Dec 07, 2017

コラム

大瀧詠一さんから突然送られてきたものとは?

→前回までのコラムはこちら

 毎年、年末が近づくと大瀧詠一さんのことを思い出す。そういえばあの時、ひどくビックリしたのを、思い出した。

 どんなジャンルにせよ、パロディというのは元ネタがよく知られていないと成立しない。たとえば…

〇春はあけぼの やうやう白くなりゆく山際 少し明かりて……

 …となると「枕草子」だ。誰でも知っている。ひょっとしたら知らない人もいるかもしれないが、それは「知らない方に問題がある」と言っていいレベルの常識的知識だ。
 あるいは…

〇吾輩は猫である。名前はまだない。

 もちろん、これは漱石。タイトルと冒頭の文章が同じなので、さらに常識感が増す。
 海外の作品だと…

〇生きるべきか死ぬべきか、それが問題だ。

 シェークスピアの「ハムレット」だ。冒頭ではないが、有名なセリフだ。
 いちおう断っておくが、どの作品も、全体を読んだかどうかは関係ない。内容を知っていなくてもいい。ただ、そのフレーズをどのくらいの人が知っているか、ということだけだ。
 以上はパロディの元ネタとして、牛肉でいえばA5ランクだ。その下にはA4、A3…、あるいはB5、B4…といったものが続く。再び断っておくが、これは作品内容のレベルではない。どれくらいの人が知っているか、というレベルでの分け方だ。

 小説でもドラマでも、ぼくにはパロディ的作品が多い。好きなのだ。パロディで大切なのは、「自分の常識と世間の常識とは違う、という認識」だと思っている。いくらぼくがよく知っていることでも、世間ではあまり有名でないことがある。その逆もある。
 さらに、昔は誰でも知ってる基礎知識だったが、今の若者は知らないだろうなあ、というものもある。逆もある。認知度には世代間格差があるのだ。
 また、一般人の間では10%くらいしか知られていないが、マニアの間では100%知られている…というケースもある。グループ格差もあるのだ。
 ぼくは、それらをA5、A4…、B5、B4…と段階に分けて認識している。じゃあ、一般的な認知度が低いBランクのものは使えないのかというと、そういうわけでもない。
「ここは一部の人だけに通じればいい」
 という使い方もあるからだ。適材適所だ。一概にA5ランクが最高級だとは言えない。料理方法によって、B4ランクのモノだって、とてもおいしくなることがあるのだ。

 …だんだん、パロディの話をしてるのか、牛肉の話をしてるのかわからなくなってきた。どっちだ? 牛肉だ。いや、パロディだ。

 パロディとオマージュというのは、まあ親戚みたいなものだ。大瀧さんの音楽は、過去の音楽を元ネタにしたオマージュの手法が多いことが、よく知られている。ジャンルは違えど、ぼくの仕事を面白がってくれたのはそのせいではないか…と思っている。

 さて、ぼくが書いて、全編パロディにまぶして大瀧さんのアルバムを紹介した特番「EACH TIMEのオールナイトニッポン」は1984年に放送された。今回思い出したのは、その時のことではない。それからずっとのち…、二十年もたって突然、大瀧さんがその放送テープ(2時間)を1時間に編集したものを、ぼくに送ってきた時のことだ。
 ぼくはビックリして、
「よく持ってましたね?」
 とメールした。すると、大瀧さんの返事は……

 

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藤井青銅

藤井青銅(ふじいせいどう)
23歳の時「第一回・星新一ショートショートコンテスト」入賞。これを機に作家・脚本家・放送作家となる。

書いたラジオドラマは数百本。腹話術師・いっこく堂の脚本・演出・プロデュースを行い、衝撃的デビューを飾る。最近は、落語家・柳家花緑に47都道府県のご当地新作落語を提供中。 著書「ラジオな日々」「ラジオにもほどがある」「誰もいそがない町」「笑う20世紀」「あなたに似た街」「【悲報】本能寺で何かあったらしい……光秀ブログ炎上中! 歴史Web2.0」…など多数。

藤井青銅著「ラジオにもほどがある」(小学館刊)
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