Jan 11, 2018

コラム

オードリーがメインパーソナリティーを務めたニッポン放送「ミュージックソン」裏話 萩本欽一 編

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 クリスマスに、24時間放送の「第43回ラジオチャリティー・ミュージックソン」を放送した。今回のメインパーソナリティーはオードリー。年が明けたが、いまだから書けるその時の裏話をいくつか記録しておこう。
 長時間番組の場合、当然いくつかポイントになる企画やコーナーがある。今回、ぼくが「ここは注目だな」と思って構成していたパートは、何ヵ所かある。

◎「コント55号のネタ全部ください」
 ラジオチャリティー・ミュージックソンは萩本欽一さんで始まった。1975年のことだ。以来4年連続、萩本さんが一人で24時間パーソナリティーをつとめている。翌年からは、萩本欽一&研ナオコさんのコンビで7年間。
 メインパーソナリティーを降りても、萩本さんは毎年のミュージックソンにゲストとしてやってきてくれる。ニッポン放送としても当然来てもらいたい。そりゃこの企画は萩本さんで始まったのだから、当然だ。

 7年前、オードリーが初めてミュージックソンのパーソナリティーをやった時もゲストにお迎えした。が、この時オードリーは移動中の車の中からの中継だった。だから掛け合いはしたけれど、直接会っていない。今回が初対面になるのだ。

 ところが、この芸人としてもミュージックソン・パーソナリティーとしてもオードリーの大先輩にあたる萩本さんを、若林さんは「欽ちゃん」ではなく、あえて(誰も呼ばない)「萩ちゃん」と呼ぶ…という暴挙に出た。
 さらにその上、
「コント55号のネタ、全部オードリーにください」
 とまで言い出したのだ。
 一瞬、副調整室に居並ぶニッポン放送上層部の空気が凍った。

 実は、これには伏線があった。
 若い世代には、萩本さんは「欽どこ」を代表とするファミリー的笑いのイメージしかないと思う。オードリーにとってもそうだ。しかしぼくたち少し古い人間は、その前の「コント55号」時代の過激な笑いを知っている。芸人・萩本欽一の原点はそこだと知っているのだ。なので折に触れ、若林さんには、「コント55号のコントを見てごらん」と勧めていた。
 コントと漫才とスタイルは違えど、《ソフトな外見だけど狂気を持つ意地悪+ガタイのしっかりした不器用な常識人》という構図には共通点がある。それに、萩本さんは東京・下谷の生まれ、若林さんは東京・築地(実際は隣町らしいが)の生まれ…と共に東京下町育ちの感性も似ている、と思ったからだ。
 それからしばらく後、若林さんは過去のコント55号のコントをほとんど見たようで、萩本さんへの認識をあらためたようだった。その上で、
「コント55号のネタは、全部オードリーでできそうだ」
 と感想を述べた。
 それだけリスペクトした上での「萩ちゃん」発言であり、「コント全部ください」発言だったのだ。

 もちろん萩本さんはそういった事情は知らなかっただろうが、さすがに天才は天才を知るで、若林さんの暴挙を楽しそうに面白がり、はては春日さんに対し、
「お前も、萩ちゃんて呼べよ!」
 と言い出す始末。さらに、
「お笑いはパクっていいの。ネタ全部あげる」
 とまでシャレで答えてくれた。
 近年は大御所として持ち上げられることが多く、こんな風に若手にいじられることは少ない。なので、コメディアンとしての血が騒いだのだろう。ニッポン放送の上層部の心配を尻目に、萩本さんご本人は実に楽しそうだった。それを見て、上層部もほっと胸をなでおろしたようだった。

 後日マネージャーさんから聞いた話。なにかの席で、萩本さんの事務所の社長とオードリーの事務所の社長が会った時に、
「ネタは全部あげちゃったみたいなので、今度オードリーでコント55号のネタをやるイベントでもやらなきゃいけないですなあ」
 と談笑したという。さすがシャレのわかる大人たちだ。カッコいい!
 ぼく個人としても、ぜひそういう舞台を見てみたい。

◎山里亮太との超高速ラリー
 次のポイントは、南海キャンディーズの山里さんをゲストに迎えたゾーンだった。

 

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藤井青銅

藤井青銅(ふじいせいどう)
23歳の時「第一回・星新一ショートショートコンテスト」入賞。これを機に作家・脚本家・放送作家となる。

書いたラジオドラマは数百本。腹話術師・いっこく堂の脚本・演出・プロデュースを行い、衝撃的デビューを飾る。最近は、落語家・柳家花緑に47都道府県のご当地新作落語を提供中。 著書「ラジオな日々」「ラジオにもほどがある」「誰もいそがない町」「笑う20世紀」「あなたに似た街」「【悲報】本能寺で何かあったらしい……光秀ブログ炎上中! 歴史Web2.0」…など多数。

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