Mar 08, 2018

コラム

藤井青銅のショートショートの作り方

→前回までのコラムはこちら

 前回のコラムで、『松田聖子・夢で逢えたら』という番組(週一回・30分番組)のことを書いた。それで思い出したことがある。
 あの番組では、毎週一本オリジナルのショートショートを書いた。ぼくが「星新一ショートショートコンテスト」出身なので、ディレクターは企画段階で、
(きっとショートショートが大好きで、これまでにいっぱい習作を書いてきたんだろう)
 と思ったに違いない。

 ところが、そのディレクターにも、そして星さんにも申し訳ないが、実はぼくはそれまで、あんまりショートショートを読んでこなかった。もちろん人並みに何冊かは読んでいる。けれど、他人に誇れるほどではない。
 しかし、新人としては、
「毎週ショートショートを書ける?」
 と問われて、
「書けます!」
 と答えざるをえないではないか。

 かくして、それから大変な毎日が始まった。放送台本は、当時はペラ(200字原稿用紙)で書いていたので、毎回10枚~11枚(時間にして、6~7分)。分量としてはたいしたことないが、毎週となると大変だ。
 当時ぼくは、喫茶店に行って、まず星新一の文庫本を読むところから始めた。読みながら、「なるほど、こういうオチのパターンがあるな」とか「このキッカケは使えそうだ」などと感心し、分析して、メモをとる。こうやって、しだいに自分の頭の中を「ショートショート脳」に洗脳していくのだ。その上で、自分の原稿を考える。
 だいたい喫茶店を三軒はしごして、一本書ければ、うまくいった方。アイデアが浮かばないともう一軒。さらに翌日、同じことを繰り返すケースも、よくあった。

 こうやって週に1~2冊はショートショート集を読む。さいわいに星さんの文庫本はたくさんあったが、こんな生活を2年も続ければ、ほどなく読みつくしてしまう。さらに別の作風も学んだ方がいいので、眉村卓、都築道夫、F・ブラウン、H・スレッサー…といった方々のショートショート集も片っ端から読んだ。
(ちなみに、星さんはよくF・ブラウンにたとえられるが、ぼくはご本人から、「私はブラウンに影響を受けたと言われることがあるけど、どちらかというと影響を受けたのはスレッサーです」と聞いていた。)

 もちろん読んだお話の大半は忘れてしまっているのだが、心の底に積み重なった「アイデアの澱」のようなものを使って、自分の原稿を書く。しかしショートショートというのはアイデア勝負のような一面もあるので、書きながら、
「あれ? こんな話、前に誰かの作品になかったか?」
 と不安になることもあった。ぼくに盗作の誘惑はないのだが、過去に読んだものを忘れていてそれが自分のアイデアだと錯覚してしまう危険性は、あったからだ。

 その『松田聖子・夢で逢えたら』というのはニッポン放送の番組だった。一方でぼくは、当時『チャレンジ名作ライブラリー』という番組も月に一回のペースで担当していた。こっちは文化放送。パーソナリティーは最初松本伊代ちゃん、途中から冨田靖子ちゃんに代わった(当時のことだから、ちゃん付けにしてみました)。
 なんの関係もないこの二つの番組だが、ある時ぼくが、
「え!?」
 と驚いた出来事があった。

 

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藤井青銅

藤井青銅(ふじいせいどう)
23歳の時「第一回・星新一ショートショートコンテスト」入賞。これを機に作家・脚本家・放送作家となる。

書いたラジオドラマは数百本。腹話術師・いっこく堂の脚本・演出・プロデュースを行い、衝撃的デビューを飾る。最近は、落語家・柳家花緑に47都道府県のご当地新作落語を提供中。 著書「ラジオな日々」「ラジオにもほどがある」「誰もいそがない町」「笑う20世紀」「あなたに似た街」「【悲報】本能寺で何かあったらしい……光秀ブログ炎上中! 歴史Web2.0」…など多数。

藤井青銅著「ラジオにもほどがある」(小学館刊)
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