Dec 29, 2021 interview

目指したのはエンタメと問題意識のバランス 坂下雄一郎監督が語る『決戦は日曜日』

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政治家を支え、時には責任もかぶる私設秘書。その秘書目線で政治家と選挙をシニカルに描いたポリティカル・コメディが誕生した。ベテラン衆議院議員・川島昌平の秘書を務める谷村勉(窪田正孝)は、川島の急病で急遽、後継として選挙に出ることになった娘の有美(宮沢りえ)を支えることに。ところが有美は熱意だけはあるものの常識知らずで空回りの連続。それでも熱意だけは衰えないため、谷村は振り回されるばかり。そして有美の奇想天外な奇策が‥‥。

監督は、大阪芸術大学映像学科、東京芸術大学大学院映像研究科映画専攻を経て、『東京ウィンドオーケストラ』『ピンカートンに会いにいく』など独創的なオリジナル企画を映画化してきた坂下雄一郎。今回も5年の歳月をかけたオリジナル脚本で、これまで注目されなかった秘書の視点から日本では珍しい政治と選挙をテーマにした映画を作り上げた。

主人公の秘書役に『ファンシー』『初恋』の窪田正孝。天衣無縫な二世議員役に『湯を沸かすほどの熱い愛』『日本独立』の宮沢りえ。そしてクセの強い秘書軍団に、赤楚衛二、内田慈、小市慢太郎、音尾琢真ら個性派俳優が脇を固める。

映画大好きな業界の人たちと語り合う予告編制作会社バカ・ザ・バッカ代表の池ノ辺直子が坂下雄一郎監督に、どのように政治と選挙の裏側をリサーチしたのか、そして映画と共に歩んできたこれまでの道のりをうかがいました。

選挙の裏の裏を探るには?

池ノ辺 『決戦は日曜日』は、選挙を私設秘書の視点から描いているのがすごく面白かったです!私も、政界に入りませんか?って言われたことが何回かあるんですよ。

坂下 言われそうですね(笑)。

池ノ辺 そう思います?(笑)。政治家になるなんて絶対大変だと思って断ったんですけど、声が通るとか、元気に喋るのが良いって言われたんです。この映画を観たらそんなことを思い出しちゃったんだけど、選挙の裏の裏が見れちゃってるから、監督は絶対、すごく裏の裏の裏まで潜入して取材したに違いないって思ったんですけど(笑)。秘書見習いとして選挙に密着したとかやったんですか?

坂下 それはやっていませんが(笑)、秘書の方に話を伺いました。

池ノ辺 議員の方にも取材を?

坂下 議員の方にも訊きましたが、どこまで喋ってくれるかは人によります。質問したことに、それは選挙違反なので絶対そういうことはないと言う人もいれば、誰もそれは全然守ってないですよみたいなことを教えてくれる人もいました。

池ノ辺 じゃあ、この映画で描かれていることは全部リサーチした内容が反映されているんですか?

坂下 いや、そんなことはないですね。想像も多いです。

池ノ辺 そうすると、想像は何%ぐらいですか?

坂下 うーん‥‥。

池ノ辺 そこは観客も想像してくださいってことね(笑)。でも、宮沢りえさんが、テンション高くワ―ッって喋ってる間に、秘書の窪田正孝さんがすごく醒めて見てるって情況が、すごくリアルに見えたんですが、実際にああいう光景を見て映画に取り入れたんですか?

坂下 あれは、そうなっていたほうが面白いなと思ったんです。

池ノ辺 私は宮沢さんと窪田さんを見ながら、うちのスタッフも私のことをああやって醒めて見てんだろうなとか思ってました(笑)。でもそういう光景に、すごく感情移入して笑ったり、一緒に怒ったりしながら、本当に楽しく見させていただきました。映画の最後には私も頑張ってみようとかって思った。久々にそんな気分にさせてくれる映画でした。