Nov 09, 2017

コラム

歴史あるニッポン放送の24時間番組『ミュージックソン』の話1

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 ぼくが放送の仕事を始めた最初の年の、12月。ニッポン放送の方に言われた。
「ウチは、クリスマスイブには毎年、ミュージックソンというのをやってるんだ」
「なんですか、それ?」
「24時間のチャリティー放送だ」
「へえ~。日本テレビの24時間テレビみたいなものですか?」
「いや、ウチの方が先なんだよ」

 知らないこととはいえ、たいへん失礼な質問をしてしまった。が、いまこれを読んでいる多くの方も、そうではないだろうか? 
 のちに知った両者の関係を、簡単に書いておこう。

 1975年。ニッポン放送を中心にしたラジオ局ネット(初年度は札幌・STVラジオ、福岡・九州朝日放送との三局)で、クリスマスイブのお昼から翌日にかけての24時間放送のチャリティー番組がスタートした。ミュージック(音楽)とマラソン(長時間放送)を合わせた造語で「ミュージックソン」と名付けられた。
 主旨は「目の不自由な方に、音の出る信号機を贈ろう」というもの。あの、♪通りゃんせ~ などの音が出る信号機のことだ。音だけのメディアであるラジオとして、これはわかりやすく、納得できるコンセプトだと思う。24時間パーソナリティーは、萩本欽一さん。当時、大人気番組「欽ちゃんのドンといってみよう(欽ドン!)」をやっていたからだ。
「ん? 欽ちゃんで? 24時間の? チャリティー番組? …なんだかとてもよく似てるなあ」
 と思う方は多いだろう。

 日本テレビの伝説的名プロデューサー井原高忠さんに『元祖テレビ屋大奮戦!』という本がある。この中に、日テレで24時間のチャリティー番組をやろうと企画した当時のことが書かれている。これが、わかりやすくて、とても面白い。

《僕としては、これをやれるのは萩本欽一しかいない、と断言した。》
《だけども、欽ちゃんは、その数年前から、恒例としてクリスマスにLF(ニッポン放送)でラジ・ソンをやってるのよ。そこで、まずLFに行って、お願いをしてこなくてはいけない。》

 というわけで、井原さんは、当時のニッポン放送の石田達郎社長の所にいく。

《…土下座して頼んだ。「もう、お願いします」の一点張り。ラジオとテレビは違うんだからって。》

 ちなみに、この「土下座」は、たぶん比喩。そういう美学の方ではないから。それに、両者は以前からよく知っている仲、と書いてある。でも、いくら頼んでも、

《…その時はとうとう「うん」って言わなかった。しかし、「いや」とも言わなかった。いやってさえ言わなきゃやっちゃうんだよ、そうなれば。》

 このへん、民間放送第一世代同士の、バイタリティーあふれ、かつアウンの呼吸が垣間見えて、面白い。それに、チャリティー企画そのものは悪いことではなく、いくらあってもいいわけだし。

《次は、欽ちゃんをくどく番。欽ちゃんだってかなりな難色を示したよ。LFに対してすまないことだし。それをもう、欽ちゃんじゃなきゃダメだからとくどきにくどいた。》

 こうして、日本テレビの「24時間テレビ」は、1978年の夏からスタートする。万事テレビの方が派手だから、一般にはこっちの方を先に知る方が多いわけだ。かつてのぼくもそうだった。
 だが、さらに言うと、このラジオ・チャリティー・ミュージックソンの九ヶ月前(1975年3月)、近畿放送(現KBS京都)で「宮城まり子のチャリティーテレソン」という番組が実施されている。これはテレビ番組。ローカル放送局なので知名度は低いが、24時間チャリティー番組としては、これが日本初だ。

 一応書いておくけれど、どっちが先だとか、ラジオだテレビだということは、記録としては大事だが、それによって優劣がつくわけではない。誰かが誰かを思いやる企画は、いつどこで誰がやっても意義がある。

 それからぼくは、色々な形でラジオ・チャリティー・ミュージックソンを手伝っていくのだが、中にはずいぶん妙な企画もやった(あ、ぼくがかかわるから、妙になってしまうのか…?)。

 

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藤井青銅

藤井青銅(ふじいせいどう)
23歳の時「第一回・星新一ショートショートコンテスト」入賞。これを機に作家・脚本家・放送作家となる。

書いたラジオドラマは数百本。腹話術師・いっこく堂の脚本・演出・プロデュースを行い、衝撃的デビューを飾る。最近は、落語家・柳家花緑に47都道府県のご当地新作落語を提供中。 著書「ラジオな日々」「ラジオにもほどがある」「誰もいそがない町」「笑う20世紀」「あなたに似た街」「【悲報】本能寺で何かあったらしい……光秀ブログ炎上中! 歴史Web2.0」…など多数。

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