Jul 25, 2017 interview

第4回:予告を作ってて一番楽しかったのは、『アメリ』かな。

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池ノ辺直子の「新・映画は愛よ!!」

Season16  vol.04 株式会社バカ・ザ・バッカ 創立メンバー 小松敏和 氏

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映画が大好きで、映画の仕事に関われてなんて幸せもんだと思っている予告編制作会社代表の池ノ辺直子が、同じく映画大好きな業界の人たちと語り合う「新・映画は愛よ!!」

前回の今までに制作が大変だった予告編のお話に続いて、今回は、作って楽しかった予告編の話を株式会社バカ・ザ・バッカの創立メンバーで、元取締役専務の小松さんに語って頂きます

→前回までのコラムはこちら

池ノ辺直子 (以下 池ノ辺)

前回がつらかったお話だったので、今回は、「これは作って楽しかった」というお話を聞きましょう。

今までで一番、作ってて楽しかった予告編は?

小松敏和 (以下、小松)

楽しかったのはね、フランス映画の『アメリ』(2001)かな。

池ノ辺

映画も大化けして、大ヒットになりましたね。

当時、その会社の名物宣伝マンだった叶井俊太郎さんが、企画の段階で、ホラー映画だと思い込んで買ったんですって。

小松

と、言われてますけどね、真相はわからない(笑)。

みんな、面白く尾びれを付けて話すから。

叶井さんもほら、大まかな人だから。

池ノ辺

監督のジャン=ピエール・ジュネは、その前はダークファンタジーを作っていたから、その流れかと思ったんだよね。

そしたら、小松さんが予告編を手掛けて、ものすごく可愛いい予告編が出来上がったの。

小松

叶井さんは、「女の子が恋に狂っちゃう話だから、ホラーかなと思った」といろんなところで言っているんだけど、本当にそうなのかはわからない。

ただ、ありがちなラブストーリーだったら、叶井さんも多分、買っていなかったと思う。

叶井さん自身、それまで『キラーコンドーム』みたいな、ちょっと変わったB級映画を買い付けして、当てているような人だったので。

池ノ辺

叶井さんは、予告編に注文入れる人ですか?

小松

言わない、ほぼお任せですね。

僕が『アメリ』を見たときに、若い女性向けの映画だとは思わなかったのね。

もっと昔のフランス映画みたいな雰囲気を感じて、例えば『パリの空の下セーヌは流れる』(1951)の雰囲気を感じたんです。

実際、ジュネ監督もその時代の映画が好きで作ったらしい。

だから大人のファンタジー映画の感じを出したいなと作った。

池ノ辺

オドレイ・トトゥが演じるヒロインのアメリは、壁の穴に隠れている宝物を見つけたり、近所の変な人たちの知らないところで、こっそり人助けするとかだものね。

小松

そうそう。

それで、叶井さんは何も言わなかったんだけど、配給会社のアルバトロスの若い宣伝の女性がやってきて、今は別の会社で活躍されている筒井さんと簗詰さんが、「アメリががっかりして顔がグシャとなるとか、ドア越しに語り合うとか、女の子が見て、胸がキュンとするようなショットを入れてみてはどうでしょう?」と言ってくれて、そのアドバイスがすごく良かったですね。

だから、最初から叶井さんが、「若い女性に受けるものを」と言っていたら、うまくいかなかったと思うし、大人のファンタジー映画として作った中に、ちょっとだけ、女性がキュンとする要素を足すぐらいだからよかったんだと思う。

つまりは、変に嘘をつかない予告編だったのが、観客に伝わったんだと思う。

やっぱり、予告編を作る中、ちょっと嘘をついたりする事はあるじゃないですか、ちょっと大げさにしてみたり。

でも、『アメリ』はそういうところがなかったのがよかった。

本編だけでなく、予告編も評判が良くて、テレビの番組でもよく取り上げてくれて、誠実に作られているみたいな事を言ってくれて、結果的に映画も大ヒットした。

池ノ辺

今でも言われますもんね。2001年の大ヒット作。

映画史に残る作品になった。