Mar 30, 2017

コラム

映画音楽への憧れと敬意が弾けてまぶしい! 夢と現実を行き来する快活な響き

映画音楽への憧れと敬意が弾けてまぶしい!
夢と現実を行き来する快活な響き

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  作曲家・下村陽子が長編アニメーション映画『ひるね姫 ~知らないワタシの物語~』で全劇音楽の作曲、及び主題歌として往年の名曲『デイ・ドリーム・ビリーバー』の編曲を担当した。人気ゲーム音楽の担い手として愛好家からの支持が厚い下村にとって、これまでテレビ・アニメーションやゲーム内映像の音楽、あるいはテーマ曲のみの仕事はあれ、全編にわたっての長編映画の作曲経験はなく、これが事実上の映画音楽デビューとしていい。そこには、どのような発見があったのか。どのような喜びと苦労があったのか。果たして、仕上がった音楽同様、さながらマシンガンのように繰り出される情熱的な言葉の端々には、確かな映画音楽愛が潜んでいたのだった。

 

主題歌『デイ・ドリーム・ビリーバー』の新たな編曲

 

──初の長編アニメーションのお仕事となりました。

最初にお話をいただいたときは「本当に私でいいんですか!?」っていう感じでしたね。もちろん、光栄なことですし、私のゲームでの仕事を聴いてくださった上でのお話とのことで、それは作曲家として嬉しかったですし、幸せでした。そういう気持ちと、私で務まるかしらという不安が同居している感じでしたね。曲を作る仕事は長くやってきていますけれど、やっぱりゲームの音楽とは全く違うメディアになりますから。そこに不安みたいなものがなかったといったらウソになります(笑)。

──具体的には下村さんのどのお仕事を指しての依頼だったのですか?

『キングダム ハーツ』のサウンドトラック盤をチーム内から推薦されたとのことで、「それを聴いてみて、いいと思ったので、声をかけさせていただきました」みたいな感じです。あと、「女性作曲家で探していた」ということも伺いました。私も生物学的には女性なんですけど(笑)、書く曲がどれも男っぽいと言われることが多いですし、性格もどちらかというと男らしいと言われていますので、「あまり女性っぽくないんですけど、大丈夫ですかね?」というお断りだけは最初に申し上げましたけど(笑)。ただ、私自身、曲として女性っぽさ、男性っぽさというものはあると思っているんです。今回書いた曲では、エンシェンのテーマとかココネのテーマは自分的には女性っぽい曲かなって思いますね。

 

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──不思議といいますか、面白いといいますか、これまで取材を重ねてきて、どこか男性作曲家の方がものすごく繊細な曲を、女性作曲家の方がビックリするくらい豪放な曲を書かれているような印象があるのですが。

そうなんですよね(笑)。それはゲームの音楽でもよくいわれることでして、男性の方がしんみりとやわらかい曲を書かれたりすることが多いといいますか。私などの場合は、曲を聴かれた方から「え、女性が書いた曲だったんですか?」と言われることもあったりします(笑)。

──もしや、そういう下村さんの側面も見据えての依頼だったのでは?

確かに、そういう意味では発注として「女性的な作曲を」とも「男性的な曲を」とも言われていませんからね。私自身がつくっていくうちに「あ、これは女性的な曲かな」というような意識があっただけで、結局、どちらの方向の曲も作っていたわけで(笑)。やっぱり、ヒロインが女子高生ということで、そこ(女性的な部分)はすごく意識したんですね。『デイ・ドリーム・ビリーバー』(作曲:ジョン・ステュワート)のアレンジをするときも森川ココネちゃん(高畑充希)が歌うということが大きくて。もともと、この曲はモンキーズ(60年代から活躍するアメリカのポップバンド)が歌っていて、ちょっとやんちゃな歌なんですね。原詞もしんみりしたものではないですし、リズムも跳ねていますから、やんちゃな男の子たちが歌うイメージがあって、それをどう女の子が歌っている感じにできるかな、と。最初の編曲では今よりもうちょっとしっとりしていたんです。そうしたら神山(健治)監督が「しっとりさせるのではなく、ココネちゃんの元気な感じを残しつつ、心にぐっと来るもので」とおっしゃったので、バラードまでいかず、しっかり元気で歌い上げる、みたいな感じにと。女性的ということを意識したわけではないんですけど、女の子らしさみたいなものはこの主題歌には出ているんじゃないかと思います。

 

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賀来タクト

賀来タクト(かく・たくと) 映画&音楽関連文筆家。1966年生まれ。愛知県出身。雑誌記者・編集を経て現職。編集担当書籍に『映画道楽』(ぴあ刊)、『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)など。企画協力・監修ムックに『オールタイム・ベスト 映画遺産 映画音楽篇』(キネマ旬報社刊)。執筆参加書籍に『映画音楽 200CD スコア・サントラを聴く』(立風書房刊)、『映画×音楽 セッション・レポート103』(音楽之友社刊)など。第66回(2011年度)より、毎日映画コンクール《スタッフ部門》の2次選考委員を担当。2015年9月27日開催の岡山シンフォニーホール主催・岡山フィルハーモニック管弦楽団演奏による映画音楽公演『We Love 映画音楽』では、企画・演目構成・ナビゲーターを担当。1998、2000年にはハリウッド映画音楽の巨人ジェリー・ゴールドスミスの来日コンサート(神奈川フィルハーモニー管弦楽団主催)に企画協力。現在、『キネマ旬報』誌にてコラム「映画音楽を聴かない日なんてない」を連載中。