Jan 09, 2018

コラム

築地生まれのオードリー・若林が作るもんじゃ焼き

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 普通、タレントさんと番組スタッフが一緒の食事会で、それが鍋料理やお好み焼きなどの場合、「料理を作る作業」はスタッフが行う。当たり前だ。ところが、オードリーのオールナイトニッポンの場合は、お好み焼き・もんじゃ焼きを、オードリーの二人が作るのだ。ぼくたちスタッフはな~んにもしない。ただ、作ってもらって、一緒に食べるだけ。
「失礼じゃないか」
 と言われれば、そうだ。間違いなく、タレントさんに失礼だ。
(でも、二人は結構楽しんで鉄板をカチャカチャやってるから、いいんじゃないの?)
 というのがみんなの意見。ついでに言えば、
(だって作るの面倒だし)
 というぼく個人の意見もある。

 十数人の参加者に、二つの鉄板を囲む。当然、若林さんがコテを持つ「若林鉄板」と、春日さんがコテを持つ「春日鉄板」になる。ぼくは若林鉄板にいた。彼が手際よく作るもんじゃ焼きを眺め、それを食べ、
(うまい!)
 と思った。ぼくは東京生まれではないので、実はこれまで、もんじゃ焼きを特においしいと思ったことはない。ところが、これがうまかったのだ。生まれて初めて、もんじゃ焼きをおいしいと思った。

 そして翌年。また、同じ店での新年会。ぼくは再び、若林鉄板グループに入った。そして彼が作った、もんじゃ焼きを食べた。
(うまい!)
 これが去年だけなら、たまたま、ということもある。が、二年連続でうまいというのは、間違いなくおいしいわけだ。

 さらに翌年。またもや同じ店での新年会。やっぱり若林さんが作るもんじゃ焼きはうまい。とはいえ、そもそもこの店がうまいのかもしれない。試しに、隣の鉄板で春日さんが作るもんじゃ焼きを食べてみた。…これが、普通の味なのだ。明らかに、若林鉄板での味と違う。ということは、料理人の腕の違いだ。そう思って、気をつけて見ていると、若林さんはソースを入れるタイミングがちょっと違っている。
 しかしぼくだけの味覚かもしれないと思い、他の人にも食べ比べてもらった。すると、
「あ、若林鉄板の方がおいしい!」
 という感想だった(春日さんには申し訳ないが)。

 以上の経緯を若林さんに説明し、
「ぼくがこれまでうまいと思ったもんじゃ焼は、若林さんが作ったものだけ」
 と言った。これはヨイショでも、オベンチャラでもない。
 若林さんは東京・築地生まれ(実際は築地の隣り町あたりらしいが、そう言っても全国の人はわからないので「築地生まれ」と言うことにしている)。
「ガキの頃からもんじゃを食ってたから、褒められると嬉しい」
 と素直に喜んでくれた。
 なのでぼくは、「もんじゃのマサ」(若林正恭だから)と呼ぶことにしている。本人も、まんざらでない様子だ。

 以来ぼくの中で、オードリー・若林という人は、
《もんじゃとトークがうまい人》
 という認識だ。両者になにか関連性があるのだろうか? 
 そこらへんの秘密が解明されると、フリートークの技術に四苦八苦している若手お笑い芸人たちは、いっせいにもんじゃ焼のテクを磨き始めるかもしれない。

 

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藤井青銅

藤井青銅(ふじいせいどう)
23歳の時「第一回・星新一ショートショートコンテスト」入賞。これを機に作家・脚本家・放送作家となる。

書いたラジオドラマは数百本。腹話術師・いっこく堂の脚本・演出・プロデュースを行い、衝撃的デビューを飾る。最近は、落語家・柳家花緑に47都道府県のご当地新作落語を提供中。 著書「ラジオな日々」「ラジオにもほどがある」「誰もいそがない町」「笑う20世紀」「あなたに似た街」「【悲報】本能寺で何かあったらしい……光秀ブログ炎上中! 歴史Web2.0」…など多数。

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