Sep 12, 2017

コラム

ウンナン音楽番組のオチの話

→前回までのコラムはこちら

「内村さんちと南原さんちの国民的音楽祭」という特番で、うじきつよしさんがバンドを率いて演奏し、歌うパートがあった。ナンチャンや他の出演者もバンドに参加し、一緒に盛り上がる。曲のエンディングは、うじきさんのギターソロで終わる…はずなのだが、うじきさんは自己陶酔し、いつまでもギターのアドリブ・フレーズをギュイィィィィ~~~ン…と弾き続ける。

 やがてメンバーとナンチャンたちは、たまらず、うじきさんを囲んで詰め寄る。ようやく、ハッと気がついたうじきさん、ギターを止める。メンバーは睨みつけ、咳払いなどする。ややあって、うじきさんはカメラ目線で、
「ガチョ~~~ン!」
 するとバンドメンバー全員がハラホロヒレハレと崩れ落ち、さらに周囲からは番組スタッフたちもハラホロヒレハレとなだれ込んでくる。…という、懐かしの定番。
 子供の頃よくテレビで見てきたシーンだが、今回はぼくもスタッフだ。つまり、なだれ込むスタッフの一員としてハラホロヒレハレができる!

 当日スタジオに行くと、プロデューサーに、
「土居センセイを呼んでおいたから」
 と言われ、驚いた。
 もちろん、土居甫さんだ。振付師として有名で、ピンク・レディーなどの振り付けでおなじみ。かつて、「シャボン玉ホリデー」で元祖ハラホロヒレハレに参加していた方だ。さらに、ここは日本テレビだ。ガチョ~ン&ハラホロヒレハレの時は、カメラがぐわぁんぐわぁんぐわぁん……と揺れるのがキマリなのだが、
「今日は、当時シャボン玉でカメラを揺らしていたカメラマンの方だから」
 と言われ、さらに驚いた。
(大丈夫だろうか、ここんトコ? ハラホロとかガチョンとかシャボン玉とか、若い方には意味不明の言葉が並んでいるのではないか? わからない方はネットで調べる…もしくは、雰囲気で読んでいただくしかない)

 その収録時に、発見があった。
 うじきバンドの演奏を、ぼくたちスタッフ十数人は遠巻きに囲んで見ている。エンディングでの、ハラホロヒレハレなだれ込み要員だ。
 やがて曲は後半に入る。ところが、やはり我々は表方の人間ではなく、裏方なんですね。カメラに映ってはいけないという意識があるから、遠巻きの輪がやや外側なのだ。しかも「これからなだれ込む」ということにビビって、一歩後ろに引いたりする。
 すると、土居センセイは我々の外周を回って歩き、あちこちでスタッフたちの背中を押して一歩、二歩…と前に進めるのだ。右に、左にと周囲を回り、全員の立ち位置を、カメラに映らない所までじりじりと前に押し出していく。もちろんぼくの背中も押されたのだが、
(ああ、さすがだなァ。そうか、いざとなるとビビるスタッフたちを、こんなふうにいつも追い込んでいたのか。たしかに、できるだけ近くにいた方がフレームになだれ込むストロークが短くて、テンポがよくなるもんな)
 と感心した。

 そしてエンディング。えんえんギターを弾き続けてたうじきさんがハタと気がつき、
「ガチョ~~~ン!」
 とやった時、土居センセイは「それっ!」とスタッフたちの背中をたたく。ぼくたちはハラホロヒレハレ…となだれ込む。その様子を、カメラがぐわぁんぐわぁんぐわぁん……と揺れて撮った。

 後日、編集をすませたディレクターに、
「藤井さん、嬉しそうにハラホロヒレハレしてましたよ」
 と言われ、照れくさかった。

 繰り返すが、あの特番は直前のアクシデントで台本を書き替えて大変だったはずだが、その記憶はほとんど残っていない。土居センセイに背中を押してもらってハラホロヒレハレができ、それをシャボン玉当時のカメラマンさんに撮ってもらえた…という楽しい記憶しか残っていないのだ。
 すべて記憶とはそういうものだ。だから人は、大変なことだってできるのだろう。

 

お知らせ

saydo_cover_170330

『幸せな裏方』

藤井青銅(著)/新潮社

otoCotoで連載中のコラム『藤井青銅の「この話、したかな?』が書籍化! 好評発売中です。


■電子書籍で購入する

Reader Storeはこちら

ブックパスはこちら

 

■紙版で購入する

藤井青銅

藤井青銅(ふじいせいどう)
23歳の時「第一回・星新一ショートショートコンテスト」入賞。これを機に作家・脚本家・放送作家となる。

書いたラジオドラマは数百本。腹話術師・いっこく堂の脚本・演出・プロデュースを行い、衝撃的デビューを飾る。最近は、落語家・柳家花緑に47都道府県のご当地新作落語を提供中。 著書「ラジオな日々」「ラジオにもほどがある」「誰もいそがない町」「笑う20世紀」「あなたに似た街」「【悲報】本能寺で何かあったらしい……光秀ブログ炎上中! 歴史Web2.0」…など多数。

藤井青銅著「ラジオにもほどがある」(小学館刊)
→電子書籍版

プロフィール詳細を隠す表示する