさんファミリーは日本の伝統か? ……一見、古来から「連綿と続く伝統」のように見えるしきたりや風習・文化。しかし中には、意外に新しい時代に「発明された伝統」もある。もっともらしい「和の衣裳」を身にまとった「あやしい伝統」と、「ほんとうの伝統」とを対比・検証することで、本当の「ものの見方」が身につく一冊。 フェイクな「和の心」に踊らされないための、伝統リテラシーが磨かれる!

 

saydo_cover_170330

『幸せな裏方』

藤井青銅(著)/新潮社

otoCotoで連載中のコラム『藤井青銅の「この話、したかな?』が書籍化! 好評発売中です。


■電子書籍で購入する

Reader Storeはこちら

ブックパスはこちら

 

■紙版で購入する

藤井青銅

藤井青銅(ふじいせいどう)
23歳の時「第一回・星新一ショートショートコンテスト」入賞。これを機に作家・脚本家・放送作家となる。

書いたラジオドラマは数百本。腹話術師・いっこく堂の脚本・演出・プロデュースを行い、衝撃的デビューを飾る。最近は、落語家・柳家花緑に47都道府県のご当地新作落語を提供中。 著書「ラジオな日々」「ラジオにもほどがある」「誰もいそがない町」「笑う20世紀」「あなたに似た街」「【悲報】本能寺で何かあったらしい……光秀ブログ炎上中! 歴史Web2.0」…など多数。

藤井青銅著「ラジオにもほどがある」(小学館刊)
→電子書籍版

プロフィール詳細を隠す表示する

この記事が気に入ったらクリック

SNSでシェア

このエントリーをはてなブックマークに追加