Feb 13, 2018

コラム

ハイヒール、チュート徳井さん、レギュラー出演者とのやりとり?!

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 大阪のABCに着いて、楽屋に案内される。もうそれだけで落ち着かない。根がスタッフなので、スタッフ控室の方がどれだけ気が楽か。
 今回は完全アウェイだと気づいてから決めていたことがあった。
「MCに、ご挨拶を」
 というもの。これは、ぼくが知ってる本番前には普通のことだ。ハイヒールのお二人は芸歴が長い。かつて「お笑い第三世代」と呼ばれた方々の一組だ。「ぼくは、同じ世代のウッチャンナンチャンとはよく仕事をしましたけど、ハイヒールのお二人とは縁がなかったです」という挨拶をしておけば、多少は距離が縮まるという計算だ。
 しかしADさんは答えた。
「あ、しなくていいです」
 いきなり出端をくじかれてしまった。
「ウチの番組にそういう風習はないんです」なのか「そんなタレントっぽいことしなくていいです」なのか、理由はわからない。しかし、しなくていいと言われたことを無理にするわけにはいかない。
「…あ、そうですか」
 ぼくはシュンとして、一人楽屋で出番を待つ。

 やがてスタジオに呼び込まれる。スタジオのあの薄暗い空間に入ると、ほっとした。これは大阪だろうと東京だろうと同じで、馴染みのある空間だ。すでにトークセットに照明は入っているが、出演者はまだいない。ADさんは「椅子へどうぞ」と言ってくれたたが、「いえ、立ってる方が落ち着くんです」「あはは。スタッフだからですか」と会話を交わし、ややほぐれてくる。
 ここまで、ぼくはレギュラー出演者の誰ともお会いしていない。
(はは~ん、出演者がスタジオに入ってきたところで、「今日のゲストさんです!」と、全員にまとめて紹介があるんだな。そういうやり方か)
 と思っていた。これも、ぼくが知っている段取りだ。

 ところが、やがて出演者がぞろぞろ入ってくると、全員さっさとトーク席につく。そしてわずか数分後、「はい本番です!」とカメラが回り始めたのだ。これにはビックリした。
 まあ、13年もやっている番組だ。スタッフの気心は知れているのだろうが、この段取りの簡単さはどうだ。ちょっとしたカルチャーショックだった。
 番組は、本日のテーマVTRが流れたあと、ゲスト登場となる。まったくその段取り通りに、ぼくはセットに呼び込まれた。ここで初めて、みなさんに「藤井です。よろしくお願いします」と挨拶するわけで、みんなに「何者だ、こいつ?」と思われやしないかと気が気じゃない。

 MC席のハイヒールさんの隣に座った時に「はじめまして」と挨拶。ぼくはいそいで早口で「第三世代ですよね。ぼくはウンナンと…」という、例の距離を縮めるトークをする。もっとも、ハイヒールのお二人は気を使ってくれ、リンゴさんは、
「私らのマネージャーが藤井さんのファンですねん(※大阪弁はぼくの記憶です。たぶん正しくありません。以下も同様)」
 と言ってくれる。
「え? ぼくのこと知ってるんですか?」
「ラジオやってはるんでしょ?」
「いま何を?」
 とチュートリアル徳井さんもからんでくれる。
「オードリーです」
 リンゴさんは、
「たしか昔、伊集院さんを?」
「ええ、やってました」
「マネージャーはそれで知ってるみたいで、『藤井さん来るんですか。行けたら会いたいなあ』と言うてました」
「嬉しいです。でも、来てないんですよね?」
 ぼくとしてはギャグのつもりで言ったのだが、スタジオはシラーっとなってしまった。
(や、やばい…)

 まあ、このやりとりはオンエアではカットされているだろうが、本番が始まると、さすが関西の番組らしく丁々発止のやりとりが楽しいスタジオ展開となった。
(ああ。このアットホームさなら、わざわざ本番前に挨拶をする必要もないのか)
 と納得したのだった。
ビーバップ! ハイヒール」。15日放送予定とか、よかったらご覧ください。

 ぼくが完全アウェイなのを気にして、終始そばにいて話し相手になってくれたADのNさん、担当DのYさん、ありがとうございました。

 

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藤井青銅

藤井青銅(ふじいせいどう)
23歳の時「第一回・星新一ショートショートコンテスト」入賞。これを機に作家・脚本家・放送作家となる。

書いたラジオドラマは数百本。腹話術師・いっこく堂の脚本・演出・プロデュースを行い、衝撃的デビューを飾る。最近は、落語家・柳家花緑に47都道府県のご当地新作落語を提供中。 著書「ラジオな日々」「ラジオにもほどがある」「誰もいそがない町」「笑う20世紀」「あなたに似た街」「【悲報】本能寺で何かあったらしい……光秀ブログ炎上中! 歴史Web2.0」…など多数。

藤井青銅著「ラジオにもほどがある」(小学館刊)
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