Dec 16, 2016 news

15年連れ添ってきた代表作との別れ
ミラ・ジョヴォヴィッチの胸中や如何に

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コラム 佐々木誠の『映画記者は今日も行く。』第19回

『バイオハザード:ザ・ファイナル』のワールドプレミアイベントが12月13日、六本木ヒルズアリーナで行われた。

イベントには、ポール・W・S・アンダーソン監督、出演のミラ・ジョヴォヴィッチ、ローラ、アリ・ラーター、オーエン・マッケン、ウィリアム・レヴィ、イ・ジュンギ、エヴァ・アンダーソンが出席した。

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「私と仕事するの好きだったはずなのに・・・」

そう寂しげに語るのは、ハリウッド女優のミラ・ジョヴォヴィッチ。

ミラの代表作というと、やはり『バイオハザード』シリーズの【アリス】役だろう。 本作は、日本が世界に誇る大人気ゲーム「バイオハザード」を実写映画化し、2002年の第1弾公開から、第6弾となる今回のファイナルまで、長きにわたりヒットを飛ばし続けてきた作品だ。

その中で、主人公の【アリス】を演じているミラだが、実際のゲームの中にはそんなキャラクターは存在せず、映画オリジナルのキャラクターでもある。しかし、映画第1弾でミラが体現してみせた、力強い女戦士【アリス】の姿に誰もが興奮し、「バイオハザード」のコアなゲームファンも納得せざるを得ないほどの、セクシーさとカッコよさであった。

それからというもの、[バイオ=アリス]という図式が定着し、逆にゲームの中に【アリス】が出てこないことが不自然な気もするくらい、その存在は当たり前のものになっていった。

“セクシーでカッコよく”と言えば、この日行われたワールドプレミアイベントに出席したミラの衣装に会場の目は釘付けになっていた。何と表現したらいいか分からないが、とにかくほぼ裸に近い衣装だった。 ガタガタと震える報道陣をよそに、冬の寒さを微塵も感じさせず、集まった大勢のファンにアクセル全開でサービスするミラの姿を見た時、会場の誰もがこう思ったはずだ。

「セクシーでカッコいい」

そこに、女優としてのプロ根性を見た。

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一方、女優としてではなく、一人の女性としてミラを見た時、夫の存在は欠かすことができない。『バイオハザード』シリーズの監督を務めるポール・W・S・アンダーソンだ。 2人は同シリーズを通じて知り合い、2009年に結婚した。現在は2人の子宝にも恵まれ、幸せいっぱいの様子のミラだが、ワールドプレミアのステージでは、そんな夫ポールに対し、ある文句を言い放っていた。

「今回でファイナルとなってしまい、とても悲しいです。ポールに対して怒りを感じているの。私と仕事するの好きだったはずなのに・・・」

まぁ、これは文句というよりも、15年もの間、共に歩んできた【アリス】との別れを惜しむ、ミラの心情を表した言葉であろう。

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また、この日のイベントには、愛娘であるエヴァ・アンダーソンも参加することになった。実は今回で“2度目”の来日ということなのだが、2007年に初来日した時は、何とまだミラのお腹の中にいたのだった。そのエヴァもすくすくと成長し、本作では、メインコンピュータの【レッドクイーン】役を務めている。

レッドカーペットでは、ファンに対して丁寧にサインや写真撮影に応じていたエヴァ。ステージに上がると「また戻って来られて嬉しいです(笑)。日本はプリティで、スーパーカワイイ国だと思います!」と、元気いっぱいに笑顔を振りまいていたのであった。

アンダーソン一家はとても仲が良く、3人ともノリノリで終始笑顔が絶えなかった。この家族にファイナルは訪れてほしくないと、心からそう思ったものだ。

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さらに、ファイナルとなった本作には、日本でモデルやバラエティタレントとして活躍するローラも、女戦士【コバルト】役として出演しており、華々しくハリウッドデビューを飾っている。

ステージ上でローラは、「映画に出られてすごい嬉しかった。最終章は迫力がすごくて、ドキドキハラハラする映画だったし、現場ではみんなが優しくしてくれたから、最高に楽しい撮影でした」と、“ハリウッドスター”らしく、まずは英語でカッコよく挨拶していたのだが、続いて役作りについて聞かれると、途中で質問の内容を忘れるなど、いつものローラ節は健在であった。

そんなローラとの撮影について、ミラは「映画の中のローラを見たら、みんなショックを受けると思うわ。撮影前まではファッションや美容、ラーメンの話とかをしていたのに、衣装を着たら、雰囲気も全然違って戦士に早変わりしていたの。女優としても素晴らしいわ」と、褒め称えていたのだった。

ミラ、ポールともに「最終章は最高の作品」と称していたが、完成した映画はファイナルに相応しく見応え十分で、どちらが生き残るかというよりも、“どちらが先に死滅するか”といった、人類対ゾンビのギリギリの瀬戸際の戦いが描かれていて、ハラハラドキドキの連続だった。

今年で40歳になるミラ・ジョヴォヴィッチ。 長年連れ添ってきた【アリス】との別れの時でもある。[バイオ=アリス]という図式が完成したのと同時に、[バイオ=アリス+ミラ]という方程式も出来上がってしまった。このイメージを塗り替えるには、今後、【アリス】を上回るようなインパクトのある役柄が必要になってくる。

これこそ、“代表作”というものに出会ってしまった者だけが味わう、一つの試練なのかもしれない。

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映画『バイオハザード:ザ・ファイナル』(ソニー・ピクチャーズ配給)

映画『バイオハザード:ザ・ファイナル』(ソニー・ピクチャーズ配給)は、カプコンが誇る世界的人気ゲームを、ミラ・ジョヴォヴィッチ主演で実写映画化した『バイオハザード』シリーズの最終章。

監督・脚本:ポール・W・S・アンダーソン 出演:ミラ・ジョヴォヴィッチ、アリ・ラーター、ショーン・ロバーツ、ルビー・ローズ、オーエン・マッケン、ローラ、イ・ジュンギ、ウィリアム・レヴィ、フレイザー・ジェイムズ、イアン・グレン、エヴァ・アンダーソン ほか

http://www.biohazard6.jp/

佐々木誠

「日刊 情報プレス」編集者 (有)情報プレス社が発行する「日刊 情報プレス」は、映画業界のニュースやイベント、興行成績、劇場公開情報など、映画に関する様々な情報を掲載。また、Facebookページでは、【情報プレスα】(www.facebook.com/joho.press.jp)として、映画の舞台挨拶やイベントの模様を面白可笑しく掲載中。日々アップしている。