Jul 29, 2017

コラム143

ハリウッドグールから生き延びた作曲家が描く スリリングなトーキョーグールの音楽世界

ハリウッドグールから生き延びた作曲家が描く
スリリングなトーキョーグールの音楽世界

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『マトリックス』の作曲家が日本映画の音楽を担当した。その作品『東京喰種 トーキョーグール』で、ドン・デイヴィスは見事な手腕を披露している。主題旋律の際立ち、低域を重視したオーケストレイションの妙、そしてヒロイックな高揚感へと見る者を無理なく運ぶ熟練の手さばき。ここ数年、ハリウッドの表舞台から姿を消していた才人は、その衰えぬ作曲技法をどこに注入していたのか。映画音楽についてどのような哲学や意見を持っているのか。また、かつての仕事仲間ジェームズ・ホーナーの死をどう受け止めているのか。その答えのひとつひとつに、誠実で実直な素顔が鮮やかに浮かび上がるのだった。

 

──『東京喰種 トーキョーグール』への参加の経緯は?

(監督の)萩原健太郎と(音楽プロデューサーの)宮地祐輔が「東京喰種 トーキョーグール」の音楽を書かないかと声をかけてくれたんだ。本当に驚いた。と同時に、日本に私の作品を認めてくれているフィルムメーカーがいることを知って、とても嬉しく感じたよ。

──『東京喰種 トーキョーグール』の原作漫画はご存じでしたか?

いや、知らなかった。なので、原作を送ってもらったんだ。読んでみて、なぜこの作品がこれほど高い敬意を集めているのかがわかったよ。

──萩原健太郎監督からの音楽への注文はどんなものだったのですか。監督との仕事はいかがでしたか。

健太郎には、音楽こそ映画で語ろうとしているものを補えるんだという独特のヴィジョンがあった。音楽が喪失感を伝えるべきだ、と。カネキから奪われた美しい何かの喪失感をね。健太郎はカネキの変貌、孤独、発見、そして視点の変化を音楽でフォローしたいと考えていた。つまり、グールの世界へ踏み込んだことによるアイデンティティーの喪失に始まり、ついにはスーパーヒーローへと至る旅を音楽で描くということだ。健太郎は中でも主題曲にこだわっていて、その発展にとても熱心だったんだ。

 

萩原健太郎監督(右)

萩原健太郎監督(右)

 

──その主題曲は旋律の際立ちも鮮やかで、本当に素晴らしい。

主題曲の開発には少々時間がかかったね。主な役割としては、スーパーヒーローとしてのカネキを際立たせることだった。オープニング・タイトルの部分を除いて、劇中ではテーマの全貌は明らかにしていない。カネキがスーパーヒーローの運命に自覚的になったとき、初めてその輝ける全てが現れるようにしているんだ。

──マスク・ショップを描く楽曲はカーニバル音楽のようでした。

あの曲はずいぶん簡単に生まれたんだ。健太郎がマスクメーカーのための音楽をカーニバル調の雰囲気にしようというアイデアを出してくれてね。彼の提案がなかったら、そのアプローチにたどり着けたどうか怪しかったよ。

賀来タクト

賀来タクト(かく・たくと) 映画&音楽関連文筆家。1966年生まれ。愛知県出身。雑誌記者・編集を経て現職。編集担当書籍に『映画道楽』(ぴあ刊)、『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)など。企画協力・監修ムックに『オールタイム・ベスト 映画遺産 映画音楽篇』(キネマ旬報社刊)。執筆参加書籍に『映画音楽 200CD スコア・サントラを聴く』(立風書房刊)、『映画×音楽 セッション・レポート103』(音楽之友社刊)など。第66回(2011年度)より、毎日映画コンクール《スタッフ部門》の2次選考委員を担当。2015年9月27日開催の岡山シンフォニーホール主催・岡山フィルハーモニック管弦楽団演奏による映画音楽公演『We Love 映画音楽』では、企画・演目構成・ナビゲーターを担当。1998、2000年にはハリウッド映画音楽の巨人ジェリー・ゴールドスミスの来日コンサート(神奈川フィルハーモニー管弦楽団主催)に企画協力。現在、『キネマ旬報』誌にてコラム「映画音楽を聴かない日なんてない」を連載中。